第12話 ◆ミキ・デビュー

◆ミキ・デビュー


みどりの目がキラリと光ったときは、いままでろくなことが無かった!

またしてもわたしの知らない間に、こんなことをしていたのだった・・・


「そちら○△☆☆プロダクションでしょうか? わたくし、神崎みどりと申します」

「あぁ、先ほどの。 一応オーディションの予定ですが、直近のものですとアイドル誕生と言うのが6月10日に名古屋で。 その後美少女コンテスト2020が7月20日に東京でありますが。 でもお二人ならオーディションなど受けられなくても、うちのプロダクションからデビューすればアイドル間違いなしですよ」

「ありがとうございます。 でもそれじゃ、意味がないので。 それでは」

「あっ、ちょっ、ちょっと」

ガチャ


みどりは受話器を置くと一人楽しげに、ニコリと笑みを浮かべ呟いた。

「アイドル誕生と美少女コンテストか~。 どっちに応募しようかな~。 うふふ、久々に楽しくなってきましたわ♪」


そのころミキは・・

ゾクゾクーーー

あぁ、悪寒がするぅーーー。 こりゃ~みどりさんがまた何か企んでるな。 気をつけなくっちゃ!

そう想いながらもわたしは久しぶりに一人バスで帰ることになったので、駅前のデパートなどウィンドショッピングしていく事にした。

特訓のせいなのか薬の所為なのか、以前はこんな気持ちになんか絶対にならなかったんだけど、行動も少しずつ女の子っぽくなってるのかも知れない。

ひょっとして女性ホルモンなんかも出てるんだろうか?


一人で歩いていると、道をすれ違う人がみんな自分のことを見ている気がする。

結構短いスカート穿いてるしなぁ・・・恥かしいからやっぱ早めに帰ろっと!!

そう思ったとき。

「ねぇ、彼女ひとり? ちょっとオレらと遊びに行かない?」

うわっ、また軟派かよ! まったく男って~のは・・・


声をかけてきたのは、大学生風の3人組だった。 結構カッコイイ子達だったけど、男はみんなオオカミだから気をつけなくっちゃ! って、オレも元は男だったんだっけ。

「すみません。 これから家に帰るところなんで、ごめんなさい」

ショッピングは諦めてさっさと家に帰りたいのでストレートに断る。

「それは残念だな。 じゃぁ今度時間があるときに連絡するから、携帯の番号を教えてよ」

「あの~すみません。 わたし、携帯もってないので」

「じゃ、家の電話番号教えてよ」

くそっ、しつけーヤツ。 やんわり断ってるんだから気が付けよ!

「あのっ・・・」

いい加減にしてくださいって言おうした時、後ろから声をかけられた。


「あら、ミキ。 こんなところで何してるの?」

ちょうどクルマで通りかかったみどりが、パワーウィンドを開けて、声をかけてくれたのだった。

「み、みどり・・・ ちょっと時間があったんで、買い物してこうかと思ってたら・・・」

わたしは大学生達を無視して、クルマにかけより涙目で訴えた。


「なんだ、そうだったの。 わたしもこれから帰るところだから、早く乗りなさいよ」

「ありがとう。 助かった~」

キョトンとしている男たちを後に、わたしを乗せるとクルマは静かに動き出した。

「あっ、ちょっと君~」

「オイ、いまのクルマ。 ロールスロイスじゃん。 きっとどこかのお嬢さまだろ。 オレ達なんか絶対相手にされないって!」

「でも二人とも、すっげーかわいかったなぁ」


「みどりぃ~。 ほんとにありがとう。 わたし、ああいうのに慣れてないし、すごっく困ってたんだ」

「いいのよ別に。 ミキって目立つからクルマからも一目で気が付いたし。 ほんとに良かったわ」

「えっ。 わたし、そんなに目立った? やっぱ短かったかな? このスカート」

「ミキ・・・ あなたわかってないわね~。 そうそう6月10日に決めたから」

「はいぃ???」

「6月10日ね♪」


みどりさんはニコニコしながらわたしを見ているが、何を言っているのか理解できない。

「6月10日って?」

わたしは、ちょっと嫌な予感がし始めて聞き返してみる。

「うふふ、アイドル誕生のオーディションよ!」

「ええっーー、凄~い。 みどりなら絶対優勝だよ!」

「何言ってるの。 受けるのはミキよ! 手続きは、さっき済ませておいたからね」

「なっ、なんですってぇーーーー」


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