第148話 ◆鋭二の気持ち(その2)

◆鋭二の気持ち(その2)


「お、お母さんって・・・」

鋭二は、二人の顔を見比べて、何だか嫌な予感がした。


「ま、まさか・・・」

「鋭二さん、ごめん。 これには深いわけがあるんだ。 話せば長い話しだし、聞いてもたぶん信じられないと思うけど。 大切な話しだから、最後まで冷静に聞いてください」

「わかった。 とにかく話してごらん」

鋭二は、ミキの真剣な表情に頷く。

「実は、この娘は、あたしが生んだ娘なんだ」

「なっ、なんだって! そんなばかな・・」

「だから聞いても信じられないかもって言ったじゃない。 でも全部本当の事なの!」

「だって、それが本当ならいったい、いつ生んだ子なんだ? 僕はミキが16歳の時に結婚したんだし、どうみても、その娘は16歳よりは年上に見えるぞ」

「ちょっと、落ち着いて聞いて! 順番に説明するから・・・ えっと・・・ この娘を生んだのは、一昨日おとといの10時半ころよ」

「一昨日おとといだって!?」

「あたしだって、未だに信じられないけど・・・ でも本当なの・・・」

そうしてミキは半日かけて、今まで自分の身に起こったことを、ゆっくり説明していった。

・・・

・・


一通り説明が終わり、リビングに重い空気が流れる。

グゥゥゥーーーー

ルナのお腹が大きな音を立てたので、お昼ご飯も食べずにいたことを思いだす。

清水さんは、深刻そうな話しだと察して、お昼ご飯の仕度だけすると空手道場に稽古に出かけていた。

「ちょっと待ってて。 今ご飯を暖めなおすから」

ミキは疲れていたが、ソファから立ち上がってキッチンに向かう。

「お母様、わたしもお手伝いします」

ルナも鋭二とでリビングに残されるのが嫌で一緒に立ち上がる。


「そんな・・・ 神様とミキの間に生まれた女神だって・・・ そんな夢みたいな話しが信じられるか?」

鋭二は、なんだか居ても立ってもいられない気持ちだった。

不可抗力とは言え、自分の妻と神様と言えども別の男の間に子供が生まれていたなんて・・・


「鋭二さん、ご飯の仕度ができたよ・・・」

ミキは、小さな声で鋭二に声をかける。

「俺ちょっと、表に出て頭を冷やしてくる!」

鋭二はそう言うとジャケットを羽織ると、そのまま外に出て行ってしまった。

「鋭二さん・・・」

ミキは、これからの事を想い暗い表情になる。

「お母様・・・」 

「ルナ・・」

「お母様・・ このお料理とっても美味しいわ」

ガクッ

「そ、そっちかい!」

思いっきりズッコケルミキの横で、ルナはほぼ1日ぶりに口にするご飯を美味しそうに食べ続けるのであった。



次回、「鋭二の気持ち(その3)」へ続く

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