第5話 馬車にて

「で、昨夜は何があったんですか?」


馬車の荷台に揺られながらアマルが切り出してくる


「実はさ……」


昨日の夜に起こった戦闘をアマルに細かく話す。

もっさんのことは隠したままだけど


「そんなことがあったんですか。イツキさんは戦闘の才能があるんですね、そうじゃないとゴブリン3体なんて撃退できないですよ!」


「そうかなー」


簡単に返事をするが内心にやけている。褒められるっていいね!


「逆にイツキさん聞きたいことはあります?」

「そうだな……じゃあ魔物ってどこからきてるんだ?」


「はい。父上から教えてもらったのですが魔物が発生しだしたのがおよそ50年ほど前のことらしく、基本的に『次元の裂け目』と呼ばれる所から出てくるそうですよ」


「へー、思ったより最近なんだな。1000年とか昔からいたかと思ってたよ」


まぁ、ゲームとかでは……だけど。


「ふふ、1000年なんて凄い数字ですよ」


「ははは、だな」


二人して笑いながら話を続ける。


「そういえば、アマルは何でルーファに行くんだ?」


「その質問を待っていましたよ!実はボク、あるギルドに推薦していただいたんですよ!その手続きでルーファに行きます」


「推薦って、結構凄いことなんじゃないのかアマル」


「えへへ」


アマルは頭を掻いて照れを隠すが耳が高揚していて照れているのが丸分かりだ。可愛い奴め




結局日が暮れるまで他愛もない会話を続け、喋り疲れたアマルは先に寝ている。ルーファには明日の正午くらいに到着する予定だとアマルと従者が話していた。



「もっさん、いるか?」

『いますぞ』


先日の戦いで俺の一物が喋るようになった。何でそんなことになったのかはよく分からないけど……。


「もっさんは俺が戦うとどういう状態になるかしってるの?」

『うむ、イツキ殿は相手を倒すと絶頂するのですな』


「ま、まぁそうなんだけどさ……」


改めて他の人……ってかもっさんに言われると恥ずかしいなこの現象……。


「何でこんなことになってるか分かるか?もっさん」


『それは……全くもって分からないですな。だが魔物を倒した時にナニカが私の中に入ってくることは感じる』


「ナニカって……もしかして経験値ってやつか!?」


『経験値が何かが分からないのだが、あえて言おうそれは違う。何故ならそのナニカはとても気分がいいものであるからな』


気分がいいもの……か。そのナニカが経験値じゃないとするなら、俺は魔物を倒した時に経験値を得られないってことだよな。


ずっとレベル1……か。ロマンがないな、ロマンが


「しかし疲れたなー。もっさん悪いけど俺も寝るわ」

『うむ、先日の戦いの疲れがまだ抜けていないのであろう。しっかり休むとよい』


もっさんに挨拶をして馬車の揺れを感じながら眠りにつく。


――――――――――――――――――――――――――――――




「んぁ……」


寝ぼけ眼を手で擦りながら体を起こす


「おはようございます、イツキさん」

「ん、おはよ」

「イツキさんは朝が弱いんですね」


目覚ましがないからついゆっくり寝てしまう。現代人は朝が弱いのだ。


「もうそろそろでルーファに到着するはずですよ」

「おお!そうか!」


馬車に乗ってから外の風景が草原ばっかりで退屈だったから新しい場所に着くっていうのはいいことだ。

まずはこの世界のこと、それと俺の例の体質のことをルーファに行ったら調べよう。


「あ!見えて来ましたよ!あれがルーファです」

アマルに言われ馬車の中から正面を覗く。


ルーファの外観は中央に大きな通路があり建物は見たところ石造りが多いようだ。


知らない土地で知らない場所に今から行く、困惑もあるが興奮もある。さぁ行こうか、北西の町ルーファに

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