グローバル

「グローバル化の波を阻害する厄介者は消えた。2045年の今日、長らく人類を煽動し戦争を起こしていた国家という枠組みは崩壊し、真の平和が訪れたのだ!これからは国境のない、人種差別もない、ジェンダーフリーで、地球市民全員が助け合って暮らす時代なのだ!」メディアは最後の独裁者の暗殺を明るく報じた。おれはさっそく仕事に出かけた。


人類は「争う必要がないのだから」と兵器を手放し、「稼ぐ必要がないのだから」と職を辞めた。また、「モラルに縛られる必要がないのだから」と路上での性交や排泄が多く見られるようになった。幸い、地球温暖化によって人類の居住地ほとんどでバナナが食べれたので、食には困らなかった。


人類はテレビを見なくなった。ラジオを聞かなくなった。芸術を解さなくなった。科学を棄てた。スポーツはマラソン以外消失した。いずれもなんのこっちゃ理解できなくなったのが発端である。しかしインターネットは使い続けた。UI環境はとてもよかったからである。


人類は体毛を剃らなくなった。虫に刺される危険性が少ないからである。股が痒いので掻くやつが増えた。性病も流行った。そうして、周口店上洞人しゅうこうてんじょうどうじんやクロマニョン人と見分けがつかなくなった。もっとも彼らは人類の進化の軌跡などはとうに忘れていた。


おれは火星にいるボスに連絡した。

「地球上の人類の文明の破壊、退化は完了しました。今やあいつらは猿と変わりません」

「了解。これより、地球侵略を開始する」

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