メンドくさいんで帰ってもいいっすか?

麦茶ドラゴン√アキト

第1話

轟音とともに崩れ去る山。崩壊していく城。

 この事態を発生させた張本人を目の前に俺はポツリと呟いた。

「もう帰っていいっすか?」

          *  *  *

 時は遡ること2日前。俺はいつもの朝を迎えていた。

「おはよー、今日も随分と早いな。」

「おはよう、夜光は相変わらずマイペースだねぇ。」

 俺は百鬼夜光。今年高2になるいたって普通な男子高校生。

 そして笑顔で出迎えてくれたのは、隣の家に住む幼馴染 み、蝶野舞姫。幼馴染みっつてもこいつは俺より3つ上の 姉貴的な存在だ。

 俺は両親が海外で働いているので家には基本俺一人しかい

ない。

 それを知ってからかこいつは2年前から毎日朝飯を作りに

来てくれる。嬉しいっちゃ嬉しいんだが・・・

「なぁ、毎日来てくれるのはありがてぇんだがいい加減ここまでしてくれなくてもいいんだぞ?」

「いいんだよ夜光。これは僕がやりたくてやってるんだから。」

 舞姫が眩しい笑顔でそんな事を言ってくる。普通はこんな笑顔向けられたら一瞬で惚れてしまうんだろうなぁ。

「いや、俺ももう高2だし流石に自炊とかも出来るようになりてぇんだよ。」

「夜光は僕のご飯食べるの嫌?」

 大学2年生だとは思えない幼げな雰囲気を醸し出している舞姫は上目遣いでそんな事を。

 クソッ、こんな風に頼まれると断れない自分が憎たらしい

「はぁ、分かったよ。んじゃまた暫くは頼むわ。お前の飯、

結構旨いしな。」

「ふふっ、そう言ってくれると僕的にも嬉しいよ。さぁ、遅刻しちゃいけないから早く食べよう。」

「ああ、いただきます。」

「いただきます。」

 俺らは舞姫が作った飯を食べ終わると、一緒に家を出た。

「じゃあね夜光。今日も勉強頑張ってね。」

「お前もな。研修頑張れよ、んじゃ。」

 俺は学校へ向かおうと歩き出した。

 いつもの道のり。いつもの風景。こんないつも通りの日常

がいつまでも続くと思っていた。

「危ない!!」

「え・・・」

 そう、この瞬間までは。

 俺はその日、いつもの日常にサヨナラをした。

 

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