第214話 ■千織の転生 (タイ編 その17)
■千織の転生 (タイ編 その17)
黒ずくめの男たちは、7人いた。
その真ん中に、一際大きな男が居る。
ミキがター○ネーターとあだ名をつけた奴だ。
男の肩には、ロケットランチャのような武器が乗っている。
「う、うそでしょ。 そんなものをココでぶっ放す気なの?」
そう口にしながらも内心では、アイツなら本当にやりかねないと思っている。
また限定解除か・・・緊張しながらもミキはゆっくり身構えた。
「陽子さん。 気を付けてください。 あいつら本当に撃ってきますよ!」
・・・
ミキは、陽子の反応が無いため、隣を横目で見ると、なんとその姿が忽然と消えてしまっていた。
「え、ええっ? うそっ! 逃げ足早っ!」
ミキが視線を戻した途端。
バシュッ
ドオーーーン
ミキのすぐ脇でロケット弾が炸裂する。
「ギョヘーーー! やっぱ撃ってきたのねーーー!」
フッ
辺りに陽子が居ないのを確認し、ミキはその場から、ある場所に向け瞬間移動した。
「お、おい。 二人とも消えちまった!」
「やはり、ICPOの特殊警察官なのか?」
「だとしたら、早く片付けちまわないと厄介な事になるぞ!」
「焦らなくても大丈夫だ。 あいつら、前も突然消えやがったが、どこに逃げたってオレ達の組織にかかればすぐに居場所はわかるんだ。 それにあいつらは特殊警察のもんじゃねえよ! あいつら反撃してこねえからな!」
「だったら、何者なんだ?」
「さあな? でもワザワザ捕まえて聞き出すより、やっちまった方が早いって事だ」
***
**
*
「くそーーーっ! アイツらーーー まだ半分も食べてなかったのに!食べ物の恨みは恐ろしいって事を思い知らせてやらなきゃいけないよね!」
ミキは隣の陽子に同意を求める。
「うふふ。 そうですね。 飛びっきり痛い目に遭わせてやりましょう」
陽子の目の奥が怪しげな光を放つ。
「にしても、陽子さんって、こんな所に隠れてたんだ」
「ちょうど岩陰に隠れようと思ってこの岩に手を掛けたら隠し扉が偶然開いたんです。 きっと本物だと高価だし運ぶのも大変なので、代用品で済ませたんでしょうね」
ロケット弾が着弾した直ぐ脇に、大きな岩があったのだが、それは樹脂で作られた偽物だったのだ。
「でも、もしこれにさっきの弾が当たってたら即死だったよ~」
「まぁ、わたしは運は良い方ですので・・」
「ちょっと息苦しくなってきたけど、アイツラもう諦めてどこかに行ったかな?」
「まだ見張りが一人残ってますね」
陽子は外を見るでなくも即答する。
「そいつって、強そう?」
「そうでもなさそうですけど肩にマシンガンを下げていますね」
「ふむ、もう少し我慢しましょう」
ミキは隠し扉を僅かに明けて外の空気を吸い込んだ。
タイはモンスーン気候であるため、隠れている岩のオブジェの中はサウナ風呂のような過酷な状態である。
「どうせなら、この岩にもエアコンを付けてくれれば良かったのにねぇ」
ギョッ
「よ、陽子さん。 何してるのよ!」
ミキの後ろでは陽子が潔く服を脱いで、手団扇でハタハタと顔を扇いでいた。
「だって、凄く暑いんですもの・・」
バサッ
そう言った途端、陽子は意識を失ったのだった。
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