第174話 ◆神様がしてはいけない事(その3)

◆神様がしてはいけない事(その3)


「あ、あんた、よくも騙したわね!」

ミキは白い犬の両頬を思いっきり引っ張って抓つねった。

「いふぁい、いふぁい」←「痛い、痛い」と言ってます。

白い犬は、いきなり頬を抓られ、目を丸くしている。


「そうよ! 痛くしてるんだから、痛いのは当たり前よ!」

ミキは両頬の手を離すと同時に、白い犬の頭を一発ビシッと叩いた。


アォン

「な、何をする!」

「それは、こっちの言うセリフよ!」

「いったい、わしを誰だと思っているのだ!」

「はっ? わし? 何その年寄りくさい言い方は! あんた、水戸黄門さまのつもり?」

「ぶ、無礼な。 東の神の妻だと言うから、穏便に済まそうと思っておったのに!」

「東の神の妻? 何それ・・・ えっ? もしかしたら、あんたカイ君じゃない・・の?」

「カイじゃと? わしは、天上界の大神。 この世界の絶対唯一神ぞっ!」


へ、へぇーーー

ミキは、葵のご紋の印籠を突きつけられた悪代官のように額を床につけ、ひたすら平伏する。

「し、知らないこととは言え、ご無礼の数々誠に申し訳ござりませぬーー」

しかもミキはついこの間、バラエティ番組のコントで覚えたセリフをそのまま使っている。


「西の神が選びし者という事で安心しておったが、任務は放棄しそうになるわ、勝手に力を使って火災を鎮火させるわ、誠にけしからん!」

へ、へぇーーーっ

「しかも、わしの頭まで叩きおって! 元はたかが人間の小娘ごときのくせに!」

ムカ ムカ ムカッ

ミキは、だんだんムカついてきた。

自分は、ここまで神様に言われたくは無い!


「・る・さ・い」

「なんだ?」

「だから、うるさいって言ってるの! さっきから聞いていれば、ごちゃごちゃといっぱい好き勝手に言ってさっ! あたしだって、なりたくて「復活の神」をやっているわけじゃないんだ! それに、放っておけば大火災になるものを消火したことのどこが悪いのよ!」

「愚か者が! 火災によって死ぬ運命だった者まで救われてしまったではないか」

「だから、それは良いことじゃない!」

「そなたは、「復活の神」を継ぐ者として、その意味もわからないと申すのだな?」

「あっ・・・」

ミキは大神に言われて、今気付く。

その声をあげたばかりの口に両手を当て、モガモガと口篭くちごもる。

「ふん、言われてから気付くとはな・・」

大神は、明らかにミキを見下げた目で嫌味ったらしく言う。

「でも、頭を叩いたのは大神とは気付かなかったからで、犬の格好で出てきたあんたが悪い! それは絶対だ! 誰がなんと言っても、あんたが悪い!!」

ミキは悔しくて、大神に向けゆびを指し大声で罵る。

「よかろう。 それでは、しばらく頭を冷やすが良い!」

大神は、ミキの事を虫けらでも見るような目で見ながらそう言い放った。

途端にミキは目の前が真っ暗になっていった。


次回、「神様がしてはいけない事(その4)」へ続く

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