第222話 ■千織の転生 (タイ編 その25)

■千織の転生 (タイ編 その25)


「それじゃ、み・が・わ・り、よろしくね♪」

陽子に木の陰に移動させられたジュディは、身動きが取れずに焦っていた。

もうじきジェイソンが自分を発見し、すかさずロケトランチャを撃ちこんでくるだろう。

そうなれば、自分は跡形も無く木端微塵に吹き飛んでしまうだろう。

声も出ないし、体は金縛りにあったようで微動だにしない。

なにしろ表情を変えることさえ出来ない。

ジュディの頬に一筋の涙が流れた。


キキィー ドムッ

50mほど先でクルマのブレーキ音が聞こえ、続けて何人かが降りて自分がいる方に向かってくる気配を感じた。

『もう、ダメ! 味方に殺されるなんて惨めだわ』

ジュディは、観念してギュッと目を瞑った。


「ジュディ、 ジュディじゃないか? おい、そんな所で何をやってるんだ! あの女たちはどこだ? もう始末したのか?」

そう言いながら、ジェイソンが自分の方に駆け寄って来る。

自分は、あの女の姿にさせられているのに、いったいどうなっているのだろう?

実は陽子は、ジュディに催眠術の一種である、暗示をかけていたのだ。

「おい! しっかりしろっ!」

ジェイソンに体を大きく揺さぶられて、ジュディの暗示が解ける。

うっ

ジュディは、その場にガクッと膝から落ち地べたにへばり付いた。

物凄い疲労感と脱力感がジュディを襲う。


「あの雌豹と呼ばれたジュディが、ずいぶんと無様な姿だな!」

ジェイソンに罵られても、反論すら出来ない。

「オレたちは、先に女を追うから、お前も後から来い!」

そう言われても今のジュディには、もうそれだけの気力は残っていなかった。

でも、もしもこのまま此処を動かないでいたら、今度は自分が組織から抹殺されてしまう。

自分が始末した、スティーブのように・・・

その事に気付き、ジュディは、うっすらと笑みを浮かべ、のろのろと立ち上がった。

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