第175話 ◆神様がしてはいけない事(その4)
◆神様がしてはいけない事(その4)
気が付くとミキは断崖絶壁の途中に宙吊りにされていた。
前に中国のどこかで、断崖絶壁の途中に人が一人横に伝い歩きをしながら進むような超険しい山道を紹介しているテレビ番組を見た事を思い出す。
目の前は、まさにその千尋の谷である。
ミキは高所恐怖症では無いが、こんなところに吊り下げられたら誰だって怖い。
おまけに、目の前には見たことも無い大きな猛禽類のような鳥が数羽集まってきていた。
ふと、断崖に鎖でつながれたまま、鳥に内臓を食べられる罰を受けた神様の神話があった事を思い出す。
パラパラッ
上の方から、たまに崩れた石や砂粒が落ちてくる。
風でミキを吊るした綱が揺れる度に、綱が崖に擦れるからだろう。
綱が岩に擦れれば、繊維が少しずつ破れ、最後にはプツリと切れてしまうかも知れない。
そうなったら、何百メートルもの谷底に向かってまっしぐらに落ちてしまうだろう。
幾ら神様は死なないといっても、今のところ痛みは人間のときと変わらない。
ミキは恐怖のあまり、そこで想像することを止めた。
半日ほど経ったであろうか。 縛られたミキの手足や胴の部分は、内出血で赤紫色になっている。
意識も薄れてきて、目を瞑ったまま、ただ吊るされるがままになっている。
バサ、バサバサ
当然の大きな羽音で目を開けると目の前に4、5mはあろうクチバシの鋭い鳥が飛び込んできた。
「痛っ!」
鳥はミキの肩を大きな足の爪で鷲掴みにしたのだ。
ミキは手足をロープで縛られているため、鳥を追い払うことが出来ない。
肩を掴まれたまま、今度は鋭いクチバシで首筋を突かれる。
「痛い、痛い。 やめてーー」
ミキは、何で自分がこんな仕打ちを受けなければならないのか泣きたくなった。
1羽がミキの体から離れると、また別の鳥が突きにくる。
ひぃ、ひぃ、言いながら、こんなことならいっそ早く崖の下に転落した方が楽かと思い始める。
ビュゥン
目の前を一際ひときわ大きな鳥が飛び過ぎる。
いままで突かれていた鳥の約3倍はあるだろう。
もうダメだ。 ミキは覚悟を決めた。
こんな鳥のクチバシで噛まれたら、おそらく首ごともげてしまうだろう。
巨大な鳥は、これはオレの獲物だと言わんがばかりに、周りの鳥たちを追い散らすと、勢いよくミキ目掛けて飛んできた。
ミキは観念し目を瞑った。
ブチッ
次回、「神様がしてはいけない事(その5)」へ続く
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