お前のゲームは10年経っても完成しない

第01.5章 イッQさんとミッQさん

　ゲーム作りに入る前に

「大学生の常雲壱人くんと、10年後の常雲壱人さんだと、呼び分けが大変なので、もっと短い呼び名を決めてくださいデスデス」

　と、マイナマイナから要望があったので、常雲壱人達は呼び方を考える事にした。

「ミッＱフィギュアに入っているんだから、ミッＱさんで良いんじゃない？」

　と壱人が言うと、

「それだと、本当のミッＱさんの話をする時に困るだろ」

　という答えが10年後の壱人から返ってきた。

「それもそうか」と思った壱人は、すぐに代案を出す。

「じゃあ、壱人とミッＱを足して『イッＱ』は？」

「え？イッＱって…」

　おかしな感じがして、10年後の壱人が反対しようとしたが

「イッＱさんデスデスね」

　というマイナマイナの一言で決定した。

　壱人の方は苗字を取って『壱人』になった。

　そんな感じで、あっさりと決まったのだが、最後にマイナマイナがこんな事を聞いてきた。

「先程から名前の出ている『ミッＱさん』とは何デスデスか？」

「ああ。説明が必要ですね」と言ってイッＱが説明した。

　ミッＱさんの正式名称は『ミッＱ・マウス』といい、某パソコンメーカーが作り出したキャラクターで、ヴァーチャルアイドルである。

　サイバーゴスロリ衣装に身を包んだ美少女で、長い髪を束ねている根元にはマウスがついている。

　このキャラクターの特徴は、ゲーム素材が無料で提供されている事だ。

　2Dイラストの多彩な立ち絵、会話用の表情各種、3Dモデル、モーション、ドット絵、音声データ、歌、BGMに効果音、背景、エフェクト、アイコン、フォント等々あらゆるものが揃っている。

　個人の場合、提供元をハッキリ明示すれば、自由に使用ができ、同人ゲームとして販売することも可能。※18禁での使用は不可。

　そのおかげで、プログラムの技術はあっても、画像や音楽などで苦労していた人達が、この素材を利用してゲームを作るようになり、同人ゲームブームが起こる。

　そしてその同人ゲームを遊んだ人達が、今度はミッＱマウスの2次イラストや漫画、動画などを作成することで、ゲームをしない人々にも知名度と人気が上がっていった。

　グッズの売れ行きも好調、地方行政や企業とのコラボも行われ、さらに人気が過熱。その現象はニュースにもなり、今では、一般人でも名前だけは知っている有名キャラクターなのである。

「こんな感じです！」

　熱を込めて話したイッＱだったが、説明が終った後のマイナマイナの「なるほど。分かりましたデスデス」という言葉はかなり冷静だったので、あまり伝わらなかったようだ。

　こうして、呼び名会議は終了した。