スカルト
第7話 スカルト
美香さんに連れられて私たちは応接室についた。
そこは白で全てが統一されている清潔感あふれる部屋だった。
白い椅子に白いテーブル、壁にある四角い小さな窓から見える景色が緑や水色を付け足していた。
「いつみても綺麗だなあ」
そんなことを口に出すと樹里は不思議そうな顔をした。
「舞夢ちゃんは何回くらいここに来たことあるの?」
「えっとね、1、2、3、4、………
だいたい30回くらいかな」
「そうなんだ。結構来ているんだね」
「うん。小さい頃からよくお父さんたちに連れてこられてたから。」
「へえ」
納得した表情で樹里が言った。
「舞夢様、では今回の件についてですが、『氷道雪夜』という人物についての情報ですね」
美香さんが真剣な顔で訪ねてきた。
「はい、そうです。お願いできますか?」
「こちらで見つけられない情報などありません。しかし、情報を提供するだけではこちらの利益がありませんので」
「わかっています。『スカルト』
ですよね」
「そうです。」
「あのぉ、ちょっといいですか?
今話していることお意味がよくわからないので教えて下さい」
私たちが黙々と話を続けていると、樹里が聞いてきた。
(あっ樹里初めてだったんだ)
そう言われてやっと気づいたのであった。
「今私たちが話していることは、簡単に言うと契約についてです。
ここの情報は絶対なんですが、仕事について外部に漏らされると厄介なのでそのための契約と、こちらの利益のための契約について話しています。
先ほど舞夢様がおっしゃっていた『スカルト』とはこちらの利益の方の契約で、
情報を出す前にある[ゲーム]をしていただくのです。
ルールは簡単、魔法陣から次々に出てくるテキを全て倒せばいいのです。
それ以外のルールなんてありません」
「でもそれじゃあそちらの利益にはならないとおもんですが」
「その点については見てれば分かると思いますので、省きます」
「そうですか。ありがとうございます」
そうしてひと段落ついてところで私たちのゲームは始まった。
と言ってもあのゲーム以外と難しいんだよなあ。終わったと思ったらいきなりラスボスとして本物の人間のコピーでてくるし、前は昔の自分と戦ったこともあったっけ。
「では舞夢様、行きましょうか。」
「そうですね。樹里、相手はコピーだから思いっきりやっちゃっていいよ。魔法でも格闘技でもなんでもありのゲームなんだから」
「うん!」
そうして私たちはスカルトをしに別室へ向かった。
そこは、まさにスカルトをするためだけに作られたような部屋だった。
魔法が当たっても大丈夫なように頑丈に作られた壁、外に音が漏れないように防音されてもいた。天井はとても高い。部屋自他もとても広く、1辺が100mくらいある正方形の形をしていた。やはりいつみてもこれには慣れない。何もなく、ドアが申し訳なさそうにぽつんとあるだけだった。
「舞夢様、準備が整いましたらまたお声掛けください」
「はい、わかりました。」
「舞夢、スカルトって私も参戦していいの?」
「うん、いいんだよ。樹里は今日初めてだから少し慣れるためにも後方からの支援とか回復をお願いしていいかな?」
「わかった。できることを精一杯やるよ。」
樹里は、草道家で主にくさとか木を操るのが得意だから、家柄的にも後方支援が身についているんだよね。それに対して私たち炎道家は、火を操るから前線で戦うことが向いてるから、小さい頃から鍛えられてるんだよね〜。
「美香さん、準備ができたんで始めてもらってもいいですか?」
「わかりました。」
「では舞夢様、樹里様、今回のレベルは65で少し難しめの設定になっていますので、頑張ってください。」
「ありがとうございます。でも私最高80まで行ったことあるんで大丈夫ですよ」
「あれは召喚した相手の運が良かっただけです」
私が反論したのが気に入らなかったのか珍しく美香さんが少しムスッとした。
「では始めますか」
しかしそんな美香さんを観れたのはほんの一瞬ですぐにいつものしっかりしているクールな美香さんに戻った。
美香さんは、部屋の外に出て行った。彼女が部屋を出て行ったということはこのゲームが始まったということだ。こっからは何が出て来るか分からない。……………『シーーン』
しかし何も出てこない。気を緩くするめの作戦かと思いきや、未だに出てくる気配がない。システムが壊れているのかと思い、くるっと美香さんのいる司令塔の方向を見た。そこには白い壁だけがあり美香さんの姿わ見えるはずがない。
「樹里、ちょっとおかしくない?」
「…」
「樹里!?」
樹里はこういう戦闘の時にどんなに小さな呟きでも必ず聞いて、返事をしてくれる。同じ空間に私と樹里しかいないで、しかもなんの音もしないこの部屋で樹里がさっきの言葉を聞き逃すことはない。
少し考えると、最悪な場面が思い浮かんだ。焦ってジュリの方を振り返るとやはり樹里はいなかった。部屋を一周ぐるりと見渡しても樹里はになかった。
(はめられた)
そう私は思った。
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