第161話 ◆女神効果の特効薬
◆女神効果の特効薬
さて、水浸しの片足を便器から引き出し、そっと個室から出るとミキは頭の中で、水浸しの足がきれいに乾いた状態を思い浮かべる。
上手くイメージできたのか、もう足は何事も無かったように乾いていた。
『ふ~ん。 こりゃあ、なかなか便利だねぇ・・』
ミキは当初、力を使うつもりは無かったし、その必要もないと思っていたが、あればあるで力は、とても便利なものであった。
しかし、その力を使えば使うほどミキの女神化は、ますます加速していく事をミキはこの時点では知る由も無かった。
例えれば、ちょうどマイルが溜まっていくようなものであろうか。
「ちぇっ、どうせなら楽屋に瞬間移動すればよかったんだよ」
ブツブツ言いながらミキは、エレベータに駆け込んで自分達の楽屋があるフロアへ急いだ。
「アヤ、ごめん! リハはもう直ぐだよね?」
ミキが楽屋に飛び込むと、アヤの顔がパァーと明るくなる。
「よかったあ。 わたし一人でリハやったことが無かったから、どうしようかと思ってたんだ」
アヤは、さすがに一人では心細かったのだろう。
リハーサルなのでミキは私服のままアヤと収録スタジオに向かう。
「お姉ちゃん。 電話じゃ良くわからなかったけど美奈子マネージャまた具合が悪いの?」
「えっ? あ・・いや、そう言うわけじゃないんだけど。 話すと長くなるから、また後でね。 それよか急がないと」
「あっ、うん」
アヤも腕時計に目をやり、ミキに続く。
リハーサルは収録の段取り確認と音あわせが主で、一人あたりの時間はそうはかからない。
それより、リハから本番収録までの待ち時間が長いのだ。
ミキはリハのとき笑顔を作らないように頑張っていた。
これは常日頃からの営業スマイルが滲みこんでいるため、簡単なことではない。
カメラが自分をアップでとらえているとカメラ目線で微笑む習慣が身に付いているのだ。
ドッキュウーン
まずは1カメさんが殺られた。
『しまった!』
ズッキュウーン
3カメさんも死んだ。
チュッドーン
そして最後に2カメさんとハンディさんも撮影不能となった。
ADは何が起こっているか、わからずパニクッている。
こうしてリハは中断となったが、本番収録は何時になったら出来るか目処がたたなくなってしまった。
ハァー
『あたしは、いったいどうすればいいんだ?』
ミキが落ち込んでいると。
「はい♪ お姉ちゃん」
アヤが自販機でトロピカルマンゴージュースを買ってきてくれた。
「おっ、サンキュー♪♪♪」
ミキは、マンゴーが大好物である。
コクリッ
ふぁ~
「おいしいぃー。 生き返った~。 ありがとう、アヤ」
ミキは、思わずアヤに向かって微笑んでしまった。
「あっ! しまっ・・」
ミキは直ぐに気付くが、微笑んでしまったものは、もう仕方が無い。
「よかったぁ。 少し元気になったみたいね」
アヤは何事もなかったかのように、ミキの方に向いたまま話しを続ける。
「アヤ・・・ あ、あなた。 なんとも無いの?」
「えっ? 何が?」
アヤは何を訊かれているかわからずにキョトンとしている。
「う、いや。 何か、こう胸がキュゥンと苦しくなったりしなかった?」
「別になんともならなかったけど。 ・・・変なお姉ちゃん!」
「も、もしかしたら・・これ?」
ミキは、手に持っているトロピカルマンゴージューズのコップをじっと見つめた。
次回、「ミキ消滅する(その1)」へ続く
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