第160話 ◆ミキの苦難
◆ミキの苦難
さて、ミキはルナと同じく、ほぁ~とした笑顔でズッキューンが回避できないか散々試してみたが、芳しい成果は、とうとう得られなかった。
悲惨だったのは清水さんやルナで、特に清水さんは毎日一緒に居られる状態では無くなったため、ミキが居ない時間帯に実家から通ってもらうことにした。
そうこうしているうちに、体があまり丈夫では無いエミが忙しさから体調を崩してしまったため、こんな状況ではあったが、ミキが仕事をせざるを得なくなってしまった。
ミキは昔から自分の事は、あまり深く考えないで行動する。
エミが出られないなら自分がでるしかない。
それだけで、もう動く。
「ようするに、あんまりニコニコしなければいいんだよ」
心配するルナに適当に対応し、美奈子マネージャのクルマに乗って早速仕事に出かけて行った。
最初の犠牲者は美奈子マネージャであった。
「アヤちゃんを拾ったら、そのまま潮留に向かうからね。 そこで、11:00からリハで、お昼を挟んで13:00から本番ね」
バックミラーに映っているミキをみながら美奈子は今日の予定を説明し始めた。
「・・・」
「ねぇ、聞いてる?」
「あ、はい♪ わかりましたぁ」
ミキは迂闊にもにっこり微笑んでしまった。
美奈子マネ-ジャは、ルームミラー越しに、その女神の微笑みをしっかりと見てしまった。
ズッキューン
ごっ
美奈子は、余りの衝撃に失神寸前だった。
もし、クルマを運転しているという緊張感が無かったら、相当に危なかったであろう。
クルマは首都高を大きく数回蛇行し、周りのクルマからクラクション攻めに合う。
「い、今のは何? わたし心不全かも?」
美奈子は、自分の体調不良と勘違いし、最初に見えたICで下りる事にした。
ミキは、美奈子には到底説明できないので、今は知らない振りをするしかないと判断した。
「ねっ。 悪いんだけど。 わたし何だか具合が悪いかも知れない。 この先の病院で降りるから、あとはこのメモに今日のスケジュールが書いてあるんで、アヤちゃんと一緒に対応してくれる」
「わかりました。 任せてください」
「ところであなた、免許は持ってるわね?」
「はい♪」
しまったと思った時、ミキは思いっきり美奈子に微笑んでいた。
ドッキューン
ルームミラーを見て美奈子は失神した。
ミキは慌てて、後部座席からハンドルを握り、左手でサイドブレーキを引いてクルマを路肩に停めた。
「ふぅーー あっぶねぇーー! また死ぬところだったよ~。 おっ? そういえば、あたしってもう死なないんだっけ?」
ミキは助手席側から美奈子を引っ張って、運転席から助手席に移動させると、そのちょっと先の病院まで運転して行き、とりあえず美奈子を入院させた。
「あちゃー、もうこんな時間じゃん」
この騒動で、リハーサルの時間が迫っていた。
アヤには携帯で、一人で先に潮留に向かうように伝えたので、もう着いている頃だが自分の方が間に合いそうにない。
『仕方が無い、アレを使うか。 べつに悪い事に使うわけでも無いし』
ミキは美奈子のクルマを病院の駐車場に停めたまま、5W1Hを頭に思い浮かべて潮留1階の女子トイレに瞬間移動する。
フッ
ドップン
ぎゃあー
上手く瞬間移動できたと思ったが、ミキの片足は便器の中に浸っていた。
次回、「女神効果の特効薬」へ続く
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