ウロボロス

●解説

 ビルド適正:全て

 

▼概要

 まず、最初にこの寸評を御覧になっている諸氏に伝えなければいけない事がある。 

 もし、諸氏等がまだDX3rdというゲームに慣れておらず、また、ウロボロスと言うシンドロームをみて「なにこれルールブックにのってねぇんだけど」と思うのならば、この寸評はまだ諸氏等の役には残念ながら立てない。


 何故かというと、この寸評はサプリメント追加シンドロームの寸評であり、要するにメーカー希望小売価格3200円税別の「インフィニティコード」を所持している方しか使用が許されていない禁忌のシンドロームことウロボロスの寸評だからである。故にこの寸評に限っては、サプリメントを所持していることを前提に話を進めさせてもらう。


 また、もしサプリメントを所持していたとしても、慣れないうちはウロボロスを発症しているキャラクターを作成する事は決してお勧めしない。

 ウロボロスは強力無比なシンドロームであるが、それ以上に扱いが面倒くせぇというか、コピー系のエフェクトを数多く有しているシンドロームなので、ぶっちゃけていえば、参照しなきゃいけないデータの数が他のシンドロームと比べて段違いに多いからである。

 要するに若干上級者というかコアユーザー向けのシンドロームであり、故に此処でも最終的には「自分で考えてね」と解説も何もかも丸投げした、寸評とは言い難い寸評しか、結局は書けそうにない。

 それでも、ある程度ゲームも慣れて来たし、そろそろこのじゃじゃ馬の手綱を握ってみたいという諸氏の為に、この寸評を書き記したいと思う。


 さて、前置きが長くなった。

 改めて、ウロボロスについて説明すると、レネゲイドの破戒者であり王であるという何とも大仰かつ、その大仰な肩書に恥じない性能を持っているのがウロボロスというシンドロームである。

 分かりやすくいえば、現代異能モノや現代伝奇モノの主人公やラスボスの異能をそのまま使用できるシンドロームであり、もっと具体的に言えば、相手の異能だけ消しとばしたり、大幅に使用を制限したり、能力をコピーしたり、質量のある影で弄り殺したりなどと言った中二心をくすぐる能力を全部使用する事を出来るのだ。

 そんなシンドロームが弱いわけがなく、サプリメント追加もとい今風に言えばDLCの名に恥じない暴力的な性能を誇っている。

 ただでさえ万能のハヌマーンやモルフェウスですら、ウロボロスを見れば「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」と呟いてしまいがちである。

 

 だが、良い事ばかりでもない。

 ウロボロスは確かに無双の力を持つ強力無比なシンドロームであるが、それはこのDXと言うゲームにおいては最もレネゲイドの淀みに近づき、人間性から遥か遠ざかるシンドロームと言う事でもある。

 つまり、侵蝕率のかさみ易さが全シンドローム中でもトップクラスであり、それどころか基礎侵蝕率を増加させるエフェクトも数多く所持しているため、初期作成でも欲張ればあっという間にゲーム開始時の初期侵蝕率が50%に届いてしまうという、何ともPC離れした特徴を有しているのである。

 要するに、最もジャームに近いシンドロームであり、それは最も危険で扱いが困難なシンドロームであると言い換えることも出来るだろう。


 なので、総合的な使いやすさに加えてコンパクトに必要なものだけ揃えているハヌマーンや、器用に必要なものだけ選択できるモルフェウスと違い、ウロボロスは全体的にオーバースペックであり燃費が悪いのである。言うなれば、人一人殺すのに刃物どころかわざわざ主力戦車や大陸間弾道ミサイルまで持ち出すような壮大な無駄を平然と行うのがウロボロスというシンドロームであり、その辺りの無粋な品の無さが最大の欠点とも言える。

 まぁ、異能バトルという題材からみれば、人によっては別に気にもならない欠点と言われてしまえば、全くその通りではあるのだが。


 はてさて、そんなわけでようやく性能の話に移っていく。

 まず能力値修正が精神に寄っている事からも、ウロボロスはRCに寄っているシンドロームであるという事が伺えると思われる。

 じゃあ何でも出来るわけじゃねぇじゃんと思うかもしれないが、安心して欲しい。

 別に素直にRCを使っても強いのだが、メジャーアクションに限っては精神能力値万能置換エフェクト「無形の影」が存在している事により、適正だの技能だのと言ったそんな些末な問題は全て吹き飛ばされるからである。

 しかも、この「無形の影」の指定は他シンドロームにもいくつか存在する能力値代替エフェクトの数々と違い、代替先に一切の制限が存在しない。すなわち、このエフェクトは「あらゆる判定」に無条件で使用可能なのである。つまり、精神さえあげていれば全ての判定をこのエフェクト1本で解決する事が出来る。しかもシンドローム技能ではなく単独で使用可能なエフェクトであるため、その気になれば「コンセントレイト」を組み合わせることでC値も気安く下げる事が可能という、過剰なまでのインチキっぷりである。ミドルの情報収集などウロボロスにとっては何が来ても朝飯前である。1ラウンド1回制限であるが、一部のビルド以外はどうせ1ラウンドにそんな何度も動くゲームではないのため、侵蝕率以外は全く問題にならない。

 

 また、能力の吸収を象徴したエフェクトなのか、相手にダメージを与えた際に永続的に自分の能力を高めたり、相手のバフや装甲を無効化するといったエフェクトも所持している。

 中でも「背徳の理」は増加するダイス係数が驚きのLv×2であり、無理やりにでも初手を通せば以降の命中判定で困る事はほぼなくなる。「喰らわれし贄」も増加攻撃力の係数が×3であるため、実に有用である。

 射程が至近ではあるが、オートアクションを打ち消す事が出来る「レネゲイドディゾルバー」などの便利なエフェクトもある。

 防御面も1ラウンド1回ではあるが、範囲ダメージ軽減かつ係数5という破格の性能の「雲散霧消」を有している。 


 しかし、これらの強力エフェクト群ですら、ウロボロスにとってはオードブルの一部でしかない。

 ウロボロスの目玉にしてメインディッシュであるエフェクトはやはり。各種「原初」の名を冠するコピー系エフェクトである。

 これらのコピーエフェクトはそれぞれに独自の制限はあるものの、余所のシンドロームから制限内で自由にエフェクトをつまみ食いする事が出来る反則エフェクトであり、無理にくまれたクロスブリードやトライブリードのシートに対して「ウロボロスでいいじゃん」という冷たい言葉が吐き出される元凶となっている諸悪の根源である。

 実際、特定シンドロームの特定のエフェクトだけを目的につまみ食いをしているビルドであるならば、ウロボロスの運用によって侵蝕率以外の全てが円滑に解決され、なんだったら余所のシンドロームのもっと便利なエフェクトをピンポイントに拾って来る事も簡単にできるのである。


 具体的に言えばエンジェルハィロゥの「ピンポイントレーザー」や「マスヴィジョン」、バロールの「時の棺」、ブラックドッグの「バリアクラッカー」、ブラム=ストーカーの「渇きの主」や「ブラッドバーン」や「始祖の血統」、キュマイラの「フルパワーアタック」や「竜鱗」、エグザイルの「デビルストリング」、ハヌマーンの「サイレンの魔女」、モルフェウスの「ヴィークルモーフィング」や「クリスタライズ」、ノイマンの「インスピレーション」や「勝利の女神」、オルクスの「妖精の手」や「縮地」や「完全なる世界」、サラマンダーの「氷壁」や「クロスバースト」や「プラズマカノン」や「インフェルノ」、ソラリスの「狂戦士」や「さらなる力」や「オーバードース」などがいい例である。

 さらにはこれらの「原初」シリーズの援護も充実しており、特に「混沌なる主」による達成値上昇は実に頼もしい。

 

 だが、先に述べたようにこれもいい事ばかりでなく、これらの「原初」シリーズで取得したエフェクトは使用する際の侵蝕率が増加する上、使用回数制限のあるエフェクトを取得した場合は基礎侵蝕率まで上がる。

 そのため、欲張ってあれもこれもと取得していけばあっというまにジャーム化のキャラロスト一直線であり、ただでさえ侵蝕率がかさみがちな高経験点環境ではそれがより一層顕著になる。

 特にガード屋や支援屋をウロボロスでやろうとすると、余りの燃費の悪さに眩暈がするかもしれない。

 PCのキャラクターシートなどチリ紙も同然であると嘯く方であるならどうしようと結構であるが、そうでないのならば、計画的なビルド構築と運用をお勧めする。



▼ピュアブリード

 ピュア制限エフェクトが二種とも「原初」シリーズの使用を補助する効果であり、これらを存分に悪用する事が強く推奨されている。

 また、何と言っても「原初」シリーズの最大Lv増加により、各種シンドロームがピュアで無ければ発揮できない威力のエフェクトをちょこちょこつまみ食いできる点が最大の魅力である。

 「混沌なる主」の最大Lv増加も実に嬉しい。各種ダメージを通したらステータスアップ系のエフェクトの効果が高まる点も見逃せない。

 身も蓋もない事をいえば、「サイレンの魔女」を最大Lvの「混沌なる主」や「妖精の手」で補助するだけでも恐ろしく凶悪なビルドが完成する。

 なんだったら「クロスバースト」や「時の棺」のおまけつきである。

 無論、そういった定番以外にもあらゆるビルドの構築が可能である。

 複数のシンドロームの特定のエフェクトだけ欲しいけど、他のエフェクトも能力値も必要ないというビルドを思いついた際は、試しにウロボロスに手を伸ばしてみるといいだろう。


▼クロスブリード

 「原初」シリーズに頼りがちなピュアブリードでは常時エフェクトやリミットエフェクトの取得が難しいため、それらを活用したい場合はこちらの選択肢が有用となる。具体的に言えば、ブラックドッグの「ハードワイヤード」やモルフェウスの「黄金錬成」、ノイマンの「マルチウェポン」+「ヴァリアブルウェポン」などである。

 無論、「原初」シリーズのつまみ食いだけではエフェクトが取り切れない場合も有効である。

 こちらの場合は具体的に言えば、欲しいエフェクトが自前でそこそこ散らばっているが、余所から輸入したいエフェクトは装甲無視と移動エフェクト以外はそれほどないキュマイラなどが該当する。

 各種シンドロームの専用Dロイスを生かすことができる点も大きな魅力である。

 ピュアブリードのウロボロスは色々なシンドロームの一番おいしい所だけをつまむのが得意だが、クロスブリードのウロボロスは特定のシンドロームにさらに多くの華を添えることが得意なのである。

 とはいえ、「原初」シリーズを採用すれば侵蝕率の異常な増加だけはどうにもならないので、そこだけは留意が必要である。

 逆にいえば「原初」シリーズに頼らなければ、かなり省侵蝕率に組む事もできる。


▼トライブリード

 ピュアブリードの時点で本来のトライブリードの運用である「色々なシンドロームの美味しい所をつまみ食い」が実現できてしまうウロボロスにとって、積極的にトライブリードを選択する理由はあまりない。

 100%制限はもちろんのこと、オプショナルに選択すれば80%制限にまで手が届きにくくなるからである。

 その上、トライブリードは取得エフェクトの最大Lvが下がる関係もあって、取得するエフェクトが多方面に散りがちであり、ただでさえ過剰な侵蝕率増加が更に加速するという、デメリットばかりが目立つ結果になるのである。ピュアブリードやクロスブリードの華々しい活躍と比べて、余りに惨憺たる有様である。

 ウロボロスのリミットエフェクトが軒並みイマイチ微妙な効果である点も、ウロボロスからトライブリードという選択肢を遠ざける大きな要因となっている。

 しかし、無論まるっきりメリットがないわけではない。

 一応、トライブリードを選択すれば、他シンドロームの専用Dロイスは勿論のこと、それぞれのリミットエフェクトやユニークアイテムにも手が届くという大きな利点が存在するからである。特に余所のリミットエフェクトを取りやすくなるのは嬉しいメリットである。

 これにより、クロスブリードやピュアブリードでは出来ない複雑なビルドの構築が可能であり、ウロボロス本来の魅力の一つでもある、複雑怪奇なビルドへの挑戦と、それに見合った奇妙な性能を同時に手することが出来る。

 諸氏がもし、普通のビルドのキャラクターは概ね作りきってしまい、我こそは上級者と意気込む、TCGで例えるならジョニー気質の奇妙なコンボが大好きなDX3rd中毒者であるのならば、この選択肢はきっと垂涎のものとなるに違いない。

 是非とも、このウロボロス交じりのトライブリードで、様々な愉快なビルドを試してみて欲しい。

 逆にいえば、そこまで拗らせた人間でなければ中々手がでる選択肢ではない。

 意図的に言及を避けてきたサプリメント「レネゲイズアージ」のアージエフェクトや、サプリメント「ユニバーサルガーディアン」のエンブレムデータなどといった、現在では収録サプリメントの入手が困難なデータを用いたビルドも視野に入れたがるようなPLであるなら、このレギュレーションに挑んでみるのもまた一興だろう。

 無論、環境と諸氏等の友人がそれを許す場合に限るが。

 TRPGは複数人と遊ぶゲームであるため、独りよがりのビルドが許される環境はそれを許してくれる素晴らしい友人と気の知れたGMがいる場合に限られるという点は、常に感謝と共に忘れるべきではないだろう。


▼専用Dロイス

 専用Dロイスはいずれもウロボロスの名に恥じない強力なDロイスであり、どちらを取得しても大幅な戦力増強が可能である。

 どうせウロボロスを選ぶのならば、これらを活用するのも悪くはないだろう。


▼専用ユニークアイテム

 サプリメント「インフィニティコード」収録の専用ユニークアイテムは全部微妙である。「シンボライズカード」はまだ使えないでもないが、他はNPC用と割り切ってしまっていいだろう。


 大幅にアイテムデータが追加・修正されたサプリメント「アイテムアーカイブ」では、「ダムドスカル」が強力である。暴走解除で強化される射撃武器だが、ウロボロスは自分から暴走する手段が豊富であるため、条件達成が非常に楽である。マイナーが空いている射撃屋なら、採用を検討しても良いだろう。「影断ちの銃」も安価であり、残経験点と命中の両方に不安がある時に頼れる。「影蛇の剣」も色々と悪用できそうな性能をしており、色々な摘み食いが出来るウロボロスならではのビルドを組むことが出来るだろう。

 また、「原初の薔薇」も面白い性能をしており、独特なビルドを組みたい時の選択肢の一つとして、興味深いユニークアイテムである。

 


▼独断と偏見の便利エフェクト早見表

「無形の影」

 万能精神置換エフェクト。

 「コンセントレイト」もつけられるぶっ壊れエフェクト。


「『原初の~』シリーズ」

 ウロボロス十八番のコピーエフェクト群。

 鬼の様な高性能だが侵蝕率がかなりキツい。


「混色なる主」

 達成値増加バフ。

 原初シリーズを手軽に強化してくれる。1シーン3回と回数も多い。


「背徳の理」

 ダイス増加バフ。

 一度攻撃を通す必要があるがそれでも係数×2は非常に強力。


「雲散霧消」

 範囲ダメージ軽減。なんと係数5。

 1ラウンド1回制限ではあるがそれにしたって強い。


「レネゲイドディゾルバー」

 オート打消し。

 射程至近の「デビルストリング」。射程のせいで若干使い辛いが強力。


「万象の虹」

 シーン内コピーエフェクト。

 ただし、制限のないエフェクトしかコピーできない。


「統制者の王冠」 ピュア制限

 基礎侵蝕率増加を抑える。

 欲張り過ぎて侵蝕率がしんどい場合は仕方ないので取る。


「果てなき円環」 ピュア制限

 1つだけ原初シリーズをダブらせて取れる。

 もっと欲張りたい貴方の為に。


「レネゲイドイーター」(レネゲイドウォー)

 Lv×1d10+1d10の破格の高係数ガードエフェクト。

 余所のガード屋に謝れ。


「拡散する影」 80%制限(レネゲイドウォー)

 判定ダイスを減らして固定値を上げるエフェクト。

 乱数を信じない貴方の為に。


「脱皮する蛇」 (カッティングエッジ)

 戦闘不能回復時バステ&デバフ解除。

 デバフが重い環境では選択肢に入る。


「シャドーテンタクル」 (バッドシティ)

 白兵射程変更エフェクト。

 圧倒的侵蝕率効率を誇る上、起点エフェクトにもなる。


「巨人の影」 (バッドシティ)

 定番の一発殴れば効果発動シリーズ。

 こちらはエフェクトLv増加。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る