第4話

「厨二臭い名だろう……?」

「そうだな、少なくとも【禍詠】は」

モモとデロイ、そしてシロは対峙して、睨みあった。

「……シロはボクの敵だ。デロイ、気を付けろ。ヤツは『本物』の魔法遣いだ」

本物、というワードが引っ掛かったが、どうやら悠長に考えていられる時間は無かった。


「……【禍詠】たる所以、教えてあげる」


ぱっ、と厚い本が出てくると同時に、本から文字が浮き出て躍り始めた。

光った文字は濃い紫に染められ、毒々しい。

光か闇か判らぬ文字はやがて、その象を変えて一対の獣となった。

「【ウツの式】虚満狗コマイヌ、【の式】熾尸シシ

何とも厨二臭い名前の遣い魔が出てきた。

だが容姿は皮肉にもそれ相応の体躯だった。

ゴツいのなんの、とてもじゃないが相手などしたくない。

「……怖じけてるのか?君は」

「……当たり前じゃん。相手ガチだよこれ」

震えるデロイにモモは、毒を吐いた。

「忘れたのか?君は今何者なのかを」


何者って、ボクはデロイ以外の何者でもないだろう。

――――いや、今の姿は亀でなく龍。

百獣の、いや万獣の皇帝なのだ。

ええいままよ、デロイは鉤爪を振り、先制で空を裂いた。

この際いっそ、弱い心を叩き直そうじゃないか。

「……やっと『らしく』なったな、アイツ」

その眼は迷い無き、雄らしき黄金の眼。

縦割きに開かれた双眸が、魔法遣いを見た。


「さあ、行くぞ」

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アナタが消えた後で アーモンド @armond-tree

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