第06章 頑張れハスミン
控え目な性格の為、現実でもネットでの交流も
『反応待ち』
その日の夜遅く、ハスミンは一週間掛けて仕上げたイラストを描き終わった。描き終わると、いつもイラスト投稿サイトと〇イッターに投稿する事にしている。評価をもらう為に描いている訳では無いが、それでも反応があると嬉しい。今回は自分でも時間を掛けた自信作だ。何かしらの反応があって欲しいと思いながら投稿ボタンを押した。
無反応。
「あれ、みんな寝てるのかな?でもまだ1時になったばかりだよ?」
この程度のイラストでは評価すらしてもらえないのだろうか、と不安になるが、まだ更新してから1時間も経っていない。後ろ向きすぎると自分を戒める。
「深夜アニメ見てるのかな?実況してるのかな?」
色々と理由を考えて「そんなに早く反応なんて無いよね」と自分を納得させ、気にし過ぎは良くないと、自身も楽しみにしているアニメを見て今日はもう寝ることにした。
同時刻のとあるフォロワー、壱人の場合。
「ねるねるネズミさんがイラストあげてる。今回かなり気合い入っているな。これはすぐに反応があるぞ」
しかし、しばらく経っても反応が無い。
「一番最初は恥ずかしいから、誰か早く反応してくれ!すぐに続くから!」
そう画面の前で祈るも、何も変わりは無かった。
「なんで誰も反応しないんだ。アニメでも見てるのか?」
この状況にさすがに壱人も焦り、ここは自分がRTする事に決めた。ただしそれは1時間後だった。
人見知りの人間には、人見知りのファンが付くのか、ハスミンのイラストに反応が出るまでには時間が掛かるのだった。
『お礼』
ハスミンは、先程、投稿したイラストにRTとお気に入りが1つずつ付いているのに気付いた。誰だろうと確認してみると、相互フォローしていて、最近一番に反応してくれる事が多い人である。
これはお礼をした方が良いのだろうかと、ハスミンは考えた。しかしリプライなら返事をするのは変では無いが、RTとお気に入りだけで相手宛に〇イートするのは過剰反応かもしれないと、尻込みしてしまう。
お礼の内容は「いつもRTとお気に入り、ありがとうございます!」で良いかもしれないが、一人だけに返事を書く事も問題がある気がした。もしお礼をするなら、これからRTやお気に入りをしてくれた人たちにも〇イートしなければならないだろう。
しかし全員は無理だ。だとしたら何人くらいまで対応すれば良いのだろうか、と考え込んでしまった。
「こういう場合、みんなどうしてるんだろう?どうすれば、どうすれば…」
悩んだ結果、そのフォロワー個人ではなく、元〇イートにリプライする形でお礼を書いたのだが、こんな事でもかなりの精神力を使ってしまうハスミンなのであった。
『買物』
ハスミンは、平日の仕事の帰りは疲れているので、休みの日に近所のスーパー「デッカイ堂マート」に行って一週間分の買い物をする事にしている。
いつもは昼過ぎにぶらぶらと買い物をするのだが、今回はお目当のものがあるので午前中の早い時間に家を出た。
それは新発売のドリンクで、とあるアニメとコラボしており、パッケージにキャラクターが描かれているのだ。あまりたくさん買うのは恥ずかしいが、お気に入りのキャラクターは全てのパターンが欲しいので3本は買おうと思った。
「今日は暑いし、帰ったらすぐに1本飲んでしまおう」
そう思いながら売り場に向かう。そしてハスミンは見てしまった。
この売り場にはまだ客が来なかったのか、冷蔵ショーケースに品出しされたままの状態のドリンク達が整然と並んでいた。数百本は有るであろうドリンクが1本も欠ける事無く、且つ、ラベルの向きも全てが揃った状態で目の前に並んでいたのだ。「完璧な美しさ」がそこにはあった。
「こんな完璧なもの崩せないよ!」
ハスミンはこの完璧な並びを崩すか、買わずに帰るか、悩んだ。いつかは誰かがドリンクを買って完璧では無くなってしまうのが分っていても、自分でそれを壊すことが
しかし、そんなハスミンの目にあるものが映った。
通路側に新商品のドリンクがダンボールごと詰まれ、一番上からその商品が買えるようになっていた。新商品だから目立たせる為にそうしているのだろう。そのドリンクはもちろん冷えてはいないのだが、氷を入れれば冷たくなるよね、と考えてハスミンはお気に入りキャラクターのパッケージを3本買い、満足して帰った。
(作者注)期待をさせると申し訳ないのでネタバレしますが、この後、ハスミンが壱人達と一緒にゲームを作ったりはしません。モブでは出てきます。
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