第11話 会場に居た男(Miami Boy)
ホテル『シカゴ』の20階。
エレベーターを降りたマルヴォは、短い廊下を進んで
会場は広くて明るく、いくつものテーブルに食べかけの料理やシャンパンが並んでいる。パーティー自体は既に終わっており、スーツ姿のホテルスタッフがのんびりと片付けを始めている。まだらではあるが、参加者らしき者たちもまだうろうろと談笑を続けている。
「…………」
会場の隅から全体を窺うマルヴォ。
ターゲットである『有賀モネ』の姿はテレビで何度か目にしている。一時期は『美人すぎる国会議員』としてフューチャーされたほどの容姿を持った女性だ。見かければすぐにわかるだろう。
(しかし見当たらないな……。既に部屋へ戻ったか……?)
執拗に辺りを見回すマルヴォ。
会場にいる女性を隈なくチェックしていく。
(……ん?)
するとその視線を、一人の男が横切った。
(あいつは……)
その男は、どこかで見覚えのある人物だった。
(あいつはたしか…………現役国会議員の‶
『たばこゼロ社会』を推進した
内閣発足当初に頻繁にメディアに露出していたため、その憎らしいアルカイックスマイルがマルヴォの記憶にもしっかりと焼き付いていた。
(このパーティーは大学の同窓会――あの野郎、有賀と同級生だったのか)
すぐさま二人の共通点を見抜くマルヴォ。
さらに、自分の脳内に眠っていた舞網の情報をゆっくりと呼び起こす。
(とあるゴシップ雑誌の記事によれば、舞網は一時期、有賀と深い関係にあったとされている。現在の関係性は不明だが、奴は有賀の部屋番号を知っている可能性が比較的高い。これはチャンスかもしれないな)
脳内で探り当てた微かな導線を手繰り、無理やりに勝機を見い出すマルヴォ。
まだ仲間のいなかった時期に情報収集と銘打ってコンビニで立ち読みを続けた成果を遺憾なく発揮した瞬間であった。
(ム……奴が動いた!)
舞網がふらつきながら会場を出ようとしている。どうやらシャンパンを飲みすぎているようだ。向かう先は廊下の男子トイレだろう。
(この好機、逃す手はないな)
笑みを漏らしたマルヴォは、忍び足で舞網の背中を追った。
――右ポケットに忍ばせていたブツを握りながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます