第21話 ◆大沢さん

◆大沢さん


大沢鋭二 26歳 独身 ティンカーベルのマネージャー

某一流大学卒。 資産家の息子 しかも次男 ・・・ゴクッ


ミキは最近、少し様子が変である。

マネージャーの大沢さんと目が遭うと顔が赤くなったり、胸がきゅんとなったり、ドキドキしたりする。

特にサキが席を外したりして二人きりだと、急にそわそわと落ち着かなくなる。


現に今もサキが飲み物を買いに行っていて、大沢さんと楽屋に二人っきりだ。

あぁ、サキ早く帰ってこないかなぁ・・・

大沢さんと何か話しをしなくっちゃ・・・でもどんな話題がいいんだろ~ あ~ どうしよ~


「○△★□◆・・・ って、ミキちゃん。 聞いてるかい?」

「うわわ・・・ハ・・ハイ聞いてますぅ・・」

聞いてますって言ってはみたが、実はうわのそらで何も頭に入っていない。


「何か変だな? 熱でもあるんじゃないか?」

そう言って、おでこをピッタリくっつける大沢さん。

カァーーーー

途端に顔が真っ赤になり、体温も急上昇!


「ミ・・・ミキちゃん。 大変、すっごい熱だ!」

「あ、あのーー。 ち、違うんです」

両手をひらひら振って、勘違いアピールするが逆効果になる。


「ダメダメ。 無理しちゃ! 今日の収録分は明日に延ばしてもらおう。 今、交渉してくるから、ここでまってて!」

「あぁっ・・」


「ミ~キィ~。 み~ちゃった♪」

「サ・・サキ。 どうして・・いつからそこにいたの?」

振り向けばサキが、三日月目でニヤニヤしながら立っているではないか。


「大沢さんて、ちょっと鈍いよね。 ミキがこ~んなに好きなのに」

「ちょっ・・からかわないでよ。 もぉ、恥かしい」

「あら~? 他の女の子に取られないうちに、早く襲っちゃわなくっちゃ~」

「ヤダ・・襲うって。 サキったら何言ってるの?」

「だって大沢さん、かっこいいし。 狙ってるグラドルなんか結構多いみたいだよ!」

「えっ そ、そうなの?」

「だからね。 ごにょごにょごにょ・・・」

「ええっーー。 そんな・・・」

「ふふっ。 それでね・・ ごにょごにょ・・・ ピーー・・でしょ。 やっぱり」

「だって、そんな事したら・・・かえって嫌われちゃうよー」

「まっ、実行するかしないかは、ミキ次第だけどネ!」

「・・・か・・・考えとく」 ポッ

「OK。 じゃっ、頑張って。 わたしも応援するから。 あとは実践あるのみ」

ウィンクしながら、そういい残してサキは先に楽屋から出て行ってしまった。


タイミングよく、入れ替わりで大沢さんが戻ってきた。

「ミキちゃん。 大丈夫? 今日の収録は明日に延ばしてもらったから。 さぁ、早く。 送っていくから駐車場に行こう。 アレッ? サキちゃんは?」

「あ・・・あの。 用事があるんで一人で先に帰るって・・・」

「そう。 それじゃ行こうか」

「ハ、ハイ」


実はサキから入れ知恵されて、それを実行するかミキは悩んでいた。

どんな入れ知恵かって? それは・・・

(1)クルマで送ってもらう途中で気分が悪くなったフリをする

(2)どこかホテルとかで少し休みたいと言う

(3)具合が悪いフリをして寝込み、暗くなるまで時間を稼ぐ

(4)目が覚めた時、汗をかいたからシャワーを浴びると言う

(5)バスタオルだけ巻いて出てくる

(6)まだ具合が悪くてフラフラすると言いながらベッドに倒れこむ。 出来ればその時、バスタオルは少しハタケさせる

(7)心配した大沢さんが近づいた時に「○#%&☆★」と言って抱きつく

(8)場合によっては「わたし今日は帰りたくないの・・・」と言う

こんな女の悪だくみだったのだ。


さてクルマはTV局を出て首都高速に乗り高井戸ICを目指す。

10分ほど経った頃、まずは作戦の第一ステップ開始である。

「あ・・・あのーー大沢さん。 あ・・あたし、ちょと気持ちが悪い・・・」

「えっ!? それは大変だ。 すぐ高速を降りるからね」

「す、すみません」

「あ・・いや。 それより大丈夫かい?」

「うっ・・・」

演技は続く。


「大変! いま休憩できるところ探すから。 もう少し我慢して」

ドキ ドキ

こ、これって、う・・うま過ぎる展開?


間もなくクルマは高速を降りると、大きなシティホテルの玄関に横付けになった。

「さぁ、ミキちゃん。 着いたよ。 ここで少し休んでいこう」

「ハ、ハイ」 あれ? 何も言ってないのにホテルに着いちゃった。

大沢さんは、ドアボーイにクルマのキーを渡すと、わたしの肩に手をまわしてフロントを目指す。


ドキ ドキ ドキ

「明日、週刊誌かなんかに載っちゃったらどうしよう・・・」


フロントには、品の良さそうなマネージャと女性スタッフが3人ほど並んでいた。

女性スタッフは、みんな大沢さんのことをハート目で見ている。


「これは、鋭二様。 どうなさったのですか?」

あれ? フロントマネージャは、苗字でなく鋭二様って呼んでる?


「ちょうど良かった。 高村マネージャ、申し訳ないけど一番良い部屋を用意してくれる? 病人なんだ」

「はい、只今」

そう言うと直ぐに、マネージャは明らかに他の部屋のと違う金色の1本の鍵を大沢さんに手渡した。

「ミキちゃん、直ぐに横になれるからね」


わたし達は、そのままエレベーターに乗り、大沢さんが最上階のボタンを押す。

あぁ、やっぱり良い部屋は最上階なんだ。

んっ、待てよ? 芸能プロダクションのマネージャにしては、顔が利きすぎてない?

いったい大沢さんって・・・


「あ・・・あの・・このホテル・・・」

「あぁ、ここはね。 父が経営しているホテルの内の一つなんだ」

「えぇっ、大沢さんって凄~い!」

「いや、別に僕が経営してるわけじゃないし」


ポ~ン

最上階に着き、エレベータのドアが開いた。

「こ、ここは・・・」




次回、「ミキ攻める」へ続く

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