第47話 ◆ホームパーティ

◆ホームパーティ


11月の、とある土曜日。

土曜日なのにティンカーベルは、何故か仕事がオフである。(超売れっ子なのに、この日は偶然仕事の予定が入らなかった。 いわゆる谷間ってヤツである)


そんな理由ワケで、今日の午後からは、皆でホームパーティをする事になっていた。

パーティと言っても、ミキとエミとサキ。 それにミカの4人であるが・・・


皆さんは、ここまでのお話を読んできてくださっているとは思いますが、なにせ47話ともなると前の設定を忘れてしまった方も多いと思いますので、少しだけ整理をしておきませう。

(1)大沢ミキ →元は歴れっきとした男の子。 両親が研究中の新薬を誤って飲んで性転換してしまった。

女友達の第1号の神崎みどりの陰謀でアイドルとしてデビュー。

元マネージャの大沢鋭二と結婚し(結婚した事はマスコミには秘密になっている)今は鋭二が独身時代から住んでいたマンションで新婚生活中。


(2)神崎みどり→初代ティンカーベルのパートナー。 神崎グループのご令嬢。

芸名はサキ(自分で付けたけど)。 ピアノに打ち込むため引退。


(3)山口エミ →悪の天才科学者高嶋教授により造られた、ミキのクローン。

でも心はピュア。 サキの特訓で急成長したが、まだ世間知らず。

山口家の養女となりミキを姉として慕っている。 2代目ティンカーベルの相方。


(4)ミカ →  家出中のミキの面倒を見てくれた(拉致った?)女の子。 寂しがり屋。

好きなもの:ミキのFカップ。 高嶋教授に捕まったミキを助けるのに重要な役割を果たした。


お話しの続きに戻ります。 

それでホームパーティーは当然、大沢家(ミキの家)のマンションで行う事になっている。

サキは、お抱え運転手の高瀬さんが運転するロールスロイスで、ミカは近所なので歩きで。 エミはチャリでと、みんなバラバラで集合予定である。


そして、こちらは山口家のマンションエントランスが面した通りから、少し離れた所に停まっている車の中。

大変! なんと乗っているのは、あの杉山リポーターだ。 手には双眼鏡を持っている。


「今日は仕事の予定は無いはずだからな。 ここで待っていれば特ダネにありつけるかも知れないぞ」

流石にスッポンの杉山である! なにやら嫌な予感がしてくる。

・・・

・・


一方こちらは、山口家。 研究で忙しい山口両博士は今日も朝早くから出勤である。

「エミ。 それじゃ、いってくるわね」

「は~い、お母さん、お父さん。 いってらっしゃい」

「今日は、ミキの家に行くんだったね?」

「うん、お父さん。 サキさんとミカさんも一緒なの」

「そう。 車に気をつけて行くのよ」

「ええ。 大丈夫」

「もし何かあったら、お母さんの携帯に電話するのよ」

「はい」

智子ママとしてはエミの事が、まだまだ心配のようである。


「まだ7時ね。 お掃除とお洗濯をして・・・買物に行ってと。 結構忙しいなぁ」

エミは、かわいいエプロン姿で、てきぱきと家事をこなして行く。

この辺がミキのクローンなのに、オリジナルと大きく違うところである。


「ハーークション。 う゛ーー風邪引いちゃったかな~。 今朝は冷え込んでたしぃ」

それ、たぶん風邪ちゃうよ。 ミキちゃん。


「ミキ。 大丈夫? 熱は無い?」

鋭二はミキのことが、かわいくて仕方がない。 奥さんというよりは、まるで自分の娘のようだ。

「うん。 平気、平気」

「どれ?」

そう言うミキを抱き寄せて、おでこをくっつけ熱を測る。

コツン

「あっ・・・」

カァー

ミキは鋭二に、おでこで熱を測ってもらって、顔を真っ赤にしている。


「ほらっ、ミキ。 顔が赤いよ! やっぱり熱があるんじゃないのか?」

「だってぇ。 そんなに接近するからぁ」

「でも、かわいい奥さんが風邪を引いたら、心配じゃないか」

鋭二は、拉致事件以来、ミキに対しては超過保護なのである。


「今日は、みんなでホームパーティーをするんだ。 だから風邪なんて引いてられないのよ」

「そうそう。 サキちゃんも来るんだっけ。 久しぶりじゃないの?」

「うん。 もう2ヶ月くらい会ってないかも」

「サキちゃんは、来月からヨーロッパだったよね」

「そうなんだ。 だから今日は、壮行会も兼ねてるの」

「僕は帰りが遅くなると思うから、よろしく伝えておいて」

「うん。わかった。 さぁ、それじゃ朝ごはんの支度するね」

「おっと。 奥さん、こっちの朝ごはんがまだだった」

「あん。 やっ。 んっ・・・」

羨ましいって? でも、まだこちらは、新婚さんですから・・・

・・・

・・

↑この間は何?


「ふぅ。 鋭二さんたら、もぉ。 パーティの支度が遅れちゃうじゃない」

「ハハハ。 ごめん。 それじゃ行って来るね」

「あれ? 朝ごはんは?」

「もう、たくさん頂きました。 満足、満足」

「うっ、鋭二さんのえっちー」

んっ

チュッ

「じゃ、みんなによろしくね」

「いってらっしゃ~い♪」


さてさて。 旦那様も出かけたので、こちらも主婦の仕事に取り掛かるようである。

普段は仕事が忙しく、お家の事はあまり出来ないので、家事はたくさん溜まっている。

「う~ん。 いったいどこから手をつけようかなぁ。 とりあえずは、洗濯からかな」


洗濯機は全自動だから機械に任せて、その間に掃除である。

掃除も掃除機とフローリング部分は化学モップでスイスイ。 今時の主婦はとっても楽チンなのだ!

しかもミキの家は食器洗いも自動だし・・・


「最後の洗濯中(大沢家の週末は洗濯機を4回まわす)に、お買物に行ってこようっと」

ミキは外出時はかならず変装していく。 基本的には、ウィッグを付けてメガネをするだけであるが、これだけで別人になる。

加えて洋服は地味目でFカップが目立たない物が基本なのだ。


「紅茶とコーヒー。 ケーキとクッキー。 どっちがいいかなぁ・・・ 面倒だから両方買っちゃおう!! 余ったら私が処分するからってネ」


こんなんだからミキは、エミとの体重差が益々広がってしまう。 本当にダイエットする気があるのかどうか、甚だ疑問である。


さてミキは30分ほどで、ママちゃりの買物カゴに荷物満載で、ご帰宅である。

大沢家は、マンションの10階。 エレベータ・ホールのすぐ横なので、あまり人には会わない。

「さてと後は洗濯物を干して、お湯を沸かして準備完了。 ついでにお花でも飾ろうかな」

ピンポ~ン

「ありゃ? 早速誰か来たかな? ハ~イ」

ミキがインターホンで確認する。

「お姉ちゃん。 わたし」

「なんだ。 エミ? 早いじゃない」

「うん。 一人でいてもつまらないし。 早く来ちゃった。 何か手伝うことない?」

「ありがとう。 もう準備はだいたい出来てるからテレビでも見てなよ」

「えーー せっかく早くきたのにぃ」

エミは頬をぷくーっと膨らまし、たいそうご不満の様子である。


さて、そのころマンションのエントランスでは・・・

「白いほうが、このマンションに入っていったけど何階に行ったのかな? エレベータは5階と10階に停まったけど・・」

げっ、大変。 杉山だっ! 白いほうってオセロじゃないんだから。


なるほど・・・エミは、やっぱり尾行ツケラレタされたようだ。

おやっ? また誰かひとりエントランスに女の子がやって来たようだ。

「あの~。 すみません。 そこ通してくださいますか?」

「おっと、失礼。 お嬢さん、つかぬ事をお尋ねしますが、このマンションに芸能人が住んでいませんか?」

「芸能人ですか?」

「そう」

「どんな芸能人?」

「いや。 ご存知なければいいです」


杉山記者、こんどは5階と10階のそれぞれのメールボックスの名前を確認し始めた。

「怪しいなぁ・・・あの人。 何か臭いぞ~。 ミカの感は鋭いんだから」

ややっ、杉山に質問されていたのはミカであった。

この娘は、なかなか気転が利くので、今回も上手くかわしてくれたようである。 


後はサキが見つからなければよいのだが・・・


次回、 「それぞれの秘密」へ続く

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