おまけ

 そんなこんなで葬儀は滞りなく終えることができた。祖父は無事真っ白の骨になり……祖母はなんだか静かになってしまったのだった。


 俺は帰りもはるかの赤い軽自動車で駅まで送ってもらったのだが、時刻表を読み違えたせいで早く着きすぎてしまった。田舎だけあって電車がやってくるまでまだ四十分もあった。別にホームで時間を潰したってよかったのだが、遥のやつが

「缶コーヒーくらいおごりなさいよ」

 と強請ゆすってきたので応じることにした。自販機のコーヒーで特に理由のない乾杯をすると、俺たちは珍しく落ち着いて話をした。途中までだが。


「あれでおじいちゃんも、少しは浮かばれるかしらね」

「うーん、どうだろうな。あんまり信心深くない俺としてはやっぱり、死んでから言われてもなぁ、とは思うが」

「む……それは信条の問題ね」

「で? 遥は今回の件で何か教訓を得たりはしなかったのか?」

「え、わ、私?」

「俺は痛感したよ。伝えたいことがるなら……とりわけそれが好意ならな、相手が生きてるうちに言っちまったほうがいい。そうすりゃ信条に関わらず伝わるんだから。つまりだな、お前も少なくとも俺が生きているうちに、」

「ばっ……」

 と遥が天井に頭をぶつけながらつかみ掛かってきたのを躱し、

「勘違い、す、る、なぁっ!」

 の四連撃を辛うじて受け止めた俺は、その後もしばらくからかい続けたのだった。それはもちろん真っ赤になる遥が可愛かったからだが……そのことはまだもう少し伝えないでおくことにした。

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ツンデレも大概にしろ! ふぐりたつお @fugtat

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