仲間とジャンケンのルール


「あ!俺がねらってたクッキー!」


「早い者勝ち!」


「あ、俺のチョコ!」


「・・名前は書いてなかった。」


本日のおやつの時間も、

らんの通り争奪戦そうだつせんが始まっています。


ですが、

今日はチャンプというストッパーがいるので、

試合にはなりません。


しかし、

ここでつるぎさんとそらさんがにらみ合いに

発展はってんしはじめました。


「それは、俺のだろ!」


「俺の方が早かった!」


ガルルルル!!


「・・ジャンケンでもして決めろ。」


一歩も引かない2人に、

こおりさんがあきれながら提案ていあんすると


「その手があったか!」


「よし!決着つけるぞ!」


2人は素早すばやく離れ、

互いにジャンケンの態勢たいせいに入る。


後出あとだしすんなよ!」


「お前こそ!」


「「いくぞ!ジャ-ンケーン・・」」


ポン!!

バキャ!!


掛け声と同時に2人はこぶしり出し、

それが互いの顔に入って、

クロスカウンターの形になった。


「えぇ~・・。」


私が食べる手を止め、

思わず声を出していると、

側のいかずちさんが2人に向かって怒鳴どなる。


「それのどこがジャンケンなんだ!!

毎回毎回お前達は」


いかずちさんは、

そのままお説教に入ろうとするが、

当の2人は不思議そうな顔で言った。


「え?これジャンケンだぞ。」


「おう。」


何処どこがだ!!」


怒る彼に2人が説明したのは


グーはパンチ


チョキは目つぶ


パーはり手


という、独自どくじのルールである。


・・ジャンケンは、

いつからそんな危険なモノになったんだろうか。


(普通の方はけっして真似まねをしないで下さい。

確実に顔面と友情の両方が崩壊ほうかいしますので。)


「そんなルール聞いたことが」


そう、いかずちさんが言い終える前に、

あちこちから


バキャ!


バシッ!


ドッ!


という音が聞こえてくる。


・・特殊とくしゅジャンケンの勝負が、

何時いつの間にか開催かいさいされていたようだ。


その光景に、

いかずちさんは呆気あっけにとられていたが。


ジャ-ンケーン!


の掛け声にわれに返る。



・・その後の彼の行動は、実に早かった。


変則へんそくジャンケンをしていた

者達の脳天のうてん目掛めがけて拳骨げんこつを落とし、


気絶した全員の首根っこをつかむと、

別室へと引きって行ってしまう。


「・・皆さん無事で戻ってきますかね。」


私の呟きを聞いたこおりさんは


「知らん。」


としか言わなかった。





その後、

いかずちさんは戻ってきたが


引きられていった人達は

戻らなかったので、


気になった私は様子を見に行く。


そこで目にしたのは


頭に、

表面張力ひょうめんちょうりょくたもたれているコップを乗せられ、

空気椅子いすをさせられている彼の姿だった。



・・私は何も見ていない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る