第10話 ◆やっぱり特訓

◆やっぱり特訓


みどりさんには、本当の事を話したオレだったけど・・・

「そうだったの。 ミキも大変だったのね。 状況は良くわかりました。 ここは、わたしにド~ンと任せてください。 女同士の友情ですわ!」

「みどりさん・・・まかせろっていったい何を?」

「うふふ。 じゃあ、これからミキの部屋で、いろいろとプランを検討しましょ♪」

「えっ? だってオレ男なんだよ!」

「あら? だって今はちゃんと女の子じゃない」

「む~ぅ。 でも~」

「気にしない。 気にしない」

「気にしなくっちゃいけないのは、みどりさんのほうじゃないの?」

「あら、どうして?」

「もしオレに襲われちゃったらどうするのさ?」

「平気よ。 女の子が女の子を襲ったりはしないもの。 さっ早く行きましょ」


何故かやる気満々のみどりさんである。

オレの部屋に入って腰を降ろすや否や、更に目がキラキラ輝きを増してきたし・・

「それじゃ早速女の子らしくなる特訓メニューを考えることにしましょうか」

「あ・・・いや、べ、べつにイイデス。 そんなに女らしくならなくっても!」

「あら、ダメよ」

「そんな・・・キッパリと・・・でもどうして?」

「理由なんて、特にないのよ。 だって、面白そうなんですもの」

オイオイ。 やっぱりそれかい! 自分が面白ければいいってか?


「そうね。まずは言葉使いでしょ! 次に身だしなみ。 それから身のこなしと~ 後はエステも必要ネッ」

「うぇ~それ全部? 勘弁してよ~。 そう言えばオレ、冬休みに母さんから特訓受けたし! もう大丈夫だよ。 うん!」

ギロッ

一瞬みどりさんが凄い目つきでオレを睨んだ。

ギクーッ


「ちょっと!」

バンッ

そう言うと、みどりさんは、いきなりテーブルをひと叩きした。

一瞬、小学校の時に女子に取り囲まれたあの恐怖が頭をよぎる。

ビクッ

「な、なに?」

「そんな事ではダメよ! 何れ皆にバレてしまうわ。 それじゃ困るでしょ」

「う゛~。 そ、それは・・・」

「ミキはね。 完璧な女の子を目指すのよ! それも究極のね」

イヤ、究極ってのは違うだろ。 ちょっと。


「そんな~」

「特訓の期間は3ヶ月。 その間はわたしの家で合宿しましょう!」

「ええっーーー!!」

「まぁ、ミキったら。 そんなに喜ばなくったって」

「あ・・あ・・」

「それじゃ、さっそく明日から開始ってことで。 うふふ、楽しみねぇ」

オレは何か言おうとしたんだけど、ただ口がパクパクするだけで声にならなかった。


「あら、もう11時。それじゃあ、今日はもう寝ましょうか。 明日は、高瀬さんがこちらに迎えに来てくれるから、何時もより遅く起きても大丈夫よ」

「えぇっ! ココまで迎えにくるの?」

「当然じゃない。 うちのお抱え運転手さんだもの」

そりゃあ、迎えに来てもらえるのは嬉しいけれど・・・近所のおばさんの目がコワイデス。

それにロールスロイスじゃぁ、目立ち過ぎて先にバレるんじゃないのか?


そしてオレは、みどりさんの提案を断る勇気も無く、結局次の日から神崎家で特訓を受ける羽目になったのだった。

学校から帰るとまずお風呂^^; その後すぐにエステ1時間コース。

月曜はその後、茶道。 火曜は社交ダンス。 水曜は花道。 木曜は着付け教室。 金曜はお料理。 土曜は何故か英会話。 日曜は、みどりさんのお付き合いモロモロ。 その他ジャズダンス、歌のレッスン etc

習い事は全て専門のスタッフが用意されていたのには流石にビックリした。

やっぱ、みどりの家って超金持ちなんだなぁ。


そして、3ヶ月の月日はあっと言う間に過ぎて行ったのであった。

「ほらミキ、見て。 これが3ヶ月前の写真。 こっちが昨日撮ったものよ。 どお!」

「うわぁ~。 凄い違いねぇ。 ほんとに使用前、使用後の写真って感じだわぁ」 ←ミキ

そう、そこに写っている女の子ふたりは、芸能界のアイドルも真っ青の美少女だった。


ヘアスタイルやメイクなんかで随分違うし、着ているものや立ち振る舞いで驚くほど変わって見えるもんなんだなぁ。

それに加えて、血の出るような特訓の数々・・・これで成果が出ない訳がない!!

「みどり、ありがとう。 わたし、なんとか女の子としてやっていけそうだわ」

「うん。 言葉づかいも女の子ぽっくなってきたし。 あと半年も続ければ完璧ね♪」

「なっ、あと半年ーーー! それじゃ約束が違うじゃない!」

「約束? そんな約束してないわよ。 特訓の期間は3ヶ月だったけど。 これから先はさらに完璧な女を目指すために継続して磨きをかけるのよ」

「う~ん・・・・」 バタッ。←気を失って倒れた音。


次回、「みごとに完璧なオンナ」へ続く

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