青空の下で調べよう
正午よりも少し早めの昼食を摂り、少しの休憩の後に食後の運動とばかりに次の目的地まで徒歩で進んでいく一同。
ちなみに、昼食は老夫婦が営む住居のようなお店で頂いた。知らせていた予定よりも少し早かったにも関わらず、文句も言わずにチヂミなのかお好み焼きなのか(はたまた両方なのか)分からないものを振る舞ってくれた。
その時に出来上がった料理が手裏剣のように飛んだり、生徒間で粉物論なる議論が繰り広げられたのはまた別の機会に。
昼食を頂いた店から歩くこと約十分、一行の進行方向にくるくる回る八面体のオブジェが現れた。そのオブジェこそ、次の目的地である空結晶資料館の場所についた証拠である。
空結晶資料館の外観は、所々がガラスとなっていて中の様子が窺えるようになっており、明け透けとまではいかないが、隠し事がないような印象を与える。敷地内は人工物が多かった空都歴史館とは反対に、人工物が少なく自然を基調としており、その証拠に草の壁が道を形成している。その草の壁も整えられており、全体を通して、手入れがされていて清潔な印象を受ける。
館内に入ると、空都歴史館の時と同じように受付で先生が話を通した後、入場料を払わずに生徒はゲートを通れるようになった。
入り口から内部に入ると、外から見えていたように広く、綺麗に整えられていた。
「…まるで図書館だね」
「まぁ資料館だからねー」
資料館と言うだけあって?なのか、部屋の天井近くまで本棚で埋め尽くされていた。本棚に入っている物は一つの例外もなく資料だとするとかなりの量である。
この建物は変わった造りをしていて、この部屋は他の階を突き破るように天井が高く作られており、その隣にまだ上の階が存在している。
ちなみに一般公開されているのは1階までなので見学できるのもこの階だけである。
「上の方の書類とかってどう取るんだろ?」
「そりゃ……梯子じゃないの?」
「それはまた原始的な……落ちたら危ないね」
原始的、データじゃなく実物な時点で随分とアナログではあるけど。まあデータじゃない利点もあるし、人によっては此方の方が便利という人もいるから、アナログも悪くないけど。無くなったら分かり易いし。
「梯子は間違いではないみたいだけど、向こうに上下左右に動くリフトのようなものがあるらしいわ」
「それって床を動かすってこと?」
「何それやってみたい」
「言ってたら動かすみたいよ」
シロナの言った通り、此処の従業員であろう人物が昇降機であろうエリアに入って、其処に備え付けられたパネルを操作していた。すると、起動したようにその人物の足下のエリア全体に淡い光が灯り、エリアは昇降機として、レールに沿ってゆっくりと上がって行った。
「あれって…」
「エアクリスタルを使ってるみたいね」
疑問は間違いではなかった。
あの昇降機にはどうやらエアクリスタルが内蔵されているようで、その効力によって飛行しているらしい。飛行といってもレールがあるから自由に動き回るという訳では無いけれど。
「…でも黄色…」
「公共の場とはいえ流石にハイランクは無理だったか…」
「ランクは少し低いけど、それでも結構質のいい結晶を使ってるみたいだよ。無駄な消費が少ない」
「にしても…何だろう…クレーンゲーム思い出した」
「…凄く……UFOキャッチャーです…」
決まった範囲を上下左右に動くその姿は、まさしくゲームセンターにあるそれだった。
「で、ここで何すればいいんだっけ?」
「何って、見学じゃない?」
「あと、必要なら資料の閲覧と書き写しかしら」
「うわぁ……」
「あ、じゃああっちの方に見に行く?何かあるみたいだし」
私たちが昇降機に気を取られている間に、少し離れた場所では何かを取り囲むように既に人混みが出来ていた。
四人で人混みに近づくとその先にはガラスの柱のような装置が幾つか置かれていた。一目では分からず、何の装置なのかと観察していると、その場に居た他の生徒が操作端末と思しきものを適当に触った後、複数ある中の一つのガラス柱の中に立体映像が映し出された。映し出されたものを見てみれば、どうやらエアクリスタルの性質をCGを用いて学ぶもののようだ。
「ここで操作すればいいの?」
ウタゲも先程と同じように操作パネルを触ると、目の前の柱に立体映像が現れた。映し出されたのは先程見たものとは異なる黄色の結晶体だった。他の場所と色が違っていたがこの柱はこれがデフォルトなのだろう。
「えっと……こう?」
映し出された映像には、新しく機械の部品が映し出され、先程の結晶体と組み合わさる。すると、結晶体が淡い輝きを放ち、周囲に黄色の粒子がうっすらと漂い始めた。
「今はどんな状態?」
「えっと…【現在装填起動中、周りの粒子は効力を分かりやすくする為、仮定を基に映し出しています】」
「…つまり普段は見えないものを予想で?…」
「まぁそういうことだよね。私こんな粒子見たことないし、さっきのリフトだってこんなの出てなかったからね……アオ?」
「え、何?」
「いや鯉みたいに口開けてぼーっとしてたみたいだから」
「そんなに餌欲しがってるように見えた!?」
「ほれ煎餅」
「いらん!」
ツッコミを返しながらも、自分でも内心で何かが引っかかっている事は分かっていた。先程の立体映像、仮定を基にしたものであって予想に過ぎないと分かっているのだけど、あのような粒子をつい最近見たことがある気がしていた。
そう、あれは確かこの間、木から落ちたとき―――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます