お前のゲームは10年経っても完成しない

第02章 Hello world①

「プログラム、訳が分からない…ゲーム作り無理…」

　部屋の隅で、意気消沈して転がっている壱人が弱音を吐いた。

「光の速さで挫折したデスデスね」

　その壱人をマイナマイナが見下ろしている。

　余りの変貌ぶりに、河原で力強く『絶対に完成させてみせる！』と言っていた人間と同一人物なのだろうかと疑うほどだった。

　先ほど戻ってきたマイナマイナには、状況がさっぱり分からなかった。

　出掛ける前の壱人とイッＱは、やる気に満ちていて、すぐにでもゲームを作ってしまいそうな勢いだったのだが、戻ってみると部屋は静まり返り、２人共、抜け殻のようになっていたのである。

　事情を聴こうにも要領を得ない。

　壱人では話にならないと思ったマイナマイナは、質問の相手をイッＱに変えた。

「一体、何があったのデスデスか？」

「そ、それは…」

　どう説明して良いのか分からず、言い淀む。答えを待たずに、マイナマイナが次の質問をした。

「ゲーム作りは、どこまで進んだのデスデスか？」

　いきなり核心を突かれ動揺したが、イッＱは正直に答えるしかなかった。

「ま、まだ始まってません」

「は？」

　答えが意外すぎて、マイナマイナには理解が出来ない。「まだ始まっていない」というのはゲーム作りの事なのか？かなり時間が経っているはずなのだが？

　疑問が解けず、もう一度質問しようとした時、イッＱが、とても辛そうに衝撃の告白をした。

「数時間掛かって、まだスタートラインにすら立ててないんです！」

　それに合わせるように、壱人がうわ言のように呟く。

「本の通りにやってるのに、"Hello world" が出ないよう…」

　さすがにおかしいと思ったマイナマイナは、さらに問いただした。

「では、何故こんな状態なのデスデス？」

　その質問に、イッＱはすぐに答えた。

「ゲーム作りの準備＝開発環境の構築でこうなったんです」

　そして「なぜなら」と続け

「開発環境の構築は “難関” だからです！」

　と言い切った。

「例えるなら、航海に出た途端に、リヴァース・マウ〇テンに挑むくらい困難なものなんです！」

「ワ〇ピースで例えられても困るので、きちんと説明して下さいデスデス」

　分かりやすい例えだと思ったのだが、マイナマイナに軽く流されてしまい、取り敢えず、イッＱは今までの経緯を話す事にした。