「かまいたち」


実家が農家をやっていて

田んぼの中にぽつんとある家に住んでいた


しっかりと道路が整備されているわけじゃなく

父や祖父がつくった畦道あぜみちのようなところを通って

どこかへ行くような


梅雨の季節になると

カエルがたくさん鳴いて

頭がおかしくなりそうな場所


当時は高校生で自転車通学をしていて

その日はとても晴れていて、風はなかった


授業が終わって、とくに用もないので帰宅する。


もうすぐ家に着く畦道あぜみち

ふくらはぎに違和感をおぼえる


最初はかゆかったのだけど

その感覚はじわじわと痛みに変わっていく


なんだろうと思って手をやったら

血がべっとりついていて、びっくりした


なにをどうしたものか、怪我をしたらしい



家にいた祖母が手当てをしてくれた

祖母がいうには、これは「かまいたち」なのだそうな



わたしも知識として「かまいたち」は知っている



でも、わたしの傷のそれは、どう見ても

人に噛まれたような跡が残っていて気味が悪かった


祖母にそれを言うと

「かまいたち」にしておくのも

知恵のひとつだといわれた



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る