第55話 ◆ミカ誘拐される
◆ミカ誘拐される
「鋭ニさん。 それじゃ、行ってきま~す」
ミキは、今日も元気いっぱいである。
「ああ、そうだ。 今日から歩けるようになるまでは、実家に行ってるから」
「うん、わかった。 さびしいけど我慢するね」
チュッ
玄関を出て外廊下から下を見ると、もうマンション前のロータリーに美奈子マネージャのクルマが停まっているのが見える。
「いけない! プチ遅刻だ」
ミキは、慌ててエレベータの▼ボタンを押す。
「ありゃ~。 こう言う時に限って、どっちも遠い階に停まってるなぁ・・・」
2機のエレベータは、1階から昇ってきているのと、5階に停まっているのとで、どちらも同じくらい時間がかかりそうだ。
ポ~ン。 ガァー
一台のエレベーターのドアが開く。
ポ~ン
それとほぼ同時に、タッチの差でもう一台のエレベータのドアも開く。
ミキが先にきたエレベータに乗り込んだ丁度その時、もう一台のエレベータもその階に着き、ドアが開いて中からミキが降りてきた?
えっ? ミキ? んっ? ひょっとして2号なのか?
カッ カッ カッ
2号のハイヒールの足音がマンションの廊下に響き渡る。
カツッ
その音は、やはり大沢家の表札の前で止まった。
ピンポ~ン
「あれ? だれだろう? 俺、動けないしなぁ・・・」
鋭ニは、天井を見つめながらどうする事もできない。
ピンポ~ン
その後もチャイムが何回か鳴ったが、出れないものは仕方がない。
しばらくすると・・・
ガチャ ガチャ
玄関の鍵を開ける音がする。
ま・・まさか
カチャッ
「鋭ニ様。 おはようございます」
何と鍵を開けて入ってきたのは、ヘルパーさん達であった。
「朝早くから悪いね。 荷物はあまりないんだ。 そこのカバン、二つだけだから」
「かしこまりました」
「それじゃ、高瀬さんと奥山さんは、僕と一緒に大沢の家へ行ってもらって、清水さんは今日からミキの世話を頼みますね」
「ハイ。 かしこまりました」
ちなみに清水さんは、女性である。
身長168cm B:88 W:58 H:91 顔は、加○あい 似である。
「大沢 鋭ニ・・・ ミキの夫か。 車椅子に乗ってる。 怪我をしてるのか。 好都合だ」
大変! 2号は、まだ大沢家のある階の通路の反対側から見ていたのだ。
ミキは、大丈夫なのであろうか。 まさか昨夜見た夢のように、既に2号に襲われてしまったかも。
グゥーーー
「!! はぅ~」
2号が、胃の辺りを手でさすっている。 相当お腹が空いているようである。
そう言えば、培養タンクから出てきてから食べたのはコロッケ1コだけ・・・
これじゃ、食いしん坊のミキのDNAを持った2号には辛いだろう。
カッ カッ カッ
やがて2号が踵を返して歩き始めた。 いったい何処に行くのであろう?
エレベータを降りた2号は、どうやら富士見が丘の駅に向かっているようだ。
「学習プログラムでは、ただで食べ物を手に入れるのは、デパチカかコンビニのゴミ箱と習ったが」
高嶋教授の学習プログラムっていったい・・・^^;
2号は駅前に着いたが、まだ8時20分。 デパートの開店は10時からなので、まだずいぶん時間がある。
2号はバスターミナルのベンチに腰を掛けて、どうやら開店するまで待つようだ。
「ミキお姉さま? こんなところでどうしたんですか」
朝の駅前の雑踏の中で、2号に声をかけて来たのは・・・・
「・・・」
「あっ、やっぱり人違い? 髪の長さが違うかも・・・ ゴメンナサイ」
「あなたは?」
「ミカっていいます」
「ミカさん?」
「ハイ。 でもびっくりしたぁ・・・ ミキさんにそっくりなんですもん。 それにそのブルーのワンピ。 クローンのエミさんが着てたやつに・・・ あっ、あ゛ーー」
ミカは、気付くの遅すぎた。
「ちょっと、アナタ。 こっちにいらっしゃいな」
逃げる間もなくミカは、2号に腕をしっかり捕まれてしまった。
「あ、あのぉ・・・ わたしこれから学校なんで・・・」
ミカは、泣きそうな声で、何とか2号に手を離してくれるように訴えるが・・・
「学校・・・? そんなの少しぐらい遅れてもいいじゃない」
2号はそう言いながら、バッグの中から香水のビンのようなものを出すとミカの顔にめがけてシュッとひと吹きする。
「あっ・・・」
ミカが小さな声をあげた途端。 その目はトロンとなってしまう。
「さぁ、ミカちゃん。 お姉さんと一緒にいいところにいきましょ」
「は・・い」
大変だっ・・・今度は催眠効果があるスプレーを使ったのだろうか?
次回、「正夢」へ続く
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