現代のイカロス

脱出を決行する日がやって来た。心配性の父ダイダロスは忠告した。

「イカロス、空を飛ぶにあたって気をつけないといけないことがいくつかある。まず、海の近くを飛びすぎると翼の蝋が湿ってしまう。太陽に近づきすぎれば溶け落ちてしまう。中くらい、と言っても地表から2キロの層のエアロゾル粒子は気管支に影響するかもしれない。オゾンホールが大きくなっているから有害紫外線にはよく注意しなさい。また某国がケムトレイルを散布したようだ。不気味な飛行機雲には近づいてはいけない。ジェット気流に乗って炭疽菌の載った気球も飛んでくるかもしれない。戦闘機のスクランブル発進が起こるかもしれない。戦闘機を見つけたら戦わずに逃げなさい。イージス艦の配備も進んでいるから対空ミサイルのは射程範囲には気をつけること」

イカロスは忠告のほとんどを聞いていなかった。調子に乗ったイカロスは空をぐんぐん昇っていき、翼は灼かれて飛べなくなり、気管支不全に陥って苦しみもがき、イカリア海に配備された艦隊に撃墜されて弾け飛んだ。

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