第32話 ◆星に願いを

◆星に願いを


「ひどい。 ひどいよ! 何で最初に言ってくれなかったのさっ!」

「ミキ・・・」

「だったら、わたし結婚なんかしなかったのに!」

「ミキ。 落ち着きなさい」

「ミキちゃん。 ちゃんと話しを聞いて!!」

「嫌っ!」

バタン

ダダダダッ

ミキは衝撃の事実に思わず夜の街に飛び出していってしまった。


はぁ、はぁ・・・

「わたし、きっと死んじゃうんだ。 いままでだって、いつもいっつも運が悪かったもん」


グスッ

「2週間かぁ・・・もう4日目だから・・・後10日の命かも知れないんだ! どうするミキ?」

自分自身に問い掛けてみるが、かなり動揺しているためとても冷静になれない。


「そもそも、父さん達があんな薬を冷蔵庫なんかにしまって置くのが悪いんだぞ!」

ブツブツ独り言を言いながら歩いていると、いつの間にか街外れの小さな公園にたどり着いていた。


「そうだ、ここは小さい頃、お父さんとキャッチボールをした公園だ。 あの時は随分大きな公園だと思ってたのに・・・」

誰もいない公園の隅っこでブランコに腰をかけ、体をぐいっと反らせると目に星々がいっぱい飛び込んでくる。


「うわぁ、すごい星。 そう言えば死んだらお星になるって話しもあるなぁ・・・」

ミキは、どうやら自分はもう死んでしまうと決めつけているようだ。

「鋭二さん・・・赤ちゃんどころじゃなくなっちゃたよ。 ごめんね」

グスッ


うっ・・・また気持ちが悪くなってきちゃった・・・

こんなところでどうしよう。 そうだ、しばらくベンチで横になっていよう。

ミキは砂場の横にあるベンチで仰向けになる。 ふたたび綺麗な星空が目の前に広がった。

☆彡

「あっ、流れ星。 どうか死にませんように。 死にませんように。 死に・・・」

はぁ~

「やっぱ3回は無理かぁ。 今頃みんな心配してるだろうな・・・」

ミキは、落ち着きを取り戻し、徐々に冷静になってきた。


♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪

静かな夜の公園に携帯の着メロ セカンドシングルの「Love Letter」が流れる。

ピッ!

「もし・・・もし」

「ミキ! 今どこにいるんだ?」

「え・・・鋭二さん」

「事情はお父さん達から聞いた! 話しがしたいんだ。 直ぐにそっちへ行くから場所を教えて!」

「ごめんね。 今は一人にしておいて欲しいの」

「ミキッ、ミ・・」

ピッ!

ミキは鋭二の声を聞くのが辛くてスマホの電源を切る。

「ごめん。 鋭二さん」

グッ・・ゲホッ、ゲッホッ・・・

「ふぅ、 だんだん酷くなってきてるみたい」



そのころ、山口家では・・・

「鋭二くん。 美樹は?」

「ダメです、お父さん。 電源をOFFにしたみたいで」

「美樹のヤツ、いったい何処にいったんだ。」

「わたしは、あの子はそんなに遠くに行ったとは思えませんけど・・・」

「お母さん。 心当たりがあるんですか?」

「そうねぇ・・・ひとりでいられる場所って、喫茶店、ファミレス、本屋さん、公園なんかからかしら? あの娘、気持ちが悪いはずだから、食べ物屋さんやコンビニには行かないでしょ」

「そうなると、公園の可能性が大ですね」

「家から近い公園だと団地の中か、幼稚園の先にある公園だろう。 美樹とよくキャッチボールした公園は、幼稚園の先の方だったな」

「それじゃ僕、公園を探してきます」

「鋭二くん。 君ひとりじゃ場所がわからないだろうう。 私も一緒に行こう」


「ほんとに話しを最後まで聞かないで飛び出して行って。 困った娘ね」

智子ママが、苦り顔をしている。

「お母さん。 最後までって、何ですか?」

「実は嘔吐したラットが死んでしまった原因は、分析してわかっているの」

「えっ? 原因は何だったんですか?」

「ラットの餌に配合してあった検査試薬で、それを食べた方のラットが死んだの」

「それじゃ、ミキは」

「もちろん、2週間で吐き気は止まるし、試薬と同じ成分を取らないようにしていれば、それで直るハズなんだ」

やれやれ、ミキも慌て者だけど、今回はお父さん達にも問題があるような気がしますがね・・



次回、「捜索願い」へ続く

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