第15話 ◆そしてアイドル

◆そしてアイドル


「ふふっ、ごにょごにょごにょ・・・」

「ええっーーー!」


ここでの会話を聞こえるようにすると!

「ふふっ、実はね。 オーディションなんか受けなくてもアイドルデビューできる事になったのよ♪」

「ええっーーー!」

と言うようになります。


「それでね、事務所の人がどうしても二人ペアでデビューさせたいんですって!」

「そ、それって・・・」

「そう、ピ○クレディとかウイ○クとか見たいに」

「・・・・・」

そんな。 それじゃ、これからもみどりさんとずっと一緒にいなきゃならないじゃん!

あ、悪夢だ~!!


「あ、あの~。 でも学校とかは?」

「学校なら、理事長の娘の特権ってやつで何とかなるわよ」

あちゃ~そうだった。 みどりさんは理事長の娘だったっけ。

「それでね、デビューの日は7月30日に決まったのよ」

げげっ、もうそこまで。 この行動力。 まったく信じらんねーよ。


「わ、わたしの都合は、どうなるの? 夏休みは、いろいろと予定があったのに」

「なにを言ってるのよ! 夏休みだからデビューに打って付けなんじゃない!! こう言う事は、最初が肝心なの!!」

「えーーーだってー」


ギロッ

ビクーーー。 ひゃーーあの目で睨まれると弱いんだなー。

「初日、つまり7月30日はね。 何と24時間TVのアシスタントでデビューよ! 凄いでしょ~。 いきなり全国放送でデビューなんて」

あちゃー。 24時間TVだって~?。 まったく少しはわたしの事も考えてくれっつーの!


「それでね。デビュー曲は、あの有名な○○○が作詞・作曲なんだって! すごいでしょ~」

「ええっー、それホントなの?」

「うん。 実はわたしデビュー曲、もう聞いちゃった♪」

「えーー。 ズ、ズル~イ」

「そう言うと思った。 うふふ。 コレ、な~んだ」

みどりさんはニコニコしながら、ショルダーバックからオーディオプレイヤーを取り出して見せる。

プレーヤーのウインドウには、「ティンカーベル・夢の中」と表示されていた。

「その中にデビュ-曲が入ってるの? ねぇ、早く聞かせてよ!」

「うん。 すっごくイイ曲よ!」

「へぇ~”夢の中”って言う曲なんだ。 ティンカーベルって、もしかしたら・・・」

「そう、わたしたちのユニット名」

「ちなみに、デビュー衣装は、これね」

みどりが見せてくれた1枚の写真には、ティンカーベルをイメージしたカワイイ衣装が写っていた。

「こ、これ・・・。 やっぱ着なくちゃいけないのかなぁ」

「何言ってるの! ステージ衣装なんだからあたりまえじゃないの」

「でも超女の子っぽくって、恥かしいよ~」

「大丈夫よ。 すぐになれちゃうから」

「そ、そんなもんかなぁ~」

「うふっ、そんなものよ。 さぁ早く聞いてみて♪」

「うん」

シルバーピンクのオーディオプレーヤーにヘッドフォンを刺し、ゆっくりとPLAYボタンを押す。

イントロが流れ出すまで、胸のドキドキが止まらない。

次の瞬間、ハーブの綺麗なイントロが流れ出した。


ねぇ、ここは夢の中? いつか見た景色と同じだわ。 青い海と綺麗な虹。

二人手をつなぎ、白い砂浜を歩いているの。 あぁ夢ならお願い覚めないで。

あの頃のまま、いつまでもいられるように。 私だけを見ていてね。

あぁ、いつの間にか夢の中。 去年の想い出。 出会った海辺。

もう、もとには戻れないの? こころが痛い、張り裂けそうよ。

わたしティンカーベルのように、あなたのもとへに飛んで行きたい。

・・・

・・


「はぁ~。 綺麗な曲ね~」

「でしょ? 実は歌っていたのは、わ・た・し」

「ええーーーっ! なんで?」

「ミキのパートもずらして録音したんで大変だったのよ」

「わたしのパート?」

「そう、本格的なレコーディングは来週水曜からだって。 これは試しにBGMだけのテープをもらって、うちのスタジオで録音したものなのよ」

「来週かぁ・・・ はぁ~ 自信ないなぁ」

「そうそう、CD用の写真撮影は火曜で、月曜日はその衣装合わせだって」

「なっ、それじゃ結局毎日って事じゃん」

「そうよ、アイドルに休みは無いのよ!」

「うぇ~。 わたし、やっぱ辞めるーー」


次回、「ティンカーベル」に続く

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