宇宙船の…… kaziadopr-EKSERIONN noe......

 ジェレミーには何日か経っても疑問というか、解らないことがあった。


 その一つが、船の名前についてだ。夢の中で、船長が基地やほかの船との交信を行うところを何度も見ており、先の夢のように船長は自分の船を「エクセリオン」と名乗り、多く通信している、依頼主か所属する母船らしき船を「コンスティテューション」と呼ぶ。

 ところが奇妙なことに、船長がコンスティテューションとの通信の際、相手方の船長を『エンタープライズ船長』と呼び相手はあの船長を『ノーチラス船長』と呼ぶことがほんの数回だがあったのだ。

 今の打ち捨てられた状態のジロウで、惑星連合どころか自惑星が持つ船の一覧さえ知ることはできないから、それらがどんな船であるのか、調べることはできない。しかし、ジェレミーの知らない間に規則が変わっていない限り、船長を兼任することも、一つの船が同時に二つの名前を持つことも、禁止されている。

(船名が変わることはあるが、その場合も新旧の名前を併用することは出来ない)


 そして、ジェレミーの記憶に強く残っていたのはノーチラスという名のほうだった。どんなに夢のあちらこちらに変化があっても、船長がノーチラスと名乗る前後の場面だけは、いつも同じ会話が夢としてあらわされていた。


 ジェレミーは、夢の中でも注意深く、船内に気を配った。起きている間も資料を当たっている時間以外強く夢のことを思った。時には頭痛やめまいが起きて、アマギに横になるよう言われた日もあったが、横になっても考えるのをやめなかった。



 ある日、ジェレミーが読んだ資料に、惑星連合の規約の一部が書かれていた。その規則の中に、輸送船に関する項目があった。


 惑星連合では密貿易や詐欺を防ぐために船の管理が厳しくなっている。艦種や運用目的、種々の許可や資格のあるなしなど、登録内容が色々ある。艦種は民間船の場合は輸送船、旅客船、調査船、作業船、練習船の五つに大きく分けられる。ほとんどが輸送船と旅客船で、呼び名の通り、ヒトやモノを運ぶ。両方を運ぶ貨客船は旅客船に入る。

 輸送船と旅客船と作業船はそれぞれ資格を必要とする。


 軍用の場合、戦艦や巡洋艦、駆逐艦、航宙母艦などの戦闘艦と、輸送艦、工作艦の三つに大きく分けられる。どの艦種も、少なくとも艦長含め三名以上が三種全ての資格を持っていることを必須とする。

 輸送艦は民間の輸送船とつくりは変わらない。兵装がなければ所属しか違わない船もいる。宇宙港など定められた場所では、輸送艦はほかの軍用の艦船と違い、港の優先利用だとか何らかの優待など、軍用艦としての特権を行使できないことになっている。軍用艦は兵装を全て明かさなくてもよいことになっているが、輸送艦のみは、開示されていない兵装を積んでいると没収されるなど、つくり以外にも民間の輸送船との違いは少ない。


 だが、区別に意味がある以上、偽りがあってはならない。輸送船と輸送艦という、通常はあまり区別を意識しない種別であっても。


 ジェレミーは夢の中で見てきた。民間の輸送船であるはずのエクセリオンには、軍の艦船のごく一部にのみ積載許可が下りる、惑星地表を攻撃するための特殊砲身と砲弾が搭載されていたこと。区画にいる船員たちも、それを当然のように受け入れている、つまりは、積み荷を知らないのではなく、知っていて載せているということ。

 軍用の特殊回線で船長と通信を行う謎の船エンタープライズの船長が、エクセリオンを一度だけ『輸送艦』ノーチラス、と呼んだこと。


 二つ目の疑問は、艦種を偽っているのかどうか、それと、偽っているのはなぜかということだ。



 ある日の、昼休憩の終わり。ジェレミーは突然意識を失って倒れた。

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