抹消と末梢

 ツキシロとマリィの検索によって、ジェレミーとジョシュは必要な資料の存在を確認したが、検索結果を見ると、ほとんどすべての資料が閲覧禁止か、資料が存在したという記録のみで資料そのものは抹消済みであることが示されていた。ジロウのものだけでなく、廃棄済みの惑星のいくつかについても、関係する資料は同様のありさまであった。

 彼らは検索の結果をまずは貸し出された館内用端末に保存し、画面をこっそり記録メディアに写し取った。そして、いくつかの惑星について残っている資料を全て読み込み、これまたこっそり保存した。それから、館内の通信用の休憩個室でジュール号に迎えを頼み、個人艇へ戻ってから記録内容の一部を送った。


 ジュール号で、全ての資料を総合し、宙域図と照らし合わせると、資料を確認したすべての惑星に、エクセリオンの航跡が重なった。通っただけか立ち寄ったのかまでははっきりしないが、これまでに立ち寄った情報がある惑星はすべて、資料の多くが抹消済みであった。


 もちろん、逆にエクセリオンが廃棄された惑星にばかり立ち寄っているとは言えない。それでも、廃棄済みの惑星にいくつも立ち寄っている船が、一般的な輸送船とは言えないのではないだろうか。船員たちは思った。

 ジュール号や、協力してくれた者たちも、これまでに廃棄惑星ばかりを狙って立ち寄ったことはない。元から近い宙域で活動しているのでない限り、わざわざ廃棄済み=人間の活動に適さない惑星に立ち寄るためには、そこの大気の組成や地面の状態など上空で下調べをして、今船にある装備で行けるかどうか判断して、降りなければならない。そんな面倒なことをするよりは慣れた環境がいい。


 廃棄惑星を専門とした何かの調査船というものが存在するのであろうか。それなら、存在しても大っぴらに活動できないような「汚い」任務を負っていてもおかしくない。そして、それに関係する人間に重い記憶処置をしていても不自然ではないかもしれない。

 一行は真面目なことから軽い冗談まで、廃棄惑星をめぐる船の任務内容を考えては話し合った。ジェレミーの夢の話から、減刑の対価や懲役として罪人を使ったというのは簡単に想像できたし、汚い任務なら、そうした人材を使い捨てするのは便利だし使うほうも楽だろう。

 中には壮大なストーリーを編み出す者もいた。冗談でも笑えない、と笑いながらジェレミーはその船員を小突いた。船員が本気で怖がり、ジェレミーは不思議に思った。


「目が、笑ってないっス」


 言われたジェレミーは、部屋に戻って休むと告げてブリッジを出て行った。

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