'x'enou(星の外から来たもの)
犬どもは唸り声をあげ、一見無造作に歩いているようだが隙のない動きでこちらが逃げ出さないように囲んでいる。残っていた六機のうちの、足をやられかけた機体から、脱出を促す警報が鳴り、同時に彼の近くの犬どもが駆けだした。
「隊長っ、俺がひきつけるんで逃げてください!」
襲われた機体が普段は絶対に使わない、弾数の多い銃器を向け、やみくもに打ちはじめたときだった。
『動かないでください!!』
頭上からスピーカー越しの声。かなり拡声されている。一拍置いて、青白い光線が扇状に放射され、後方一八〇度ほどの犬が黒焦げになり、前方の犬どもはギャンギャンと鳴きながら逃げて行った。
何か影に覆われた六機がそれぞれ見上げると、頭上数メートルほどの低空に宇宙船が降りてきていた。見ている中で宇宙船の下部の口が開いて、中が見えた。
「その機体であれば、そのままハッチの凹凸に捕まることができると思います。」
驚きのあまり、宇宙船からの呼びかけに反応するまでに数分はかかったが、一同はおとなしくその船に助けてもらうことにした。
船は中型で、登録は人も荷物も運べるようになっていた。六機を収容した貨物室は、設置してある機材や目印などから、偵察や探索などで子機を発信する母艦という使い方をしていることが多いようだ。ジェレミーだけがそれに気づくことができた。探査機や飛行機の類を、ツクバの人々は見なくなって久しい。本の中の、文明時代のものというイメージがあるのか。
隊員たちと宇宙船内のエンジニアがアシダカを修理しているその間に、隊長とジェレミーが船長にあいさつに向かった。ジョシュは修理を見守り、ブールとネールはジェレミーたちに付いていった。
船長はまだ二〇代だと言う二九歳で、ジェレミーや隊長から見れば若い男だった。隊長が簡単に説明した後、じっくり時間を取ってジェレミーの話を聞いた船長は、彼らを客として迎え、自由に船内で過ごしてよいことを伝えた。そして、ジェレミーを精神治療の設備の整った病院へすぐにでも連れて行くべきだと主張した。
「早いほうがいいから、その目的の場所まで、まず連れてってあげるよ。それから、必要なデータや直った機体を下ろして、そのまま病院へ行こう。それでいいね?」
ジェレミーはうなずき、隊長にそれでいいかと尋ねた。隊長はもちろんだと答えた。
数十分で、目的の小型船の遺構に着いたジェレミーと隊長たちは、小型船ごと宇宙船に格納し、ツクバへ持ち帰った。そして、隊長は別れ際に、リコと彼のパートナーを呼びつけ、言った。
「お前たちは、『外』へ出ろ。そして、ジェレミーと共に外の物事を感じて来い」
宇宙船ジュール号は新しい船員を載せて、ツクバから、ジロウから、離れていった。目的にかなう病院のある場所まで、ジェレミーは持ち込んだ本や端末の文章を読むことにした。
カガミハラで見つけたあの長文を写し取った端末を開いたジェレミーとネール、彼らの側にいたジョシュは言葉を失った。
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