第13話 ◆たいへん薬の効果が!

◆たいへん薬の効果が!


「ミキさん。 聞いてる? 6月10日にアイドル誕生のオーディション申し込んでおいたからね」

「ふぇ~ん。 そんなぁ・・・ヤダよ~。 人前にこの格好で出るのはまだ無理だよ~」

「大丈夫よ! 9ヶ月も特訓してきたんじゃない。 そろそろ特訓の成果がどうなのかを見極めなくっちゃネッ」

「それなら、ほかにも方法があるんじゃ・・・」

ギロッ

ビクッ

だ、ダメだ。 みどりさんに睨まれると、ぜったに逆らえない。


「あぅ~ どうしても?」

「ハイ♪」

恐い目をしながら、にっこり微笑むことができるみどりさんて・・・

「これがオーディションの内容ね。 ほら、歌と水着審査とダンス。 みんなバッチリじゃない。 いままでレッスンしてきたものばかりだし」

う~ん。 これはどうしても受けなくちゃならないのか?

なんとか逃れる方法は無いかな~

ゾクゾクッ

あ゛~寒気がするぅー

クルマのエアコンが効きすぎているわけでもないのになぁ?

その夜、わたしは久々に風邪を引いて熱がでてしまった。

きっと昼間、短いスカートで歩き回ったからだろう。

う~猛烈に咽が痛い。 今日は早く寝よっと。

・・・

・・


カチャッ

ベッドに潜り込んで、どのくらい経っただろう。 ドアが開く音がした。

「ミキィ~。 あらっ、もう寝ちゃったの? テニスで疲れたのかしら?」

みどりかぁ・・・具合が悪いから寝たふりしちゃえ・・・

あぁ、頭がぼ~としている。 そのまま、再び深い眠りに落ちていく。

・・・

・・


ピッ、ピッ、ピピピピピ・・・

無常にも目覚まし時計の電子音が鳴り響く。

う~ん。 もう朝?

ほおって置くと”これでもかって”鳴るタイプの目覚まし時計なので、仕方なく手を伸ばし大元のスイッチを切る。

あ゛~ 昨日より咽が痛い・・・・これは相当腫れてるぞ~


「おはよう。 ミキ。 昨日は随分早く寝たのね」

洗面所の鏡の前で大きく口を開けて喉の奥を覗いていると、後ろから爽やかな声がした。

「あ゛~、みどり゛。 お゛は゛よ゛?!」

「ちょっと。 どうしたの? その声、まるで男の子みたい」

そう言ってから、みどりさんはハッとし、自分の口に手をあてて一歩後ずさる。


「ま、まさか・・・」

「あぁ。 こ゛れ゛は゛・・・」

まてよ。そうか。これは使えるかもしれないぞ!

「う゛~。 薬の効果が切れ゛で、男に戻ったかも゛知れ゛な゛い゛」

「な、なんですって!」


「気分が悪いから、家に帰ってお父さんに診ても゛ら゛ってくるよ゛~」

「わ、わかったわ。 高瀬さんに送ってもらいましょ。 心配だからわたしも一緒に行くわ」

こうしてわたしは、なんと半年ぶりに家に帰ることになったのだ。


「ただいま゛ぁ」

「あら、美樹。 どうしたの? 顔が赤いわね。 熱があるんじゃない?」

さすが母親。 子供の健康状態は直ぐにわかるんだな~。

「そちらは、ひょっとしてみどりさん? まぁ、まぁ、ちょっと見ない間にますます綺麗になられて」

「いやだわ、おば様ったら。 ホホホ」

「お母さん、わ゛たし具合悪いんで横にな゛りたいんだけど・・・」

「まぁ大変、早く入って。 みどりさんも、さぁ」

「あれ? お父さんは?」

「今日は、大阪に出張よ。 でも日帰りだから11時頃に帰ってくると思うけど」

ラッキー♪


「みどり聞いた? 今日はお父さん帰りが遅いから゛、結果は明日連絡する゛ね゛」

「大丈夫? わたしも泊まって看病しようか?」

「だ、大丈夫。 お母さんもい゛る゛し」

「そう。 それじゃ、わたしこれで失礼するわね。 お大事に」

「あら、みどりさん。 いまお紅茶をいれますから、どうぞ召し上がっていってくださいな」

「あ、いえ。 どうぞお構いなく。 それに運転手さんも待たせていますから」

そんなワケで、久々にみどりさんと離れて、のんびり出来そうだぞ。

それにさっき飲んだ風邪薬も効いてきて眠くなってきたし。 ふわぁ~

・・・

・・

その夜、遅くお父さんが出張から帰って来た。

「美樹が帰って来てるんだって?」

「えぇ、風邪をひいたみたいなの。 熱が38度もあるし」

「ほぉ、珍しいな。 美樹が熱を出すなんて」

「どれ、ちょっと様子を見てくるか」

お父さんは、わたしが女の子になってからの方が、なんだか優しいような気がする。


「美樹、起きてるか?」

「う゛、うん」

「熱が出たんだって?」

「うん」

「風邪かな? 咽は?」

「うん、唾を飲むとすっごく痛いんだ」

「扁桃腺が腫れてるのかな? どれ診せてごらん」

「うん。 あ゛ーーー」



次回、「ウソと罰」へ続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る