私と世界


テレビのワイドショーで、

海外旅行へ行く人にインタビューを

していたのだが。


その中で、


「自分の世界を広げるために行きます。」


と、楽しそうに理由を答えている人がいた。



「・・自分の世界を広げるために、

海外に行くって変だと思うけどなぁ。」


「ん?

・・何でそう思うんだ?」


テレビに向かって言った呟きが、

少し離れてカードをチェックしていた

そらさんに聞こえたらしい。


彼は私の側にやって来ると、

座り込んでそういてきた。


「だって、

『自分の世界』ですよ?


自分の世界を見つけられるのは、

自分だと思うんですか。」


さえあれば、

別に国内でもいい気がしますが。


私がそう話し終えると、

彼は黙ってまたカードのチェックを始める。



しばらく2人で黙っていたが、

突然彼が


「自分の力じゃ、

海外でも国内でも・・何処どこに旅行に行ったって、

無駄むだに終わるだろうな。


でも、

近所だってやり方次第では、

世界はどんどん広がっていくんだぞ。」


と、言った。


「え?」


私が唐突とうとつな言葉に驚いている間にも、

そらさんは先を続ける。


「世界の広さってのは、

基本的には変わらないもんだ。


ただ、

『その景色をどう見ているのか』

ってだけで。」


「どう見ているのか・・?」


「そうだ。


立って見ているのか


座って見ているのか


寝転ねころがって見ているのか


それだけで、

世界の見え方は全然ちがう。」


「なるほど・・。」


彼はカードの整理をしながらも、

さらに言葉を続けた。


「世界をどう見てるのかって、

自分1人の力ではわからないもんだ。


知らない場所へ行ってみたり、

考え方の違う人間と話をしてみたり。


経験が無い事に直面ちょくめんした時に、

今までとは違う自分が出て来るだろ?


そういう時に、

自分がどんな人間かって理解が進んで、

それをり返す事で、

自分が世界をどう見ているのかが

わかってくるのさ。」


だからやり方次第では、

身近な場所でも出来るって事だな!


そう言って笑うと、

そらさんは1枚のカードを私に手渡してくる。


「これは?」


「その種類のカードで、

デッキ組んだ事無いだろ?


試しにこれで対戦してみようぜ!」


新しい世界に挑戦ちょうせんだ!


「・・やってみます。」


私はそのカードを受け取り、

新しい世界と彼にいどむ事にした。


「やる以上は勝ちにいきますよ。」


こう見えても負けず嫌いなんで。


望むところだ!




・・別に、海外や遠くへ行かなくても。


昨日と少し違う事をしてみるだけで、

世界の見方は変わっていく。



その日、

知らない1枚のカードが教えてくれたのは


自分は、

自分で思っていた以上に、

負けん気が強いという事だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る