第16話 ◆ティンカーベル(ミキとサキ)
◆ティンカーベル(ミキとサキ)
そして運命の日。 7月30日の朝がついにやってきた。
朝って言っても、まだ4時半なんだゾ! まったくもう!
身支度を整えていると、早くも事務所のクルマが迎えにやってきた。
ちなみに熱が出た日から、わたしは自分の家に戻って来ていたのだ。
クルマは早朝だったこともあって、あっという間に高井戸ICに着いたけれど、首都高に入ってから直ぐに渋滞にハマッテしまい、ノロノロ運転になってしまった。
無事、時間どおりに着けるんだろうか? もし遅刻したら・・・
ブルッ・・・思わず身震いする。
あ゛~みどりさんの怒った顔が目に浮かぶ~。
今日のスケジュールは、朝6時にスタジオに入り簡単なミーティングの後、すぐにオンエア。
でもアシスタントって言っても、大した事をやるわけじゃない。
まず最初に24時間TVの総合司会者である○●○さんに、わたしたちティンカーベルを簡単に紹介してもらう。
1時間くらい経ったころに、デビュー曲「夢の中」を歌って、その後に東京→横浜→大磯とリレー中継先をまわって、またスタジオに帰ってくる。
帰ってきたころは22:00くらいの予定で、その後ちょっとだけ休憩。
あとは朝まで立ちっ放し・・・トホホ。 男のままだったらヒゲがのびちゃうって!
しかも24時間TVの後(つまり次の日)は学校へ直行し、放課後は飛行機で大阪へ。
大阪でTOP10にゲスト出演して最終便で、また東京へ戻って来る。
あ゛~絶対にからだがモタナイって! みどりさんってなんで平気なんだろ?
「ミキちゃん、何ぶつぶつ言ってるの? もう着いたよ」
マネージャーの大沢さん(ちょっとカッコイイ26歳独身)に声をかけられてハッと我にかえる。
「えっ、わたし何か言ってました?」
「うん。 オトコだったら、ヒゲがどうとか・・・」
「あぅ~。 な、何でもないですぅ」 思わず顔がポッと赤くなる。
「ハハハ。 ミキちゃんってカワイイなぁ」
「もぅ、大沢さん。 か、からかわないでください。」
初めてのTVスタジオ。 辺りを見ればあちこちにに芸能人が・・・って当たり前か!
もの珍しくてキョロキョロしていると
「ミキーー。 こっちこっち」
「あっ、みどりー」
「今来たところ?」
「うん。途中渋滞しててね、大変だったの」
「さぁ、早く着替えて、打合せに遅れちゃうよ」
ジィーーー
「えっ? わたし何か変?」
「ううん。 みどり、すっごくカワイイなって!」
「あぁ、コレ? もうメイクさんにお化粧してもらったからじゃない?」
「そうなんだ。 うわあ、みどりのまつげ長~い」
「マスカラのせいよ。 あっ、そうそう。 わたし達の名前なんだけど」
「なまえって?」
「ほらっ、”みぃ”と”け○”とか”早智○”と”翔○”とかってヤツ」
「あぁ、それがどうしたの?」
「にぶいなぁ・・・もう。 ”ミキ”と”みどり”じゃバランス悪いじゃない」
「そうかなぁ・・・」
「えへん。 きょうからミキは”ミキ”でぇ~、わたしは”サキ”」
「え~。 それじゃ、わたしは変わってないじゃない」
「いいのよ。 ちなみに”サキ”はね”神崎”の”崎”よ。 いい? わかった?」
「ハイハイ。 サキかぁ・・・」
「いけない。 早くしないと、始まっちゃう!! さぁ楽屋に行くわよ。 ミキ」
「失礼しま~す。 ティンカーベルのサキとミキです。 メイクさん、衣装さん、よろしくお願いします」
「待ってたのよ~。 あなたがミキちゃんね? さっ早く服脱いで!」
「あっ、ちょ、ちょっと」
あっと言う間に、手が伸びてきて、パパッと服が剥ぎ取られたと思ったら、もうサキとおそろいのティンカーベルのステージ衣装姿になっていた。
「はい。 次こっちよ。 ここに座って」
手を引かれて大きな鏡の前に座らされるとメイクさんがテキパキと髪形を整え、化粧をして行く。
「ハイ。出来上がり! うわ~。ミキちゃんもサキちゃんもすっごくカワイイね~」
「ほんと。 これなら直ぐに人気者間違いなしね」
スタイリストさんやメイクさんに、そう言われると、照れくさいけど嬉しい。
「あ・・・ありがとうございます♪」
この間、わずか10分。 なんだかワケがわからないうちに、周りが凄いスピードでどんどん動いて行く。
「ティンカーベルさん、支度出来ましたか? 出来たら3スタに急いでください」
「大変、ADさんが呼びに来ちゃった。 ハ~イ。 直ぐに行きま~す。 さぁ、ミキ行くわよ!」
「う、うん」
サキに手を引かれて、3スタまで走っていく。
「お~い。 ティンカーベルさん。 こっちこっち。 急いで!」
ハァハァ・・・ゼィゼィ
「はい。じゃぁ打合せ始めます! まずはオープニングですが・・・・」
ふぇ~。 わたし・・・つ、ついて行けないかも~
※高井戸IC近く、富士見ガ丘駅の側に富士見丘中がありますが、このお話しとは一切関係はありません。
次回「ミキ誘拐される?」に続く
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