第215話 ■千織の転生 (タイ編 その18)
■千織の転生 (タイ編 その18)
「こさん・・・よ う こ さん!」
う、う~ん
「あっ、気が付いた? よかったぁ」
「わたし・・いったい・・」
「あのね、熱中症になったみたい」
「頭が痛いです」
「しばらく横になってて。 ココはたぶん安全だと思うから」
ミキは非常事態のため、陽子を抱きかかえて川のほとりの茂みの中に瞬間移動したのだ。
直ぐに川の水で体を冷やしたのが良かった。
対応がもう少し遅ければ命の危険があったかもしれない。
「でも、こういく先々で直ぐにヤツラに遭遇すると、なんだか偵察衛星で監視されてるみたいな気がしてくるね」
陽子は目を瞑ったまま、じっとしている。
よほど体調が悪いのだろう。
ミキは、このまま陽子を抱えて日本に送り届けようかと思ったが、そこまでするには、きちんとした説明が必要になる。
でも自分が神様だなんて言っても信じる人はいないだろう。
「ミキさん」
「なに?」
「わたしは一人でも大丈夫ですから、千織さんの所に急いでください」
「そ、そんなこと出来るわけないじゃない」
「でも、あの武装では、いくら千織さんでも・・」
「そうだね。 せっかく透けない体を手に入れて自分のやりたい事を見つける事が出来るようになったのに、ロケットランチャなんかで粉々にされたら悲しいよね!」
「だから早く行ってあげてください」
「それなら、一つだけ約束してくれる?」
「どんな約束ですか?」
「これから起きる事には、後々も含めて一切質問をしないって」
「・・・」
陽子は目を瞑ったまま、黙って考えている。
「いい?」
「嫌です!」
「なっ・・・」
予想外の返事にミキは狼狽えた。
「だって」
「だって?」
「それって、想像できないほど面白いことなんでしょう?」
陽子がミキの瞳をじっと見詰めながら、にっこりほほ笑む。
「面白い?」
「ええ」
「それじゃ、あたしは千織の所に行けないじゃん・・」
ミキは複雑な心境で陽子を見やる。
「さっきも言いましたけど、わたしは一人でも大丈夫ですから」
「その自信の根拠は何なの? もしかしたら・・やっぱり?」
「ふふっ。 自分だけ質問するのはずるいですよ、ミキさん」
「ぐわぁーーー! も考えるのは止めた!」
「まぁ・・」
「あたし、陽子さんを信じる。 だから、あたし千織の所に先に行くね」
「はい」
「陽子さん。 その代りお願いだから無茶はしないでね」
「はい」
ぶわっ
ミキの目から滝のように涙が溢れ流れ出した。
グスッ
「そ、それじゃ、行くからね」
「はい。 気を付けて」
ミキはもう振り返らず、川を背にして駆け出した。
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