第2話 こんなの初めてぇ
川沿いをとぼとぼ歩き続けているとようやく家らしきものが見え始める
日が落ちる前に見つけられたのは幸いだった。
嬉しい余り少し早歩きになってしまう。先程からお腹が悲鳴をあげていたのだ。
「これは…村か?」
「おいお前、止まれ!何しに来たんだ!」
髭の男が睨みながら話しかけてくる。急に言われたから
びっくりしたわ
「川の上流から下って来て着いた所がここだったので立ち寄りました」
「上流から…?」
「父上。この人は?」
俺達の話し声に釣られて家の奥からあまり身長が高くない中性的な顔立ちの少年が声をかけてくる
「怪しい奴だ」
言われて気付く。俺、怪しいよなやっぱ。服はバンジージャンプの時のままのスポーツウェア、腰には剣だもんな
でもここで弁解しないとやばいことになりそうだ
「い、いや怪しくなんてないですよ!?旅行で来てたらここに辿り着いたんです!」
旅行で来て(バンジージャンプから落下して)辿り着いたんです。が正解だけど伝わらなそう…
「お名前はなんて仰るんですか?」
「イツキって言うんだけど」
「イツキ…さんね、ここら辺じゃあまり聞かない名前ですね」
「そうなのか? ん?アマル…レベル11?」
少年の頭上に浮かぶ文字をつい口に出すと驚いた顔で俺を見つめる
「す、凄いよ父上!イツキさんレベルが1なのに『基本情報』のスキルを持ってるんだ!」
ふぇ?スキル?アビリティじゃないの?さっきはアビリティって言ってたけど…
「あ!ごめんなさい!アマルはボクの名前だよ。レベルは11!ここら辺じゃ一番高いんだ」
「アマル、レベルってあのレベルか?敵を倒すと経験値がもらえるやつ」
「まあ、そんな感じです。イツキさんは魔物を倒したことないんですか?」
ゲームかよ…マジで。さっきの血まみれの人?も魔物だったのかな
「うーん、倒したっていうか倒れたっていうか」
「んぅ?。よく分からないけどイツキさんは旅行ってことはこの先の町に行くの?」
分からないのは俺の方だけどスルーしよう
「え?あ、ああそうなんだ。町にいこうと思っていてね」
取り合えず合わせておこうか……それにアビリティに関しても詳しい人がいるかもしれないし、もしかしたら元の場所に帰れるかもしれない。
そういえばアビリティ1 能力上昇
ハイスペック
って言ってたけど何か変わったか?まあ、歩いててそんなに疲れなかったっていうぐらいか
「やっぱり!実はボクも町に用があって行くんだけど一緒にどうですか?」
「じゃあ、お願いしようかな」
「決まりだね!」
アマルは満点の笑顔で言う。
「父上。イツキさんを今日は泊めてあげようよ」
「ふむ…イツキとやら一泊はさせてやるが夜の見張りはやってもらおう。タダ飯食らおうなんて思うなよ?」
「分かりました」
「ある程度時間が経ったら戻ってこい」
――――――――――――――――――――――――――
とは言ったものの実際夜になると雰囲気が独特で怖いな…
光は松明だけだし
そういえばアマルが『基本情報』のスキルのことを簡単に説明してくれたけど、発動すると相手の名前とレベルが見えるってことらしい。それと『基本情報』はレベル3で取得できる……と。
そして例の魔物が倒れた時に獲得した
能力上昇
ハイスペック
。
多分アビリティ 能力上昇
ハイスペック
はスキル
『基本情報』と一緒なんだと思う。だから俺のレベルが1でも使えた……となる
アビリティめっちゃ便利じゃね?だってレベルが1でも使えるんだもん、有能ですわ!うん。
ん?何だあれ。
イツキの正面から松明らしき火がゆらゆらと揺れながら近づく。その数3つ
アマルの親父さんは結界があるから万が一があっても平気って言ってたけど一応見に行くか。
イツキは地面に刺さっている自分の松明を持ち20mほど離れた火の正体を探ろうと歩きだす、念のため剣を手に握って。
向こうも俺の松明に気付いて近付いてきている
「すんませーん、どちら様ですかー?」
声が聞こえるであろう距離までいくと話し掛ける
「に、ニンゲンだ!こんなトコロニ」
「ど、ドウスル?」
「ワカラン!ニンゲンコロス!」
火の灯りで相手の正体がようやく分かる。
ゴブリン レベル5
ゴブリン レベル3
ゴブリンレベル3
なるほど…これが魔物っていうことね…
1対3。
うん、無理。アマルを呼ぼう!
でもここからだと声は届かないだろうから走って戻らないといけないな
どうやって逃げようか考えていると一匹のゴブリンが剣で切りつけてくる
「おわっ!」
イツキも剣で応戦するが急な展開に腰が引ける
「ちょ、ちょっと待てって!」
力任せに剣を押し返す。するとゴブリンが勢いの余り尻餅をついてしまう。
「ぐアっ」
い、今だっ!!
イツキが地に伏せたゴブリンに目掛けて精一杯の力を込めて切りつけ首を飛ばす。
「あっ、えっ?」
体に走る電流に堪えきれず膝が折れる。
な、何だっ!?この下半身を中心に伝わるこの感覚っ!
その感覚は中学生から始めたあの行為。その最後に来る最大級の興奮。それに似ていた……
そう、絶頂に。
電流が収まるとイツキは悟る
「はは……、何か俺…イッちゃった……」
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