1-3 エンターテイナー
数分も過ぎたと感じた頃、祖父のキャパは既に収まりが付かなくなり停止していた。蓄音器はその針を内側へ落とし、レコード盤だけが回っていた。
なんとか意識を保ったままの毅は、十分に焦って麗人に尋ねた。
「とっ、ととと、とんでもないことを言いますねえ! こんなボロ家に置いてくださいだなんて……」
「この本がここにあるのはきっと何かの運命です。私をここに」
勢いよく詰め寄ってくる麗人に、何とか引き返す気を起こそうと試行錯誤をする。
「い、家の人が心配しますよ!」
「私家が無いんです」
「そんな、馬鹿な……」
この辺りから、なにか不味い事に首どころか半身くらい突っ込んでいるのではないのかと思うようになっていた。
冗談を貶す笑いと共に言葉を返す。
「だって、じいやが……」
「じいや? なんの事でしょう」
麗人の卑しく笑う口元が恐怖を呼ぶ。
「えっと……、え?」
「あなたが呼んだのですよ?」
なんのことだろうか、祖父を呼んだのがそんなにいけない事だったのだろうか。
毅はいよいよ思考のキャパが限界になりそうだった。となりで回り続ける蓄音器のレコードの無機質感でさえ、恐怖を覚える。はくはくと口を無意味に開ける毅に、全身黒尽くめの麗人は丁寧な自己紹介をした。
「申し遅れました。私、『アネッサ・スキャパレリ』と申します」
「ア、アネ……サ?」
「はい」
名前を繰り返すとアネッサと名乗った麗人は綺麗な笑みを向けた。謎の本は未だカウンターの上で黙っている。タイトルは『ANNESSA』。何かがおかしい、こんな不可思議は未だかつて体験したことがない。
「……あ」
毅は目の前が真っ暗になった。
静かになった店内、夏空を切るように飛ぶ飛行機のエンジン音が、地上に降りて来ていた。風鈴の乾いた音が鳴り、そよ風がふわりと入ってアネッサのドレスを揺らした。
アネッサは意識を失ったまま立ちすくんでる器用な二人を余所に、蓄音器の依然として回り続けるレコードに気付き、回転を止めた。
そして、自分の座っていたイス、テーブルやティーセットに向けて指を鳴らすと、それらは何かポフンと煌く粉のようなものを纏いながらアネッサのポシェットへ吸い込まれていった。
「ご利用ありがとうございます。これからよろしくね」
精一杯の可愛さでそう言うと、固まっていた二人は同時に倒れた。そして麗人はそんな二人に少し驚くも、やはり楽しそうにくすくすと笑った。
◇
これは何か白昼夢の様なものだろうか。
あれから何が起きたか分からず、目が覚めた時には毅はリビングのイスに座っていた。対面して座っているのは奇妙の根源こと黒い麗人、名をアネッサ・スキャパレリと言う。
ニコリと口だけ笑って目は毅を見据えていた。
「……うんと」
何から話そうか、聞きたいことは山ほどあるのに、どこから切り込めばいいのかわからない。祖父は隣りに座っているが、まだ意識が戻っていないらしく驚いた顔のまま反応が無い。
「この本は」
先にアネッサが口を開いた。テーブルの上にあの謎の本を置く。
「私の説明書でございます」
説明書、確かに麗人はそう口にした。しかしその言い方は適切だろうか、まるで家電製品のような言い方ではないか。
「プロフィールってこと?」
「いえ、取扱説明書です」
言いなおされても理解のできない毅は、本を自分の方へ寄せて頁を適当に捲っていった。内容は何も変わらず、何語かもわからない文字が羅列されているだけ。
「全っ然、意味がわからないんだけど」
何もかもがわからない、そんな含みも入れて毅はため息を吐くと、本をテーブルに置いた。店先ではアネッサがつけたのだろうか、蓄音器が鳴っている。“Magnetic Rag”がかかっているのが聞こえてくるが、毅には曲名まではわからなかった。
「そうですね、わかりやすく……端的に」
毅の様子を見たアネッサは少し難しい顔をして考え込んだ。
「ハッ! わしの金!」
突然意識を取り戻した祖父が身も蓋もない下心をさらけ出した。
「じーちゃん、金の件はどうやらパーになりそうだよ」
「なんと!」
頬杖をついていう毅に、これでもかという程絶望的な顔をして祖父は言った。
「ほら、アネッサさんがここに置いてほしいって話覚えてる?」
「お? おぉー、覚えとるぞ」
「でも説明も無しに置いてほしいって言われても無理に決まってるから、アネッサさんに聞いたんだけど……。これ、この人の取扱説明書なんだってさ、どーいう意味かわかる?」
毅は祖父にわかるよう本を指差して教えた。仰々しい取扱説明書だ。しかしもしやヒューマノイドとかいう未来的な何かではないだろうか、そうなるとこの辞書みたいな説明書にも納得できる。
「ほげ……」
「じーちゃん? じーちゃん!?」
祖父はまた気を失った。覚醒したばっかで情報を詰め込み過ぎたか、まるで初世代のパソコンだ。いやそれ以下かもしれない。
「だめだこりゃ」
「そうです!」
毅が諦めて全てを投げ出そうとイスにもたれて脱力すると、アネッサは何かを思いついたように声をあげた。
「な、何?」
今まで品のある声しか聞いていなかった毅は、アネッサの大声に少し驚いた。
「わかりやすく、私ができることを毅にお見せしましょう!」
「いや、アネッサさんね、聞いてほしいんだけどさ」
人の話を聞いているのか、アネッサはテーブルの下に潜り込むと何かを探している様な仕草をした。
「大体出所もハッキリしない人を置いてくれるような家なんて無いわけだよ、貴女がまずしなければならないのは警察に行くことだ。交番なら駅前にあるから……」
「さぁ!」
馬耳東風で取り出してきたのは紙芝居だった。彫刻の施してある木枠が芸術的な紙芝居だ。先程から何をしているのかと思っていた毅は、また意味のわからない状況に「聞いちゃいねえ」と只々流された。
「ご説明いたしましょう! 私がいかな、人物で、あるかを!」
アネッサはこの状況をも楽しむ心持と少女のような口調で言った。
「説明ったって何も入ってないじゃないか」
「紙が入ってます」
ほら見てと言わんばかりに、紙を木枠から何度もスライドして見せるアネッサに対し、毅はただただ冷たい視線を送った。どうやら毅の中では既に状況を流せるだけのポテンシャルが整ったようであった。
「絵がないと何もわからないよ」
「直接入って、ご説明します」
そう言うやいなや、アネッサはいつの間にか持っていた指揮棒で紙芝居を叩いた。すると、目を丸くする間もなく、毅の身体はすっと紙芝居に吸い込まれていってしまった。
◇
いやにレトロで落ち着いた空間だった。目の前は先程の紙芝居の如くまっさらだが、明りがあるのかオレンジの雰囲気があり、どこか懐かしい気持ちにさせた。
「って、いやいやいやいや! これは不味いんでねぇかい?!」
流石に毅もこの状況は見過ごすことはできない。驚きと恐怖を感じ、とっさに戻る方法を模索した。が、当然見つかるはずもなくその場に立ちつくした。
「Welcome to
後ろにいたアネッサがマジシャンの衣装に身を包み、鳩を飛ばして言った。
「いやほんと何言ってんだあんた! つかなんなんだよコレ!」
「まぁまぁそう怒らず、とりあえずイスにでも座りましょう」
なだめつつ指を鳴らすと、毅の傍に劇場のイスが一列分現れた。ベルベットの赤いイスは真ん中だけ口開けていて、左右のイスは全て閉じてある。
そこに座れと言うことだ。
「……何をおっぱじめるつもりだ?」
「ではまず改めまして自己紹介から、参りましょう」
毅の肩を掴み少し強引にイスに座らせたアネッサは、いつの間にか持っていたステッキで床をトントンと突くと、今度は豪華なステージが飛び出してきた。
「……俺は、もしかしたら本当はまだ目覚めてないのかもしれないな」
「ではドリンクのご用意を」
目を擦る毅の傍に今度はテーブルとオレンジジュースのビンとコップが出てきた。
まるで召使の如くそれらは自分達でコップへ中身を注いでいき、最後に「どうぞ」とでも言うようにでコップだけ毅の傍に寄る素振りをみせた。
「どうも……?」
裏を訝しげに覗く。しかし何の変哲もないただのグラスだった。
「音楽もかけて、ごゆっくりお楽しみください」
下からにょきっと出てきたのは店にあったカウンターと蓄音器だ。軽快なラグ、“The Entertainer”の曲がかかる。
「さぁさぁ! ご覧いただきましょう! 私が誰で、どんなことができるのかを!」
ステージに立ったアネッサは毅しかいない観客席に楽しそうに声を張った。毅は瞼を半分閉じたような目で陽気な麗人を見つつ、オレンジジュースを飲んだ。
オレンジ本来のさっぱりとした甘みが口の中に広がる。
「100%か」
テーブルの上を見ると、オレンジジュースのビンが得意げに胸の100%のシールを見せつけてきた。
「My name is ANNESSA。それはそう、この本のタイトルと同じ」
目の前にポンと現れた謎の本を見つめる。本は勝手にパラパラと頁を捲っていく。文字列の頁に挿絵がリズムを刻んで右から左へ流れていく。
「この本は私の取扱説明書なのです。そう、魔法使いのね」
「魔法使いって言われても、ねぇ」
「Yes! 私は人の願望を叶える術を持つ、割と
割とマジ。こんな壮大なマジックショーをかましておきながら、まだ俺の事を信じてないのかと毅は苦笑した。
信じ切れてはないのは事実だが。
「願望、それは途方もない人の欲求でもあります。お金も寿命も人望も恋愛も」
ドル袋、二百歳と書かれた派手なプラカードを持ったおじいちゃん、大量のマネキン、トイレの男女マーク。アネッサが腕を指揮のように振る度にそれらは前触れもなくステージ出てきた。
おじいちゃんが最後に騒々しいくしゃみをする。
「全てが得られるのなら、これ程までに望んだことはないでしょう!」
パチンと指を鳴らすと、それらは一声に鳩になって辺りへ飛んでいった。
「夢だと思いたい……」
「ハンディ毅、これは現実です」
ハンディ。手々島だからハンディというわけだ。掃除用具みたいに呼びやがってと、毅は思わず眉を顰めた。
アネッサはまだまだ楽しげな笑みを絶やさず、ステージにさらなる装飾を加えた。
「さぁさぁ、望みを叶えて欲しくば対等の価値のあるものを私に与えてください」
「対等な価値?」
「Yes! 例えばこのリンゴ。甘みと酸味の絶妙なバランスがとても美味しい。あむ」
しゃくりとリンゴを一口食べると、下からリフトアップしてきた台に置いた。そしてステッキを床に突いてスライドさせると、下手の方から黒板がすーっと出てきた。
「このリンゴ一個分の願いは御覧の通り」
チョーク達が独りでに立ちあがり肩車をして文字を書いて行く、モノの移動、壊れたものの修復、質量の増減など曖昧で地味なものが多い。
「朝寝坊してしまった! しまった学校に遅刻してしまうぞ! そんな時、私にリンゴを下されば学校へはひとっ飛び! 朝ごはんも食べられます」
「俺そんな遅刻しないんだけど」
「壊れたものはありませんか? Wow! オーブンが壊れちゃった! おいしいパイが焼けないわ!」
突然三角巾にエプロン姿になったアネッサは、黒い煙を噴きだすオーブンにイラつく程大袈裟に反応すると、また指を鳴らした。
するとやたらキラキラした煙とポフンという音と共に、オーブンはたちまちピカピカになった。
「リンゴ一個でちょちょいのちょい!」
「ふーん、じゃあもしその蓄音器が壊れたら直してくれるってことだな」
「ブー! それはちょっとできないかな」
ステージだけでなく、視界に入る限り満遍なくバツ印を貼り付かせてアネッサは言った。
毅は心底ムカついた。説明しておきながらできないとはどういうことなのか。
「この蓄音器は沢山の時間、多くの人に触れてきました。思い入れの強いものの修理は、同じ思い入れの強い対価が必要なのです」
等価交換とはそういうものか。
確かにこんな歴史の窺える代物をリンゴ一個でどうにかしてもらうというのは浅はかだったようだ。
「因みにその蓄音器が壊れた場合なんですが……。この、ハンディ毅の電子辞書くらいが丁度いいですね」
アネッサは手元に毅の電子辞書を出した。
「俺の電子辞書? なんで?」
毅が中学から使っているものだが、なにか思い入れがあるわけでも、ましてや歴史があるわけでもない。ただの某電気メーカーの代物であった。
そんなものがこの蓄音器と対等の価値があるとは思えない。
「よく使いこなされているみたいですね。何度も修理をしているのは見てわかります」
「え……、うんまぁ確かに。使いやすいし、なんだか新しいものを買う気にもなれなくて」
たまに放ったりしてるせいか調子が悪くなったりすることもあるが、水に濡れてしまった時は丁寧に乾かしたと、大事に扱っているのは確かだった。
考えてみると少し思い入れのあるものなのかもしれないと、毅は思った。
「辞書は使ってなんぼなんですよ。探究欲がなければこんなに美しく仕上がりません」
ステージを降り、毅の方へ歩み寄ったアネッサは電子辞書を毅に差し出した。
辞書には所々傷があるものの、手に馴染んだ四角いフォルムと中のキーのさわり心地に安心感を覚える。
「この辞書となら、私は蓄音器を直してもなんの差し支えもありません」
笑顔を見せるアネッサに、毅は不覚にも少し顔を赤らめて目を逸らした。
「ま、まぁ、壊れた時は考えてみるよ」
「無理に直そうとしなくても、物はよく壊れてしまうものなのです。世代という形で様々な様式は変わっていくんですよ」
この電子辞書も蓄音器も、大事に扱ってやれば何百年と使えるのかもしれない。まぁ辞書は流石に使えなくなるかもしれないけど、壊れて使えなくなるまでは使っていたいと、毅は丁寧にテーブルの上に電子辞書を置いた。
「……他には何かできるのか?」
食べかけのリンゴを両手で包みこみ、息を吹きかけて風船を作っているアネッサに聞いた。
現状、完全に把握はできてないが信用してもいいかもしれない。毅の中で期待という気持ちが芽生え始めていた。
「では、次はできない事をお話ししましょう」
赤い風船にまた息を吹きかけると、今度はシャボン玉の様に小さい風船が生まれて飛んでいった。
黒板消しがさっさとチョークの文字を消すと、アネッサは今度は白衣の格好で自分で文字を書き始めた。
「えーまず、これはできません」
書いたのは『殺』という文字。当然と言うか道徳的というか、毅はとにかく安心した。なんでもできる魔法使いでも人殺しをされては困だろう。
「まぁ、そうだよな」
「そしてこれも」
次に書いたのは『蘇』の文字。蘇生の文字で、恐らく意味もそうなのだろう。しかし、これは……。
「壊れたもの、とは違うのか?」
機械や物質などの壊れたものを直せるなら、壊れた人も治せないのだろうか。
「なんというか、凄く曖昧な所なのです。今のハンディ毅には必要のない願いなので、これはパス」
説明してくれない不満に、オレンジジュースを一気飲みする。テーブルに置くと、100%シールが自慢のビンがまたコップに注いでくれた。
ふと毅が視線をやると、テーブルの上には既に空のビンが二つ、足の短いイスに座ってブレイクタイムに入っていた。どうやら意味不明な状況と可笑しなショーに耐え切れず、無意識のうちにジュースを飲み続けていたらしい。
「はいはい、ジュースも程々にねー。漏らしても知りませんよ」
「誰が漏らすか!」
「できないことは少々ありますが、それはその都度教えます」
なぜか鞭を手にしているアネッサは手でそれを撫でながら言った。特に意味が無いとこを願い、毅は文句を言った。
「先に教えてくれよ、じゃなきゃ願いなんか決められるか」
「まあ正直に言うと、私が面倒なのです」
正直に言い過ぎである。こんな大袈裟なことをして置いてよくそんな口が聞けるものだと、毅は腹いせにジュースビンを掴み取り豪快に飲みほしてテーブルに戻した。
ビンはくらくらと身体を揺らしたあとパタリと倒れてしまった。
「でも、とりあえずは願いは叶えてくれるんだよな!」
「もちろんでーす」
鞭を粘土のように丸めると、放った瞬間鳩が飛んで行った。毅は先行く不安を確信しながらため息を吐いた。
「あ、そうだ!」
何かを思いついたようにアネッサはそそくさとステージを片づけつつ今度はキッチンを出した。
「何だ何だ?」
「私、お菓子作るの好きなので、器材、揃えてもいいですか?」
わざわざそのためにステージを片づけてキッチンを出したのかと思うと呆れた。どうやらこの麗人は超が付く程天真爛漫らしい。
「まぁ、好きにしていいけど。お菓子なんてアネッサならポンと出せるんじゃないの?」
「お菓子作りは作る工程も甘くておいしいのです」
毅はボウルに生クリームを撹拌させているアネッサに対して、何か越えられない壁の様なものを感じ「あーそうですか」とだけ応えた。彼女の好きなようにやらせよう。
「後ですねー、私の家なのですが」
「家? ウチのことか?」
「いえいえ、ミニチュアの家を先程拝見したんですが……、あ、今のはダジャレじゃないですよ?」
ミニチュアの家。あの少女に人気の、兎やその他獣類が仲良く暮らすあの模型の事だろうか。
しかしあれは玩具だ。
「あれがよいのです」
生クリームを泡立てながら楽しそうに笑った。
「入らねぇだろ!!」
「いやだなぁ、私そんなおデブちゃんじゃないですよ」
泡立て器を振っておどけているが、生クリームが盛大に飛び散っている。
「いや、規格外だ」
「大丈夫ですよ、ほら」
指を鳴らし、ポフンとまたやたらとキラキラした煙に身を包むと、アネッサはキッチン諸共毅の視界から姿を消した。
「これなら問題ないでしょう」
上から風船に掴まりふわふわと小さいアネッサが降ってきた。その小ささは確かにあの可愛らしい獣類と仲良くできそうなくらいのサイズだった。
すとんとテーブルの上に立つ。今更もう何をされても驚くまいと、毅はあくまで普通に言葉を返した。
「問題は、ないが。申し訳ないがあれは結構な値段するんだ。俺の小遣いじゃ足りないよ」
「ではおじいさまに頼んでみましょう」
「お前自分で出せばいいだろ!」
「買ってもらいたいのです」
身なりが子供みたいだが、中身も子供になったみたいだ。なんだかわがままで面倒くさい。
「はぁ、じゃあわかったよ。じーちゃんに頼んでみよう」
「わーい!」
心底嬉しそうに万歳をするアネッサがちょっと可愛く思えて、まるで本当に従妹の幼稚園児のようだった。
ある程度喜んだアネッサは手を二度叩き、辺りに出した不可思議なセットを片づけた。大きさも元に戻って毅の座っていたイスもすーっと床に沈んで無くなった。
「さて、家の確保もできたことだし」
座り込んだままの毅に手を差し伸べて言った。
「これからよろしくお願いしますよ。ハンディ毅」
むすっとした表情のあと、毅はゲームを愉しむかのような表情でアネッサの手を掴み、立ちあがりながら返した。
「その変な呼び方はいい加減やめろ」
こうして、手々島 毅と魔法使いアネッサの奇妙な願望生活は、何の脈絡もなく始まったのであった。
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