第48話 ◆それぞれの秘密
◆それぞれの秘密
杉山に知られてはイケナイ秘密。 ひとつは、ミキが薬で性転換してしまった事。 これが発覚すると世の中が大混乱間違いなし!
そしてもうひとつは、エミがミキのクローンだって事。 こちらも人の完璧なクローンは未発表だし、倫理的な問題もある。
う~ん。 こんな二人が組んでいるティンカーベルって・・・
ピンポ~ン
さて、どうやらミカが到着したようである。
「ハ~イ」
ミキが玄関に迎えに出る。
「こんにちは♪」
「ミカちゃん。 いらっしゃ~い。 さぁ、どうぞ」
「おじゃましま~す。 ハイッ! ミカ、ケーキもってきましたぁ」
「ありがとう」
「そういえば、いまエントランスで、変な人に会いましたよ!」
ミカが不振顔でミキにさっきあった事を報告する。
「変な人って?」
「手帳を持って、このマンションに芸能人がいませんか?って」
「えーーっ。 それでミカちゃんは何て答えたの?」
「どんな芸能人ですか? って逆に聞いちゃった。 そしたら知らなければ結構ですって」
「ふ~ん。 その人メガネをかけてた?」
「・・たしか、かけてたと思いますけど・・」
「背は170cmくらいで、標準よりちょっとだけ太目とかじゃない?」
「そうデス。 そんな感じだったと思いますぅ」
「あとね、 メガネは今どき銀縁」
「そうそう。 その人だぁ」
「それっ、杉山だっ! あんにゃろ~ こんなところまで」
「お姉ちゃん。 あの人って・・・ストーカーだったの?」
エミが心配そうに聞く。
「違うわよ! きっと、わたし達の秘密を探りに来たんだわ!」
「ミキさんと、エミさんの秘密って?」
ミキの秘密と言う言葉に、ミカが思わず食いつく。
「ミカちゃん。 アンタ少し鈍いわね。 エミのクローンとわたしの・・あわわ」
「やっぱり、ミキさんも何かあるんですか? ひ・み・つ」
「ふっ・・・芸能人には何かしら秘密があるものよ!」
ミキは咄嗟に誤魔化す。
「へぇ・・・ミキさんの秘密って何? ねぇ、何なんですぅ?」
ミカは結構ねばる。 杉山といい勝負かも知れない。
「うっ・・・」
ミキは一瞬言葉に窮するが。
「たとえばぁ~・・・わたしが結婚してる事とかね」
ミキは更に上手くかわす。
「そっか。 そうですよね。 よかったぁ」
「ミカちゃん。 何がよかったの?」
「うん。 ミキさんが結婚してるって、ミカ、まだ誰にも喋ってないもん」
「そ・・そう」
『そうか。 それもあったか。 こりゃあミカちゃんにも気をつけにゃアカンなぁ』
そのころ。 マンションのコンコースに1台のロールスロイスが音もなくとまった。
そう、神崎みどり(サキ)である。
「高瀬さん。 ありがとう」
「お嬢さま。 お迎えは何時になさいますか?」
「8時ごろだと思うけど、後で携帯に直接連絡します」
「かしこまりました。 お気をつけて」
「・・・? あれは確か」
クルマから降りたサキは、どうやら先に杉山を見つけたようである。
サキはミキと違って、いろいろな事に良く気が付く娘なのだ。
「ハッ、ハークション。 う゛ーやっぱり風邪引いたかなぁー」
だからミキちゃん。 そのクシャミはちゃうねん。
「さて、あの芸能リポーターに気が付かれないように入るには・・・」
サキは植え込みの陰に隠れて、ミキの部屋に見つからないように行くには、どうすれば良いかを考える。
実はこのマンションには、入口が二つある。
ひとつは、マンションの正面(今サキがいるところ)
もうひとつは、マンションの裏庭側(いわゆる非常口)である。
非常口は、マンション住人用の鍵が無いと入れない。
「そうだ。 携帯でミキに開けてもらえばいいよね」
サキは、早速、杉山に気付かれないように、裏庭側に周り込んで、ミキに電話する。
ピッピッピッ
「ミキ。 わたし。 そう。 えっ? 芸能リポータ? うん。 いるいる。 だから、裏側の入口まで迎えに来て。 そう、よろしく」
ピッ
しばらくすると裏口にミキがやって来た。
「サキ! 久しぶりぃ~。 会いたかったよ~」
ミキは思わずサキに抱きつく。
「そんなことより、早く入れてよ。 積もる話は、お部屋でゆっくりね」
「そ、そだね。 ごめん」
二人は裏口からミキの部屋を目指した。
やれやれ。 やっと全員無事にそろったようである。
女3人そろったら、かしましいと言うが、元男の子とそのクローンもすっかり女の子である・・・いやいや、うるさいうるさい。
言葉がマシンガンのように行き交う。 聖徳太子でもぜったいに解読困難であろう。
それに、しゃべるだけでなく、お菓子もお茶もガンガン・・・
「ねぇ、サキちゃん。 今度の発表会はウィーンでしょ。 すごいなぁ」
「わぁ、ミカもウィーン行ってみたいですぅ」
「そうなんだけど・・・今度のは流石にプレシャー大きくて・・・」
「それって、出場者のレベルが高いって事?」
「そうなの。 それに今わたし、スランプだし・・・」
「サキさんでもスランプになるんですか?」
ミカは、いろいろなところで食いつく。
「そりゃ~ね。 周りのレベルが段違いだもの。 わたしなんか練習しても、もうこれが限界かって思えるのよね最近」
「サキにしては、珍しく弱気じゃない?」
「そうなの・・・なんだかミキとティンカーベルやってた時の方が楽しかったナ」
「サキ・・・」
鈍めのミキも、流石にサキの様子が少しおかしいのに気づいた。
「ねぇ、せっかくだからサ。 今日みんなでうちに泊まっていかない?」
「でも、ミカ着替えもってきてないです」
「大丈夫。 サキのは、うちに少しあるし。 エミとミカちゃんは、わたしの新しいのがあるし。 パジャマも部屋着もたくさんあるし。 ネッ♪」
「わぁ~い。 パジャマ・パーティだぁ」
そのころ、外でうろうろしている杉山リポータは・・・
「う゛ーー。 冷えて来たなぁ。 今日はこのくらいにしとくかー」
ひぇーくしょいー う゛ーーー
次回、 「えっ? ばれちゃった?」へ続く
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