第36話 ◆コスプレでごめんなさい!(前編)

◆コスプレでごめんなさい!(前編)


読む前のお約束:『 』の中は、ミキの心の声デス。


チュン、チュン・・・

「う・・ん。 ふわぁ~。 もう朝ーー?」

ミキは小鳥の声で目が覚める。 目に飛び込んできたのは、知らない天井である。 そう、昨日はミカのうちに泊めてもらったのだった。


もみゅ・・・

??? クッ・・・

ミキは予想外の感触に思わずビクッとする。

チュバッ・・・チュッ

「げっ・・・こ、この娘は・・・っとにぃ・・・」


読者の皆さんのご想像通り、ミカが寝ながらミキの・・・

チュポンッ

ミキはミカが起きないようにそぉっと引き離し、洗面所で顔を洗うと台所へ向かう。

一宿の恩ってね。 ミカちゃんに美味しい朝ごはんを作ってあげる♪

ミキは、昨日の事もすっかり忘れ、鼻歌まじりにテキパキと料理をしていく。 流石に現役主婦である。

「よし、完成~! う~ん、デリィシャスゥ~」


バタバタバタッ・・・

朝ごはんの仕度を終えた途端、ミカが物凄い音を立てながら廊下を駆けてくる。

「んっ? ミカちゃん、どうしたの? そんなに慌てて」

「あっ、いたいた。 良かったぁ・・・ だってミカが起きたらミキさん、いないんだもん。 びっくりしちゃったぁ」

『びっくりしたのは、コッチのほうよ!』

思わず心の中で突っ込みを入れる。


「うわぁ・・・美味しそう」

ミカは食卓にずらりと並んだ料理を目にして、目をパチパチさせる。

「でしょ、でしょ! ミカちゃんのために、わたし腕をふるったんだぞ!」

「う・・・うれしい♪」

「おっと、抱きつくのは無しね。 お料理が冷めちゃうよ。 早く顔を洗っておいで」

「ハ~イ」

『やっけに素直ねぇ?』


さて、ミカが洗面を済ませて戻ってきて、豪華な朝食のはじまりである。

「さぁ、どうぞ召し上がれ♪」

パクッ

「すごぉーい。 美味しいぃーー!。 こんな美味しい料理、レストランでも食べたことないよぉ!!」

「よかったぁ。 喜んでもらえて!」

グスッ・・・ポロポロ・・・

「あらら・・・ミカちゃん。 どうしたの?」

「ごめんなさい。 ミカ嬉しくって・・・ いままで朝ごはんは、いつも一人で食べてたし・・・」


『可哀想・・・』

思わず胸がきゅんとなる。 もしかするとわたし母性愛に目覚めちゃったとか?

「ミカちゃん。 今日はワタシも一緒だし。 たくさん食べてネ」

「うん」

・・・

・・ (只今お食事中デス)

さて、朝ごはんの後片付けも終わり、ミキもそろそろ家に帰らないといけない時間だ。

確か午後から仕事も入っていたハズだったよな~。


「あ~ぁ、みんな怒ってるだろうなぁ・・・どうやって謝ろうかなぁ・・・憂鬱だなぁ」

ハァ~

ミキがどう謝ろうか悩んで、ため息をついていると・・・


「そうだ、ミカの所為でもあるから、一緒に考えてあげるよ」

「でもねぇ・・・彼、かなり怒ってたしなぁ・・・」

「ええっ、ミキさんて彼氏いたんですかぁ。 ちょっとショックですぅ」

「彼氏ねぇ・・・まぁ・・・ちょっと手強い相手って言うかぁ・・・」


ミキも、だんだん女子高生みたいな言葉づかいになってきている。

「そうだ。 男殺しは、やっぱ一に裸エプロン、二はナース、三は女子高生のコスプレって事でどうデス?」

ミカが目をきらきらさせながら提案してくる。

「コスプレ?」

「そう! もうこれきゃ無いってば! お姉さまっ♪」

「そ、そうかなぁ・・・」

「間違いないって! ミカ絶対保証しちゃう♪」

「ほんとに? でもあんまり過激なのはねぇ・・・」

ミカの絶対保障は、今ひとつ信用ができない。


「それじゃ一番人気のウエイトレスさんとかぁ・・・バニーガールなんてどぉですぅ? カワイイし、彼氏、もうメロメロで怒るどころじゃないですよぉ」

「そおかなぁ・・・?」

「そうですよぉ。 お姉さまのコスプレだったら見たとたん、瞬殺間違いなしデス」

「う~ん。 でもぉ・・・肝心な衣装が手に入らないよぉ」

「うふっ、それなら大丈夫デス。 わたしこう見えてもレイヤーなんですよ。 夏コミ、冬コミも常連だしぃ。 衣装もクローゼットに、たくさんですぅ」

「えぇっ、そうなの?」

思わぬ展開にミキも少々困惑するが。


「お姉さま、こっち、こっち。 ほらっ!」

ミカに手を引かれて奥の部屋に行くと、凄い量の衣装がクローゼットに吊るされている。

「うわぁ・・・すごーい。 これなんの衣装?」

「それはですねぇ・・・ゲームキャラのコスチュームですよ」

「ふ~ん。 こっちの光ってるのは?」

「これは、SF映画のヒロインが着てたヤツです♪」

「たくさんあるんだねぇ」

ミキは興味津々で、ひとつひとつ手に取ってみていく。


「素敵でしょ♪ お姉さまが好きなの貸してあげる」

「えっ? これ借りてもいいの?」

「もちろんですよぉ」

「う~ん。 じゃぁ、コレとコレを貸してもらおうかな」

「それパット入れるんで、ミカには少し大きめに作ってあるんだけど、お姉さまだとちょっと胸が少しキツイかも・・・」

「大丈夫・・何とかなりそう」

ミキは、エナメルの黒く光る衣装の袖に手を通しながら、自分の姿を鏡に映して頷く。

「ほんとに、そんだけでいいんですか?」

「うん。 大丈夫・・」

「そうだ、こんど一緒にコミケ行きましょうよ♪」

ミカは大はしゃぎだ。

『オイオイ・・・ワタシは元々その趣味はないんだからね』

ミキは思わず心の中で思う。

「それじゃ、この手さげ袋に入れておきますね」

「うん、ミカちゃん。 どうもありがとう」


さて、さて、コスプレの衣装を借りたミキだが、果たして鋭二の反応は如何に?


次回、「コスプレでごめんなさい!(後編)」へ続く

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