第3話 初戦闘の末

顔を上げると目の前にいる残り2体のゴブリンが驚きの表情で此方を見ていた。


それはそうだろう仲間の一人が首を跳ねられて死んだと思っていたら敵が膝を崩したのだから


「よ、ヨクモ!」

「ユルサナイよ!」


叫びながら2体同時に飛び掛かってくる。


その

・・

余韻を感じながら揺れる膝に手をかけ体を起こす


く、くそっ!どうなってんだよ、俺のからだっ!


手の平に感じる汗に不快感を覚えながらもがむしゃらに、赤ん坊の駄々のように剣を降り続ける。




肩で呼吸をしながら夜の冷たい風を浴びる


「あと…1体……!」


「グう……」


最後のゴブリンは持っていた剣を折られ攻撃の術を失っている。


イツキは初めて剣を持ち敵と対峙、そして戦闘。という日本のような現代社会に居たら経験できないようなことを実際にしている。


くだん

の血まみれの人?が持っていた剣は重さ約1.5kg ほどであるが、これを持ち絶頂の感覚を耐えながら戦闘を行っているイツキは普通ではないだろう。


必ずしも何処かに隙が生まれるはず、剣の扱いは素人同然なイツキが力任せに重さ約1.5kg の剣を降りゴブリン達を倒す。


それを可能にしているのはアビリティ1 能力上昇

ハイスペック

が機能しているからであろう。



「終わりだ……!」


呼吸の乱れが多少正常になり頭の血が引いていく。


これから来るであろう感覚に備え体に力を入れてゴブリンの体に剣を降り下ろす。


ゴブリンの返り血を浴びながら肩を抱く。


「くっ…うっ……」


感じる電流の波が強く思わず声が漏れる。


『一定数敵を排除したのでアビリティがver. アップします』


『アビリティ1 能力上昇

ハイスペック


ver.1.1 意思疏通

ハローブラザー

を獲得しました。』


またそれか……てか ver. アップて、アプリかよ

でも何とかゴブリン3体倒せた……!少し休憩して戻るか


イツキは初戦闘で大金星の快挙に1人興奮を覚え、腰を上げる。


「ん?ちょっとポジションが悪いな」


ズボンをまさぐり収まりがいい場所にブツを戻す。

しかし数歩歩くとまた悪い位置になってしまう。


「はぁ!?何なの?」


切れ気味になりながら強引に戻す


『そんなに強くしないで貰えるか』


「あれ?誰かいるのか?」


薄暗い回りを見るが誰もいない


『ここですぞ、ここ』


反応がある場所に目をやるがやはり何もない。何故ならそこは俺の体の一部だから


『一物が喋るとは誰も思わないでしょうね』

「はは…変な冗談よせよ、誰か隠れてるんだろ?」

『私自信も冗談かと思いましたよ、イツキ殿』


額に滲む汗を拭い先程のことを思い出す


『ver.1.1 意思疏通

ハローブラザー


これかぁ……意思疏通って自分の一物と会話出来るってことね、なるほどぉ……


いや!無理があるでしょ!何でよりによって自分の

一物なん!?


『自分でも何がなんやら…』


「こっわ!自分の一物が喋ってると思ったら怖いわ」


『まぁこんなこともあるでしょう。さぁアマル殿の家に帰りましょう』


何でそんなに冷静なの……


「ふぅ、でも流石に疲れた。色々ありすぎて」




ふとイツキは気付く。


「あれ?ゴブリン倒したのにレベル上がらないし」

『それは私も思いましたぞ』


さらっと入ってくるね、あんた


「あー、名前ってやっぱ…そういう名前で読んだ方がいい?」

『む…それは余りよろしくない、愛着が湧くような名前を付けて欲しい』


えー、チンちゃん?チンさん?イッチー?


『しっくり来ないですな』

「じゃ……もっさんは?一物のもっさん」


もっさんは少し沈黙して答える


『悪くないですぞ』

「じゃ、じゃあよろしくもっさん」

『此方をこそイツキ殿』


不思議なやり取りに笑みが零れ、生まれてからずっと一緒の一物に改めて挨拶を交わす。

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