情事
いきなりの閃光で気絶しかける。意識が形を持ってくると、おれの手足は縛られていて、猿ぐつわを咥えていた。
「突然だがね、君」
白衣の男は名乗りもせずにこう始めた。周りには似た格好の人間が並ぶ。
「君は、恐らく彼女に恋慕の情を抱いているのだろう」
写真の中には彼女が写っていた。おれはソイツを睨む。
「なに、君にも彼女にも危害は加えないさ。早速要件を言おう」
彼は俺の目を見て言った。
「彼女のことは諦めなさい」
おれはキョトンとした。身動きを取れなくした割には要件が軽い。
「恋愛は自由さ。素晴らしい。しかしね、仮に君が彼女と結ばれてしまうと、核爆発が起こる」
全く意味が分からない。
「一見君と彼女の間柄が核と関係しているとは思えないだろう。だが、彼女は我々と対立する組織から送り込まれた爆弾なのだ――それも記憶を消されて、ね。彼女は何も知らないが彼女の体内には核爆弾が内蔵してあり、彼女と性行為を行った場合爆発する仕組みになっている。信じられないと思うが、これが真実なのだよ」
ほんと、信じられない。アホくさい。
「そんな悲しい顔をしないでおくれ。気持ちは分かるのだが」
勝手に分かった気になるな。おれはそう主張したかった。ただでさえ彼女がデートをドタキャンしたと言うのに、謎の男達に縛られて不愉快な話をされたのだ。すなわち怒っているのだ。
おれが耐えかねて叫ぼうとしたとき、東の野がピカリと光って、核の炎が全てを呑み込んだ。おれは未だに童貞であった。
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