smiegu Qtan ardamat iamagata(死に絶えた町)
彼らは、朽ちた街にただ驚いた。
寄り道のないジェレミーや住処から離れないむぃたちやジョシュはもちろんだが、リコたちも全員言葉を失って立ち尽くしていた。
シェルターの閉鎖を経験したり、ツクバ近辺ならば人のいない町へ踏み込むことも少なくないパトロール隊の中でも勤続年数の長いリコや隊長が口を少し開けて廃墟を見つめているのだ。まして、数名の経験の少ない若い隊員は、泣きべそを我慢する子供のような、不相応な表情になっていた。
そこにいる誰もが、こんな朽ち果てた町に出会ったことがなかった。
三十分ほどたっていたかもしれない。気を取り直した隊長が調査担当に声をかけた。積んでいる計器で熱源や動くものなどを探知したが、たまに『犬』の反応が数匹、連れ立って動いているだけだった。
犬はアシダカに寄ってくることはないが、どこからか数匹やってきては、一匹はアシダカをじっと見つめている。見張っているかのようだ。ある程度距離が開くまで、必ず目を光らせていた。
『降りたな死ぬなァ、こりゃ』
隊長が頭を掻きながら喋る。通信回線をつないでいるので、映像はわざと中を映さないようになっているが、声は丸聞こえだ。何人かが『犬』に悪態をついているのもしっかりお互いに聞こえてしまっている。
『バッカ野郎! そんなことでどうする。無茶をしないことは大事だ、だが、奴らにおびえろと言った覚えはねえ!』
隊長が何機か機体番号で名指ししながら、隊員を叱る。あまりに風雨の浸食がひどすぎて、例えばジョシュやブールが高層の建造物の上から俯瞰するとか、高所を利用することはできないのは目に見えている。
中に入っても崩れて埋もれそうだし、『犬』からの防御にもならない。休憩は諦めて、水だけ飲んでさっさと移動しよう。意見がまとまり、探査機器を積んでいる機体と隊長を先頭に、目的の方角へ抜けていくことにする。
それほど広くない町だが、崩れた廃材の上をまっすぐ突き抜けようとして足を取られる隊員が居たり、砂嵐で視界が悪かったりと、時間をとられてしまった。
シールドの境界だっただろう、町の素材とは異質な、比較的原形を保った二メートルほどの壁を通り抜け、通り道や方角を確認しているときだった。『犬』の鳴き声が近づいてきたのだ。
『全員戦闘態勢。できれば、一口くらい、飲んどきな。……先は長そうだよ』
隊長は、自分の背中を垂れる冷汗の動きを感じながら、周りの状況を確認した。見えたのは、どこから湧いてきたのか、数十匹はいるであろう、しかも町の中のそれらよりも体長が倍はありそうな、巨躯の『犬』の群れだった。
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