第213話 ■千織の転生 (タイ編 その16)
■千織の転生 (タイ編 その16)
ガチャッ バアーーーーン 目の前に立っていた大男が二発目のショットガンをぶっ放す。
どわーーーっ!
叫び声をあげたミキの目の前が真っ赤に染まった。
二発目の銃弾を受けて、タイヌードゥル「イエンタフォー」の赤いスープが辺りに飛び散ったのだ。
ミキと陽子は咄嗟に地面に伏せたが、大男は直ぐ目の前にいる。
「お前らが何処に逃げたって、オレ達には直ぐにわかるのさ」
ガチャッ
大男は三発目の弾を装填させ、その銃口を陽子に向けた。
次の瞬間。
パァアーーーッ
突然辺りが強い光に包まれ、そのあまりの輝きに大男の目の前が真っ白になる。
「ぐあっ、 め、目が見えん!」
そう、ミキがついに女神パワーの封印を解き放ったのだ。
「あたしは復活を司る西の女神! これでも一応女神だから、悪党どもは許しちゃおけないのよっ!」
大男の方にビシッと右手の人差し指を向け、かっこよく決めたつもりだったが、肝心の大男は目が見えていない。
「ミキさん・・」
陽子も眩しくて、ミキの声しか聞こえていない。
バアーーン
ガチャッ バアーーーン
大男がショットガンを辺り構わず、立て続けにぶっ放すが相手が見えていないため、当然命中しない。
「陽子さん。 あたしに掴まって」
ミキは陽子の傍に瞬間移動し、陽子の腰に手をまわすと、その場からフッと消え去った。
・・・
・・
・
「どうやら、わたしたちが関わってしまった組織は想像以上に大きいかったようですね」
陽子は、いつになく険しい表情をしている。
「それよりも千織が無事なのかが気になるね」
ミキは安全な場所に移動後、ただちに女神パワーを再封印している。
「でも千織さんは、厳密に言えば死にません。 ある意味、冷静に対処できるだけの時間的余裕はあります」
「そっか。 もう死んじゃってるんだっけ。 まぁ、きちんと成仏すれば、あたしん所でちゃんと復活させてあげられるんだけどね」
「なんですか。 それ?」
「うっ な、なんでもない」
「それより、私たち、どうしてこんな所にいるんでしょう?」
陽子たちは、タイでも有名なゴルフ場にいた。
「な、なんでだろうね。 もしかしたら陽子さんって、テレポートも出来たりする?」
ミキはそらとぼける。
「そんな事は出来ません」
「でもさ、火事場の馬鹿力ってあるじゃん」
「いいえ、自分の能力は自分が一番よく知っています」
「ま、まぁ。 無事だったからそんな事はどうでもいいね。 にしてもあの大男って、ター○ネーターみたいで超怖いんですけど!」
「わたしも、久々に怖かったですねぇ・・・」
「ひさびさかぁ・・・」
大男と陽子のどちらが怖いと聞かれたら、ミキは少しだけ陽子の方が怖いと思った。
実際のところ、もしミキが助けなかったら、陽子は撃たれて死んでしまったのだろうか?
いま冷静に思い出してみると、あの状況下(銃口を向けられた)で、陽子には余裕さえあったような気がする。
ふと、いつぞやの陽子女神疑惑が、また頭を持ち上げるが・・・
『まぁ、どっちでもいいいか』
そう、ミキは深く考えないタイプなのだ。
「ところで陽子さん。 ター○ネーターが、お前らが何処に逃げたって、オレ達には直ぐにわかるって言ってたよね?」
どうやら大男のあだ名は、ター○ネータに決まったようである。
「ええ、そう言ってましたね」
「だとしたら、ココに居るのがバレるのも時間の問題なわけかなぁ」
「偶然通りかかったトレーラーの運転手でさえ、組織の息がかかっていたとしたら、時間の問題でしょうね」
「うん。 わかった。 けど、それも相当早いみたい」
ミキは、そう言うと陽子の後ろに並んで植えられている椰子の木を指差した。
陽子がゆっくり振り返ると、椰子の木の前には黒ずくめの男たちが、銃器を担いでこちらに歩いて来ている。
「まぁ、たいへん」
その言葉とは反対に、ミキには陽子が嬉しそうに微笑んでいるように見えた。
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