第06.5章 悪霊さんいらっしゃい第4回
(作者注)この物語はフィクションです。今回の回答も想像して書いているだけですので、実際の人物や団体には関係ありません。
「今回は『夏休み子どもゲーム電話相談』デスデスよー」
マイナマイナが、いつものやる気が有るのか無いのだか分らない口調で宣言した。
「夏休みはとっくに終わったよ?」
無駄とは思いつつ壱人がツッコむと、予想通り「どうせ誰も気にしてないのデスデス」と返された。しかも夏休み企画は前回で終了したはずなのだが、それも無かった事になっている。
今回、壱人とイッQは観覧席に座らされ、テーブルの上にはレトロな電話が置いてあり、3つの一人掛けのソファには既に3体の悪霊が座っていた。
「みんなの質問に答えてくれるのは、悪霊A先生、悪霊B先生、悪霊C先生デスデス。よろしくお願いしますデスデス」
そう悪霊を紹介してしばらくすると、テーブルの上の電話がリンリンリンと鳴り出した。
壱人とイッQは、本当に電話が掛かってきた事に驚いたが、そのまま成り行きを見守る。マイナマイナが電話に出て、挨拶したり名前や年齢、住んでいる場所を聞いた後、電話の向こうの相手を促した。
「はーちゃんからの質問は何デスデスか?」
「ひっとしたげーむがでると、どうしておなじようなげーむが、いっぱいでるんですか?」
「小さなお友達はそんな質問しない!」
壱人とイッQは同時にツッコんだが、マイナマイナは何事も無かったように進めていく。
「では悪霊A先生、回答お願いしますデスデス」
「好きなゲームはあるかな?」
「あります」
「どんなゲーム?」
「かわいいおようふくが、いっぱいでてくるやつです」
「そうなんだ。ゲーム楽しいよね」
「はい」
「そういうゲームは、たくさんの人たちが時間をいっぱい掛かけて作るんだよ」
「うん」
「その間、ゲームを作る人たちにお給料、つまりお金をあげる必要があるの。そうしないと生活できないからね。だから、たくさんのお金が必要なんだよ」
最初からこんな回答で大丈夫だろうかと壱人とイッQは思ったが、はーちゃんは「うん、うん」と相槌を打ちながら聞いているので何も言えなかった。
「でもゲームを作る会社は、そんなにたくさんのお金は持っていないから、お金をたくさん持ってる人に出してもらうんだ。それでお金を出した人は、その代わりにお願いを聞いてもらえるの」
「うん」
「そのお願いが『ヒットしたゲームと同じものを作りなさい』っていう内容だから、同じようなゲームがいっぱい出来るんだよ」
「え?」
よりにもよってその回答なのかと壱人とイッQが息を飲む中、マイナマイナが「はーちゃん、分かった?」と尋ねると「わかりました」と返事が返ってきた。
他にも理由はあると思うのだが、はーちゃんが納得してしまったのでその質問は終了となった。そしてすぐに次の電話が鳴る。
「次はよーくんからの質問デスデス」
「うんえいさんに、しすてむをかいりょうしてくださいっていっても、なおしてくれません。どうしてですか?」
「いつの時代のどんな子供だよ!」
壱人が『うんえい』という馴染みのない言葉について考えている間に、イッQがツッコむ。
「この質問については悪霊B先生、お願いしますデスデス」
「システムっていうのは、一度作ってしまうと簡単には直せないんだよ」
「どうして?」
「大きなビルを想像してくださいね。ビルの壁や床、柱みたいな建物自体がシステムで、その中の人や物がデータだと思ってください」
「うん」
「人は出たり入ったり出来るし、物も自由に入れ変えられるけど、階段やエレベーターの位置を変えようと思ったら、とっても大掛かりな工事が必要になっちゃうの。分るかな?」
「わかる」
「下手をしたらビル自体が壊れてしまう事もあるんだよ。だから簡単には直せないんだ」
「へー」
「それで、運営さんというのはビルの管理人さんみたいなもので、ビルは別の人の持ち物なのね」
「うん」
「どんなビルにしたいのか決めるのはビルの持ち主さんだし、もし工事をするならそれは建設のお仕事をしている人たちがするの。運営さんじゃないのね」
「そうなんだ」
「運営さんは持ち主さんに『こんなお願いがきてますよ』って伝えるくらいしかできないの。だから運営さんにいっても中々直らないんだよ」
「えー」
「システムを直して欲しい時は、持ち主さんにお願いしてね」
「はーい」
「質問ありがとうデスデス」
回答の内容が合ってるのか判断が付かなくて、壱人とイッQはただ聞いているだけで終わった。そしてまた電話が鳴る。
「最後は、あーちゃんデスデス」
「ひっとするげーむをつくるには、どうしたらいいんですか?」
「これは難しい質問デスデスね。悪霊C先生、よろしいデスデスか?」
この質問には誰も答えられないのではないかと壱人とイッQは思ったが、悪霊C先生は話し出した。
「まずね、ゲーム自体がどんなに面白くても、可愛い絵が描いてあっても、ヒットするわけではないんだよ]
いきなり厳しい現実を突き付けてくるC先生である。
「たくさんの人が遊んで、遊んだ人が面白いと思ってもらえるかどうかなの」
「うん」
「これに必要なのことが2つあって、1つはたくさんの人に知ってもらうこと。もう1つが遊んだ人に面白いと思ってもらうことなの」
「うん」
「1つ目の、たくさんの人に知ってもらうには、宣伝っていうのをするの。テレビを見てると、お店で売っているお菓子と同じものが出てきて、こんなに美味しいですよって言ってるのを見たことがあるかな?あれが宣伝っていって、色んな人にこういうものがありますよってお知らせしているの。宣伝をいっぱいすると、それだけたくさんの人に興味を持ってもらえるチャンスが増えるんだよ」
「うん」
「2つ目の、みんなが遊んで面白いというのが難しいんだ」
「なんでですか?」
「面白いというのは、みんな一人一人違うからです。あーちゃんが面白いと思っても、お友達は面白くないっていうこともあります。それが普通です。遊ぶ人が多いと、それだけ同じものを面白いと思うことが少なくなるので難しいんです」
「うーん」
「でも、あーちゃんもお友達も、一緒にやって楽しい遊びがあるでしょう?」
「あります」
「そういうふうに、たくさんの人が面白いと思ってくれる遊びはありますから、どんなものか考えてみてね」
「はい」
「もし、あーちゃんがヒットするゲームが作りたいなら、みんなが面白いと思えるものを考えて、たくさんの人に面白さを伝えて、みんながそのゲームを遊べるようにすることが必要なんだよ」
「うーん」
「大変デスデスが挑戦してみて下さいデスデス」
「ゲーム作る時に、マーケティングまで考える子供とか嫌だよ」
しかしあーちゃんは元気よく「がんばります!」と返事をし、最後に「さようならー」と挨拶をして電話を切った。
「来年もみんなの質問待ってますデスデスよー」
最後にマイナマイナの締めの言葉で番組は終了した。すると悪霊たちは勝手に浄化して天国へ旅立っていく。
「今回は子どもたちの質問に答える事で浄化してしまったのデスデスね。いつもこうだと楽デスデスね」
そうマイナマイナは言ったが、壱人とイッQは何もしていないのに精神が疲れたので、あまり楽だとは思えないのだった。
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