第46話 ◆芸能リポータ・杉山

◆芸能リポータ・杉山


「ふんふん。 クローン? 姉の方もなにか秘密がありそうっと。 今度徹底取材だな!」

大変! 高嶋教授の後は、変な芸能リポータに狙われる羽目に・・・

それに職業柄、なんだか高嶋教授よりも質たちが悪そうな気がする。

なぜなら下手をしたら、ふたりの秘密が世間にバレてしまう事になるからだ。


「お姉ちゃん、そろそろ時間だよ」

エミが時計を見ながら、ミキにもう時間が無いことを伝える。

「えっ、もう・・・わたしはまだ全然食べて無いよ~。 でも、まっいいか。 ちょうどダイエットしてるし」

「あれっ? お姉ちゃんって、ダイエットしてたの?」

「だって、エミのほうが1キロも体重少ないじゃない」

「えーーっ。 でもたったの1キロだよ~」

「むぅ~。 その1キロがね~。 ウエストを中心に・・・ ほらっココ!」

ムギュッ

ミキはエミに自分のわき腹のお肉を摘まんで見せる。

「やっだぁ・・・ほんと? 信じられない~」

エミの目がまんまるくなる。

「くっ、 エミィーーー」

「きゃーー。 助けてーー」

「こら待てぇーー」

「アハハ」


ミキもすっかり女の子。 スタイルがとっても気になるようである。

っていうか、アイドルは、やっぱり太ったらダメだろ。


一方、こちらは食堂の隅から様子を窺っている杉山リポーター。

「おっ これから本番かな?  どりゃ、もう少し様子をみてみるか」

う~ん。 芸能リポータはしつこいですから・・・残念!!

というワケで、杉山はスタジオまで付いてきてしまった。


「姉の方は、初代ティンカーベルでデビュー。 芸能界に入る前はっと・・」

カタカタッ

ノートPCで情報検索している。

「う~ん。 スカウトされたというより、相方の神崎みどりがオーディションに応募してたのか・・・」

カタカタ

「それで、デビュー前は? ほぉ・・ 親父さんは、有名な科学者じゃん」

カタ

「んっ? 姉の情報はあまり出てこないなぁ・・・ では、妹の方はっと・・・」

カタカタカタ

「ありゃ? 表示が何にも出てこない? 少なくて生年月日くらいは入ってるはずなんだけど。 オイオイ。 高い金を払って情報を買ってるんだぜ! まったく」


ピッピッピッピッ

トゥルルル トゥルルル

「はい。 芸能情報バンクです」

「杉山だけど」

「ああ。 杉山さんですか。 何時もお世話になっています」

「あのね~。 ティンカーベルの妹のデータが入ってないんだけどサー いったいどういう事?」

「ああ、山口エミですね。 すみません」

「そうだよ。 こっちは高い情報料払ってるんだぜー。 何にも表示が出ないってのはどういう事なんだ?」

「こちらも、調査中なんですけど。 今わかってるのは、山口家の養女だって事だけで」

「養女だって?」

「ええ」

「養女ったって・・・ありゃ双子だろ?」

「そうだと思いますが・・・」

「ふ~ん。こいつは、やっぱり何かありそうだな。 それじゃ何かわかったら、大至急連絡くれよ!」

「はい」

プッ


電話を切ると杉山は、ブツブツ独り言をつぶやき始める。

「双子なのに養女? 昔、理由ワケがあって生き別れになった妹が見つかり養女として籍を・・・ いや、自分の娘なのに養女ってのは、やっぱり変だな」

う~ん・・


「杉山さん! す・ぎ・や・ま・さ・ん!」

「おわっ!! な、なんだ」

急に名前を呼ばれて杉山は慌てる。

「こんなところで何してるんですか?」

「き・・君は」

いつの間にか、杉山の後ろにエミが立っていた。


「きつねうどん、とってもおいしかったですよ」

「そっ、そっか。 うまかっただろ。 あそこのは、東京こっちじゃ最高さっ」

「あれ~? 杉山さんて、東京の人じゃないんですか?」

「おぅ。 おれは、普段訛りは無いけど岡山だ」

「ふ~ん」


「エミ そこで何してるの!」

エミと杉山が楽しそうに会話しているのを見て、ミキが驚いて駆けて来た。

「あっ、お姉ちゃん。 ほらっ、さっきの・・・」

「ああ、芸能リポータの方ね。 さっ、早く。 楽屋に行くよ」

「う、うん。 それじゃ、失礼します」

「ああ、またなっ」


「お姉ちゃん。どうしたの? ちょっと失礼じゃない」

「エミ。 いい? あの人はね。 芸能リポータなの!」

「うん。 知ってるよ」

「芸能リポータってね。 芸能人のゴシップやスキャンダルを記事にする私たちにとっては、敵のような存在なのよ」

「ええーーー。 そうだったの?」

「そうよ。 さっきも言ったでしょ、気を付けなさい。 私たちの秘密は絶対に知られたらいけないんだから」

実は杉山記者は、「スッポンの杉山」というあだ名が付いていて芸能人の間からは、とても嫌われている人物なのである。

ミキとエミの秘密は、バレずにすむのだろうか。


次回、「ホームパーティ」へ続く

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