第72話 トリガーハッピー
ワイルドスワンとレイブンの2機が灘の森に突入すると、アークは操縦桿を押し倒してワイルドスワンを低空飛行へ移行させた。
「狂犬! ビビッてションベン漏らしたら、一生笑ってやるからな」
「私が漏らすときは、テメエがヘボな運転をして死に掛けた時だけだ。その時は目玉をかき出してやる、クソ野郎!」
「違う玉でも嗅いで発情してろ」
ナージャからの喧嘩腰な言い返しに、アークは口角の片方を尖らせてニヤリと笑うと、巧みに操縦桿を動かして、ワイルドスワンを高木の頂を掠める様に飛ばした。
「おっ! おっ!! 口だけのクソだと思ってたら、やるじゃねえか!!」
「
ナージャがアークの操縦技術に驚く。それでも彼女は強気の発言をしていた。
その頃、ダイロットが乗るレイブンは、上空で待機しながらワイルドスワンの性能を確認していた。
「ギーブ、流石だな……。20年よりも、旋回能力、速度、共に性能が上がっている。それと、やはり親子と言うべきか……飛び方が似ている」
まるで鳥の様に空を飛ぶワイルドスワンを見て、ダイロットが感嘆を吐く。そして、かつての同僚、シャガンを思い出して感傷に耽っていた。
そのワイルドスワンが低空飛行から突如機体を上昇させて、高度を上げる。
「来たか……」
ダイロットは、レイブンの進路をワイルドスワンの後方へ向けると、空獣が現れるのを待ち構えた。
アークの尻の辺りが痒くなり、ナージャの鼻がムズ痒くなる。
まだ森から空獣は現れていないが、2人は同時に敵が来るのを察知した。
「「来るぞ!! ……ん!?」」
アークとナージャが叫んでから、同時に眉を顰める。
「よく分かったな、クソ野郎!!」
「狂犬、鼻だけは一人前だな!」
お互いに言い合いながら、アークは操縦桿を引き、ナージャは機銃を構えた。
ワイルドスワンが高度を上げると、その機体を追って、森の中から猿の姿をした3匹の空獣が姿を現した。
「ムーディー、3匹!」
「変態モンキーズか!!」
「よう!」
「俺じゃねえよ!!」
空獣ムーディー。
猿型の空獣で毛は白く、全長は約5~8m。容姿は白い毛をしたマントヒヒに似ている。
単体ではそれほど強くはないが、空獣にしては知能が高く、組織的行動を取ることで狩りを行う。
ムーディーは魔石の他に、白い毛から作られる毛皮が女性に人気で、精巣から作られる薬は夜のエナジードリンクとして、多くの男性が密かに愛用していた。
ナージャが追ってくるムーディーに狙いを定めて機銃を撃とうとする。だけど、その前にアークが機体を左へ旋回させて回避行動を取った。
「そこのクソ、動かすな! 撃てないだろボケゴラッ!」
ナージャが顔を顰めて声を荒らげ抗議する。
「ウルセエ、荒ぶる
前も説明したが、パピーは男性性器の隠語の事。
「そっちこそ、私は性器じゃない。目が悪いなら空獣狩りなんざ止めて、眼科に行け!!」
アークが溜息を吐く。もし、後ろに乗っていたのがフルートだったら、森から現れた瞬間に、威嚇射撃ぐらいはしていただろうと考えていた。
ワイルドスワンが旋回を繰り返してブレイクを繰り返す最中、再びナージャが手前のムーディーに狙いを定めた。
しかし、彼女が撃とうとしたターゲットを、上空からダイロットが放った弾丸が後頭部を直撃。その1発でムーディーは即死していた。
「うぎぎぎ! 父さんに負けた!! クソ野郎、お前がちょこまか動くから、攻撃できないじゃないか!!」
「ヘボ! チョーヘボ、ダサッ! 自分が下手糞なのを人のせいにするとか、これがベッドの上だったら相手に嫌われるぜ」
「ウキーー!! 上等だクソ野郎! 次こそ当ててやる!!」
アークとナージャが低レベルな喧嘩をしている間に、生き残った2匹のムーディーが二手に別れる。
そして、1匹はワイルドスワンの後方を追い続け、もう1匹は左へと回り込もうとしていた。
アークは視線の端で左手のムーディーを確認すると、背後から来るムーディーの攻撃を右に旋回して躱す。
「む?」
前方の森から何か嫌な予感を感じたアークが、とっさに機体を左へ360度のロール回転を実行。
その直後、森から1匹のムーディーが現れて、先ほどまで飛んでいた場所を通り過ぎて行った。
「だから、突然進路を変えるな! ひらひら避けるから、普段も全員から避けられるんだ!!」
「突然、エテ公が現れたんだから仕方がねえだろ。それと、昨日初めて会ったのに、何で俺の事を知ってるんだ!」
ナージャが後方に張り付いているムーディーに向かって射撃。
弾を避けたムーディーが速度を落としたところを、レイブンから放たれた弾丸が、ムーディーの心臓部を撃ち抜いた。
またしても1発で仕留めたダイロットの腕に、アークが口笛を吹く。
「あのおっさん。本当に現役を退いていたのか?」
「父さんは現役を退いたといっても、戦火の激しい地域の輸送機の護衛をしていたんだ。このぐらいなら朝飯前に決まってる」
「なあ、なあ。何でお前が偉そうなの? ねえ、まだ自分が一発も当ててないっての理解してる?」
「ウルサイ! まだ1匹残ってる」
「……いや、1匹じゃねえな」
アークが前方の森を見て呟く。
「……ん?」
アークの返答にナージャが眉を顰める。だけど、彼女もすぐに森の異変に気が付いた。
「来るぞ!!」
アークが叫んでワイルドスワンの高度を上げるのと同時に、森から20匹以上のムーディーと、1匹の大きいボスクラスのムーディーが現れた。
「なんだ、この数は!」
「どうやら向こうは、ファン大感謝祭という名の乱交パーティの真っ最中だったらしいな。超絶良いとこ邪魔されて、ぶち切れてるぜ」
「何言ってんだコイツ」
2人が驚いていると、ダイロットから無線が入る。
『カ・ズ・ガ・オ・オ・イ・ケ・ド・イ・ケ・ル・カ・?(数が多いけど、行けるか?)』
普通ならば逃亡一択なのだが、大戦を経験しているダイロットは、このぐらいの数なら何とかなると考えていた。
「流石はダイロット。乱交パーティに参加する気マンマンだぜ。ありゃ、普段からルイーダが居ないところで、羽目を外してるな」
送られた無線文に、アークが続行を返信した後、ムーディーの執拗な追撃を躱しながら、座席の下からウィスキーの入った水筒を取り出して、一気にあおった。
アークの体にアルコールが染み渡って、感覚が超人的になる。
「はぁ? 何でこのタイミングで酒?」
ナージャがアルコールの匂いに気付くと、眉を顰めた。
「お前もやるか? ノリと勢いが高まって最高の気分になれるぜ。人はそれを責任放棄って言うらしいけどな!」
アークが半分冗談で、水筒を上に掲げる。
「……もうヤケだ! もらうぞ!!」
「おっ? マジか!?」
ナージャがアークから水筒をぶんどると、一気に口に含む。
「ゲホ、ゲホ!! 結構キツイな」
ナージャがウィスキーのアルコールの強さに咳き込んだ。
「俺が育った村のウィスキーだ。ウメエだろ」
「…………」
「……ん?」
返事がない事にアークが眉を顰めていると、後部座席から笑い声が聞こえてきた。
「くっくっくっくっ……ふふふふふ……あははははっ!! 最高だバカヤロウ!! 猿共、死ね! 死ね! 死に腐れ!!」
ナージャが笑いながら機銃をぶっ放す。
すると、先ほどまで当たらなかった弾丸が全弾命中して、ムーディーをなぎ倒していた。
「酔うの早っ!! しかも、トリガーハッピーになってやがる! ……ま、いいか」
アークが驚く、いや、開き直る? ナージャが調子付いてるならそれを生かそうと、ワイルドスワンを180度旋回する。
そして、彼も酒に酔った勢いで、ワイルドスワンをムーディーの集団へと突っ込ませた。
ワイルドスワンの機内でどのような事が起こっているか知らないダイロットは、ムーディーの群れに突入して暴れ回るワイルドスワンに、驚いていた。
「何だ、あの機動は……滅茶苦茶なのに全て避けている。まるでアイツが切れた時と同じじゃないか。それにナージャはあそこまで射撃の腕は良くなかった筈、一体何が起こっている?」
ダイロットは正気に戻ると、今は空獣の数を減らす事が先決だと、ワイルドスワンの後を追うムーディーに狙いを定め、次々と弾丸を放ち始めた。
彼が放った弾丸は、距離が300m以上離れているにも関らず、次々と命中させて敵の数を減らす。
ダイロットの攻撃に一部のムーディーがレイブンに狙いを変更させて、襲い掛かる。
ダイロットが機体を左へ旋回して、ムーディーの体当たりを躱す。
直ぐに反転して追いかけるムーディーを尻目に、彼は別の敵に狙いを定めて弾丸を放った。
レイブンの背後のムーディーが10mまで近づいたところで、突如ワイルドスワンが上空から現れると、その間を通り過ぎる。
驚くムーディーが慌てて止まっていると、ナージャが放った弾丸が側頭部を貫通させて、その命を奪い取った。
まだ生存しているムーディーが再びワイルドスワンに狙いを向けると、今度は旋回を終えたレイブンから弾丸が降り注ぎ、次々とムーディーが死体と化して宙に浮く。
ワイルドスワンとレイブンの高速起動に翻弄されたムーディーの集団は、少しずつその数を減らしていた。
ちなみに、ワイルドスワンの中では……。
「イェィイェィ、イェィイェィイェィ! ウォゥウォゥウォゥウォゥ!! イェィイェィ、イェィイェィイェィ! ウォゥウォゥウォゥウォゥ!!」
「ウルセエ!!」
歌いながら機銃をぶっ放すナージャに、アークが怒鳴っていた。
ムーディーの数が半分まで減ったところで、今まで静観していた体の大きいボスのムーディーが動き始める。
ボスは近くに居る手下のムーディーを掴んで持ち上げると、叫んで暴れる手下を無視して、ワイルドスワンに向かって投げてきた。
「素晴らしい特攻精神だな。きめえよ変態が!」
アークがボスの怪力に、舌を出して嫌そうな顔をする。
大砲の弾の様に飛んで来たムーディーを、ワイルドスワンが左に旋回して躱すと、泣き叫ぶムーディーはワイルドスワンの後を追い掛けていたムーディーと激突した。
その激突した2匹に、ナージャが追い打ちの20mmガトリングを放つ。
「ナナナーナ、ナナナーナ、ヘイヘーイ、グッバーイ!!」
「だからウルセエ、この酒乱!!」
「うるさいのは、お前だクソ野郎。バーカ、バーカ!」
2匹同時に敵を撃ち殺し、はしゃぐナージャとは逆に、アークは彼女にウィスキーを飲ませた事を本当に後悔する。
一方、ダイロットは、ボスが動きだしたのを見て、攻撃パターンを変更させた。
彼はレイブンをインメルマンターンで素早く反転させると、追っていたムーディーを撃破する。そして、フリーになったところで、ボスの攻撃のみに集中した。
再びボスが手下を掴んで、ワイルドスワンに投射するのと同時に、ダイロットが30mmガトリングのトリガーを引く。
弾丸が命中すると、高速で飛んでいたムーディーは、飛行進路を変えて森へと墜落した。
「おっさんやるじゃねえか!」
ダイロットの射撃にアークが感嘆の声を上げる。
「私は女だ。おっさん言うな!」
「テメエじゃねえよ!!」
「この戦闘機に乗っていると酔ってくるな。なあ、酔うと誰かを殴りたくならないか?」
「ああ。今、お前をぶん殴りたい気持ちで一杯だぜ」
会話をしながら、アークは襲って来るムーディーを華麗に躱し、ナージャは笑いながら機銃を放って確実に敵を仕留める。
シャガンの血を継いだ兄妹は、人格は横に置いといて、天才と言うべき才能を受け継いで暴れ回った。
全ての雑魚を倒すと、ボスは怒りを隠さず雄叫びを上げて、ワイルドスワンとレイブンを睨んでいた。
その形相は、見る者すべてを震撼させるほどだった。
「馬鹿が。乱パの基本は空いてる穴があったら、口でもアソコでも、どこも空いてなけりゃ腰を振ってる野郎のケツでもオッケー。考えなしに突っ込むのが基本だぜ。じっくり吟味してるから相手が居なくなるんだ」
「…………」
「……ん?」
アークが下ネタを言ってから、後ろから来ると思っていたツッコミがない事を訝しむ。
「……どうした狂犬。今のはツッコむところだぞ?」
「ぐーぐー……すやすや……」
「おやおや、かわいい寝息なことで……って、寝てる!? この状況下で寝るか? おい、バカ、起きろ!!」
アークが1人ボケツッコミをしてから、座席を体で揺らしてナージャを起こそうとするが、酔っ払った彼女は完全に寝ていて、一向に起きようとしなかった。
「クソ! 何となく寝るか吐くかは最後の落ちで来るとは思っていたけど、まさか戦闘の最中で寝るとは思……うおっ、やべっ!!」
ムーディーのボスが胸の辺りに手を寄せて、空気中から直径1mの氷塊を作る。そして、氷塊を高速でワイルドスワンに向かって放った。
ボスから視線を外していたアークが氷塊に気付き、慌てて回避行動を取ろうとする。
だけど、その前にダイロットが放った弾丸が氷塊を打ち砕いた。
『ナ・ニ・ヲ・ヤッ・テ・イ・ル・?(何をやっている?)』
アークが安堵していると、ダイロットから叱咤交じりの無線が入ってきた。
その無線文を読んだアークが口をへの字に曲げて、ダイロットへ返信する。
『ナ・ー・ジャ・セ・ン・セ・ン・リ・ダ・ツ(ナージャ戦線離脱)』
『ム・ス・メ・ハ・ブ・ジ・カ・!?(娘は無事か!?)』
『サ・ケ・ニ・ヨッ・テ・ネ・テ・ル・ダ・ケ(酒に酔って寝てるだけ)』
その送信後、ダイロットからの返信がしばらく経っても来なかった。
(……酒に酔って寝てる?)
アークから送られた無線内容に、ダイロットが眉を顰める。
長年空を飛んでいるが、交戦中に酔っ払って寝るという報告を聞いたのは初めてで、彼の頭の中ではクエスチョンマークで埋め尽くされていた。
ダイロットは正気に戻ると、詳しい話は後で聞くことにして、ワイルドスワンに陽動に専念して、相手を引き付けるように指示を出す。
アークはダイロットの指示に了解と返信すると、ワイルドスワンをボスに向けて突入させた。
「お別れだ。猿の頭で辞世の句でも考えろ」
無防備に正面から接近してきたワイルドスワンにボスが驚く。
そのワイルドスワンは、攻撃せずにバレルロールで横にズレると、ボスの横を通り過ぎる。
そして、ボスの背後に回ったワイルドスワンの機銃から、弾丸が放たれた。
ワイルドスワンの機銃は後ろを向いていて、アークが狙う事は出来ないが、威嚇射撃としては効果があり、背後から飛んできた弾丸にボスが驚いて、後ろを向いた。
ボスが後ろを向くのと同時に、ダイロットが背を向けたボスに弾丸を放つ。
放たれた弾丸は後頭部に突き刺さる軌道を進んでいたが、ボスは背後から迫る弾丸を直感で察すると、頭を引っ込めて回避した。
「む? 体の大きさから予想していたが、やはり亜種か。直感が他に比べて鋭い」
眉を顰めてダイロットが呟く。
確かに彼の言う通り、ムーディーのボスは亜種で他に比べて知性が高く、野生の勘も失われていないため、生存本能が高かった。
ボスが近くの空を漂っている手下の死体をレイブンに投擲すると、続けざまに氷塊を幾つも作り出してから、レイブンに向けて連続で放った。
ダイロットが狙撃を中断してレイブンの速度を上げる。
放たれた氷塊はレイブンが通り過ぎた後を通り抜け、空高く消え去った。
氷塊を回避した後、レイブンはボスから離れた空を旋回していた。
一方、ワイルドスワンは、ボスの背後から接近すると、脇を通り過ぎて威嚇射撃を放つ。そして、ボスの周りを旋回して煽り立てた。
その2機の行動にボスが苛立ち、再びワイルドスワンへと狙いを変えた。
「さて、どう攻めるか……」
アークが考えていると、ダイロットから無線が入ってきた。
『ウ・エ・ヘ・サ・ソ・エ(上へ誘え)』
アークがレイブンの位置を確認すると、レイブンは大きく迂回してボスが浮かぶ上空へ飛び、太陽に隠れようとしていた。
「ふむ。何をやるかは分からんが、こっちは威嚇射撃しか出来ねえし、任せるか」
アークはそう決めると、手あたり次第に死体と氷塊を投げてくるボスに向かって進路を変えた。
ワイルドスワンが速度を上げて接近すると、それをチャンスと見たボスは氷塊を作り、確実に当て様と待ち構える。
互いの距離が50mを切ったところで、ボスから氷塊が放たれた。
ワイルドスワンに向かって氷塊が弾丸の様に迫る。
それでもアークは、ワイルドスワンの進路を変えず、真っすぐ飛び続けた。
氷塊がワイルドスワンに当たる寸前、突然、上空から一発の弾丸が現れると、氷塊を撃ち抜き氷が砕け散る。
「無茶をする奴だ!」
「信じてたぜ!!」
撃ち抜いたダイロットが、安堵のため息を吐き、目の前で砕けた氷塊を見てアークが、ヒューと口笛を吹く。
ダイロットはボスが氷塊を作った時点で、氷塊に狙いを定め、アークは彼を信じて回避行動を取らず操縦桿を握っていた。そして、ダイロットは1Km近く離れた距離から、僅か直径1mの氷塊を撃ち抜く事に成功する。
アークがダイロットの神業を称賛しながら驚くボスへ迫ると、ワイルドスワンの進路を変えて下を潜り抜ける。
それから背後に回り込んで、一気に機体を上昇させた。
ワイルドスワンが威嚇射撃を放ちながら太陽へ向かうように高度を上げる。
ボスは直射する太陽の光に目を細めながら、ワイルドスワンに向けて巨大な氷塊を作り出り始めた。
太陽に向かって上昇を続けるワイルドスワンの先で、一点の黒い影が現れるのを見たアークが笑う。
「後は任せたぜ。撃墜王!」
上昇するワイルドスワンと反対に、レイブンが一気に降下して交差する。
「終わりだ」
ダイロットは30mmガトリングの照準をボスへと合わせて、躊躇う事なくトリガーを引く。
レイブンから放たれた弾丸は、不意を突かれ動きを止めたボスの頭部へ次々と突き刺さり、血飛沫をまき散らせてその命を終わらせた。
ボスを倒した後、アークとダイロットは宙に浮くムーディーの死体をアイテムボックスへと収納していた。
大半は森の中へと沈んでいたが、それでも2機のアイテムボックスはムーディーの死体で満杯になっていた。
『テッ・シュ・ウ・ス・ル・ゾ(撤収するぞ)』
ダイロットからの無線にアークが溜息を吐く。
「やっと終わりか……」
機銃を壊し、暴れ、酒に酔って歌った挙句に、戦闘中に眠る。
今も後部座席でスヤァと寝ているナージャの寝息を聞いて、アークが頭を横に振る。
「ペアを組む相棒の性格ってのは、まともな思考を持つ相手じゃねえとダメだな。ああ、フルートが恋しいぜ……」
自分の性格を棚に置いといて、アークは呟くと操縦桿を傾ける。
死体を回収したワイルドスワンとレイブンは、コンティリーブへと進路を向けて飛び去った。
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