第11話 ◆みごとに完璧なオンナ
◆みごとに完璧なオンナ
かくして、みどりの家での生活が早くも6ヶ月を過ぎようとしていた。
その間に、こなした特訓メニューの数々は、涙無しには語れないほどの量である。
そして、その成果が実ってオレ(ミキ)はどこから見ても、もう完璧な女にしか見えないほどになっていた。
「ミキーー、行くわよ~!」
「OK、みどりーー」
パコーン。 パコーン。
青空の下、イエローボールが行き交う。
そう。 今日は、みどりとテニス・スクールに来ているのだ。
もちろん、テニスコートはみどりの家にも3面あるんだけど、ここのコーチがカッコイイとかで、週末に二人でよく通っている。
二人がテニスをする日は、コートの周りには、いつの間にか男の子達が大勢見物にやってくる。
もちろん、わたし達のテニスウエア姿が目当てなんだろうけど・・・
そして、金網の向こう側に、一列にびっしりと張りつく。
さらにその大半は、望遠付きのカメラを持って来ているカメラ小僧ってヤツだ。
最近はそんなのにも慣れてきたし、これもまぁ、やっぱり、みどりさんの御蔭なんだろう。
カシャ カシャ カシャ
サーブやラリーの度に、シャッターを切る音が半端でないほど響き渡る。
わたしたちの写真が密かに学校内で販売されていると言う噂も聞いたことがあるし、実際に1枚千円で買ったという男子生徒にも会った。
むぅ~これって肖像権侵害じゃないのか?
「ミキィーーー、いったわよ~」
みどりが大きくあげたバックボレーに気づくのが遅れたわたしが金網ごしに見たものは・・・
「んっ? あ、あれは!」
そう。 いつか、しつこく芸能界に入らないかと、つきまとったアノ男だった。
いっ、いったい何しに? ソイツとしっかり目が合ってしまった途端。
ズズッーーー
「キャッ」
よそ見をした所為か、わたしは足がもつれて思いっきり転んでしまった。
「ミキ~、大丈夫?」
「痛~。 もう、アイツのせいよ」
「アイツって?」
「う~ん・・・イタタ・・・みどり~ 取り敢えず、もう上がろうよ」
「えぇ。 そうね。 そうしましょう」
オレ達はクラブハウスでシャワーを浴びながら、例の男について話しをしていた。
「ふ~ん。 そんなことがあったの? でもその人って、本当に芸能プロダクションの人だったんでしょ?」
「名刺には、そう書いてあったけど。 本物かどうかわからないよ。 それにアイツなんか気色悪いし!」
「何ていうプロダクションだったか覚えてる?」
「う~ん、確か・・・○△☆☆プロダクションだったかなぁ・・・」
「チャ~ンス」
キラリ☆
「えっ? みどり何か言った?」
「ううん、何でもない」
その時、またしてもみどりの目が光輝いたのに気が付かなかったわたしであった。
「ミキ。 わたし、ちょっと用事を思い出したんで先に帰っててくれる」
「ええ。 じゃぁわたしはこれで帰るわね」
「うふふ。またあとで」
次回、「ミキ・デビュー」へ続く
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