面さんとガチャ


仲間達の中では、

総合そうごうして運がいいのは断トツで

こおりさんなのだが。


ガチャ系だけにかぎると、

1位はおもさんになる。


彼は、

動物やお菓子などの食べ物がモチーフになった、

可愛かわいいキャラクターが大好きだ。


特に


『だらりんしばた君』


と、


『ちょこっとチョコ太』


というキャラクターが好きで、

この2種類のガチャ限定アイテムを集めている。



「・・ただいま。」


今日の買い物当番だったおもさんが、

上機嫌じょうきげんで帰ってきた。


「あ、お帰りなさい。」


彼の手には、

2つのビニールぶくろがぶら下がっていて、

それを片方こちらに差し出してくる。


「・・これでいいか?」


「あ、はい。

がとうございます。」


夕飯の材料の入ったそれを受け取り、

私は礼を言った。


そのまま、

彼はいそいそとソファーに座り、

テーブルの上にもう1つのふくろを置いて、

その中からガチャのカプセルを取り出す。


「あ、新作出てたんですか?」


受け取った材料を冷蔵庫に仕舞しまった私は、

そう言いながら彼の側へと近づいた。


「ああ。

・・今日から発売だと、

公式ホームページで発表されていた。」


(それで、3日前からソワソワしてたのか。)


ガチャのカプセルは開けにくいのだが、

おもさんは器用に次々と開け、

中から出てきた可愛かわいいフィギュアを、

私が見やすいようにテーブルに並べてくれる。


・・そのフィギュアは全て別のデザインで、

中に入っていた小さなパンフレットを見てみると、

このシリーズが全部そろっている事がわかった。


「おお!

1回でシリーズコンプリートじゃないですか。」


流石さすがですね。


満足そうな彼と、

キレイに並んだフィギュアを見ていたが、

ふくろの中にまだ開けられていないカプセルが4つ、

転がっている事に気が付く。


「こっちは開けないんですか?」


機嫌きげんおもさんに聞くと、

フィギュアをながめながら答えてくれた。


「それは、たのまれた。」


たのまれた?」


誰に、と聞く前に、

リビングにせきさんが入ってくる。


「あ、おも様!」


彼が側までやって来ると、

おもさんは静かにふくろを差し出した。


がとうございます!」


やっとこれでそろいました!


嬉しそうにふくろを受け取ったせきさんに、

気になった私は中身の事をたずねる。


「何か集めてたんですか?」


「ああ。

・・実は、しばた君を集めてるんだが。」


苦笑しながらも、

彼はその理由を語ってくれた。



実は、

しばた君のファンである事。


このシリーズが欲しくて、

見かける度にガチャを回していたという事。


・・そして、

何処どこに行って何度回しても、

今持っているフィギュアしか出なかった事を。


最大で10回チャレンジしたが、

10個全て同じ物だったらしい。



「いい加減かげんに、

あきらめようかとも思ったんだがな。


ガチャの前で悩んでいたら、

偶然ぐうぜんおも様が通りかかられて。


理由を説明したら、引き受けて下さった。」


「よかったですね。」


よほど嬉しかったのか、

彼はおもさんにもう1度お礼を言っていた。



(・・それにしても。)


せきさんの運の無さは、

ガチャにも対応していたのか。


(まあ、運の使い方は人其々それぞれだし。)


と、


『5枚入りカードパックを3個購入し、

3パック全てのカードが見事にかぶった』


経験のある私は、そう思ったのでした。



ちなみに。


2人が集めている

『だらりんしばた君』

は、豆柴犬まめしばけんのキャラクターで


きりっとした両親の元に生まれた、

のんびりだらだらするのが好きな、

マイペースな子犬の男の子だ。


『ちょこっとチョコ太』は、

丸いトリュフチョコのキャラクターで、

4コマブックも出ているのだが


・・落ちは必ずけるという、

割とシュールな物である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る