第4話 出発の朝

「…さん……イツキ…さん」


もう少し寝かしてくれよ…眠いんだ…


「イツキさんっ、起きてっ!!」


「ん?あぁ、おはよう」

寝ぼけながら目の前に立つアマルに挨拶をする


「おはようございます。……じゃないくて!どうしたんですかその血!」


「え?」


ゴブリンとの戦闘の後そのままの格好で寝てしまったらしい。お陰で血が乾いていてパリパリだ


「夜にちょっとね。後で詳しく話すよ」


「ではイツキさん、もう少しで迎えが来ると思うので水浴びしてきてはどうですか?」


「そうさせて貰うよ」


アマルに井戸の場所を教えてもらって目を擦りながら歩を進める。


『イツキ殿おはようでござる』

「やーもっさん、おはよう」


服を脱ぎながらもっさんのことを考える


「……もっさんってどっから喋ってるの?」

『やはりイツキ殿の一物からでは?』


もっさんが喋ると脳内に言葉が響くんだよね。一物に口が出来てそこから喋る、みたいに為らなくてホントによかったよ。



色々と分からないことがあるけどこの状況をどこか楽しんでいる自分がいる。

もっさんのことや何で俺が死なずにここにいるのか……


分からないことを分からないままにするのは性

しょう

に合わない!いっそ今を楽しもう。



井戸から掬い上げた水を頭から浴びて体も、心もさっぱりする。


「アマルー?水浴びて来たんだけど服貸してくれない?」


着ていたスポーツウェアはゴブリンの返り血まみれだったので流石に要らない。

でも幸い俺自身は怪我をしていないのでよかった。


「ちょ、ちょっとイツキさん!何て格好してるんですか!」


「え?まぁいいじゃん」


どうせ男同士なんだし。


「服はボクのは小さいから……父上のを借りてくるね。イツキさんは外で待っていて」


「助かるよ」


そう言ってアマルは部屋を出ていった。




アマルが持ってきてくれた服を着て少し立つと遠くの方から何かがやってくる。


「あ!迎えの馬車が来たよ!」


馬2頭が荷台を引きながらこちらに向かってくる。


「おぉ、あれか」


馬車は実際には初めて見たけど思ったよりでかいな。

馬自体も直接初めて見たし…やっぱ百聞は一見にしかずだな!


『いやいやイツキ殿。5歳の時に馬は牧場で見ましたではないか』


「え?覚えてないんだけど、てか何でもっさんが知ってるの!?」


「イツキさん?急にどうしたんですか?」


あ、しまった。もっさんの会話ってアマルには聞こえてないんだった


「あ、いや。何でもないんだ。さぁいこう!」


アマルは首を傾げて馬車の荷台に乗り込む。


「もっさん。これからはお互い気を付けような」

『ごもっともですな』


小声でもっさんに言いながら俺も馬車に乗り込もうとすると手を掴まれる。


「おい小僧、アマルに何かあったら俺がお前を殺しに行くからな。あとその服代、宿泊代はきっちり請求させて貰う。金はアマルに渡せ」


「は、はい……」


きっちりしてるな…アマルの親父さん……


「イツキさーん、行きますよー!」

「今いくよ」


「目指すは北西の町ルーファ!いざ出発」


アマルのかけ声と共に馬車が動き出す。

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